自宅待機を呼びかけるメッセージが効果を発揮する理由、しない理由

Shoppers wait in line on social distancing markers before entering a store, during the gradual reopening of commercial activities in the city, as the coronavirus disease (COVID-19) outbreak continues, in Mexico City, Mexico July 6, 2020. REUTERS/Henry Romero - RC21OH9OJBUM
How reminders can help keep people at safe distances during COVID-19.Image: REUTERS/Henry Romero
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  • 危機の間、社会的距離の確保を促す呼びかけは、世界各地の当局によって広く用いられた。

  • デンマークの研究では、人々に自宅待機を促すうえで、どのようなメッセージが最も効果的で、どのようなメッセージが最も効果が低いかを調べた。

  • 人々の善意は、望ましい行動に結びつかないことが多い。

  • 呼びかけによって、健康状態が悪く最も大きなリスクに直面する人々の社会的距離確保の順守率が大幅に高まる。

社会的距離の確保策は、COVID-19と闘う世界的な取り組みの要となり(Gourinchas 2020、Baldwin and Weder di Mauro 2020)、その後に続いた経済危機の主な原因でもあった(Furman 2020、Baldwin and Weder di Mauro 2020)。義務的な制限措置は重要な役割を果たした。特に、厳格なロックダウンが実施されたフランスやイタリアなどの国ではそうだった。しかし、社会的距離の確保がどれほど効果を発揮するかは、主として個人の自発的な取り組みと任意の順守にかかっていた(Maloney and Taskin 2020)。そのため、メッセージを通じて人々に自宅待機を呼びかけることが、世界各地の保健当局にとって重要な手段となったのは当然である。

こうしたメッセージキャンペーンは効果を上げたのだろうか。その結果、人々はより多く自宅にとどまったのだろうか?

これらの問いに答えるため、危機が最も深刻だった2020年3月末に、デンマークで実験を行った。1 デンマーク統計局と協力し、無作為に抽出したデンマーク住民に、「できるだけ自宅にとどまる」よう促すさまざまな呼びかけを配布した。その後、呼びかけを受け取らなかった対照群と、介入を受けた対象者の行動を比較した(Falco and Zaccagni 2020)。

人々を説得するうえでどのようなメッセージが最も(または最も効果が低く)有効かを特定するため、呼びかけの焦点を無作為に変えた。具体的には、順守しない場合に本人、家族、一般の他者、そして国全体が受けるリスクを強調し、受け手とメッセージの主題との感情的な近さを変化させた。これにより、人々が向社会的に行動する際に、どのような「他者」を気にかけるのかを分析し、向社会的な動機を詳しく調べることができる。この研究を通じて、このテーマに関する近年の研究を発展させる(Jordan et al. 2020、Campos-Mercade et al. 2020、Borgonovi and Andrieu 2020)。

危機のピーク時、デンマークで自宅にとどまった人は15%未満

最初の発見は、危機の最中に自宅にとどまった人の割合がかなり低かったことだ。調査期間の2週間(3月25日~4月7日)、デンマーク全土で、任意の日に自宅にとどまった人は15%未満だった。データは自己申告によるため、社会的望ましさのバイアスによって回答者が自宅にとどまったと実際より多く申告した可能性があり、この低い割合でさえ実態を上回っているかもしれない。この割合は女性と低所得世帯で高かった。

人々が「すると言うこと」と、最終的に「実際にすること」の間には大きな隔たりがあることも分かった。翌日に外出する予定があるか対象者に尋ね、追跡インタビューで実際の行動を確認したところ、自宅にとどまるつもりだと答えた人の40%超が、実際には外出していた。

呼びかけを受けた人は自宅にとどまるつもりだと答えるが、その意図から外れることも多い

「あなた自身」と「あなたの家族」に焦点を当てた呼びかけを受け取った人は、受け取らなかった人よりも、翌日は自宅にとどまると答える傾向が強かった。しかし、追跡調査で実際に自宅にとどまったと報告する可能性は高くならなかった(図1参照。アスタリスクは統計的に有意な効果を示す)。2 つまり、呼びかけは人々の意図を変えるうえでは効果があったものの、自己申告による行動は変えなかった。

図1 さまざまな呼びかけが意図と行動に及ぼす効果

呼びかけによって、自宅にとどまる人の行動がどう変わるか。Image: VoxEu

注:個人のリスクと家族のリスクに言及する形で呼びかけると、回答者が自宅にとどまる意向は46%高まる。しかし、そうした意向の変化は、実際の行動(つまり、実際に自宅にとどまる人が増えること)には大きく結びつかない。ただし、健康状態が悪い人は例外である(図2参照)。

技術的注記: 効果は、対照群において自宅にとどまる意向がある人、または実際に自宅にとどまった人の割合(15%未満)に対する変化率である。棒の上部に示した星印は、係数の有意水準を表す(** p<0.01、* p<0.05、* p<0.1)。星印のない棒は、処置効果が0と有意に異ならないことを示す。

これは、呼びかけを受けた人が自宅にとどまったと過大に申告するよう促された可能性を考えると、注目すべき結果である。また、社会的距離の確保を順守する意向を分析して呼びかけの効果を結論づけてきた従来の研究に対しても、重要な貢献となる(Barari et al. 2020、Everett et al. 2020、Utych and Fowler 2020)。

呼びかけが人々の意図を変えるのは、受け手とその家族に対するリスクを強調した場合に限られる

順守意向を変える場合に限られるものの、あるメッセージがほかのメッセージより効果的であることも示した(図1)。個人のリスクと受け手の家族に対するリスクに焦点を当てた呼びかけは、順守意向をほぼ50%高める。一方、一般の他者や社会全体に対するリスクに焦点を当てた呼びかけには、有意な効果が見られなかった。この結果は、社会的距離の確保を市民の義務とみなす考え方と興味深い対照をなしている。

市民的資本が高いほど社会的距離の確保の順守率が高まるという証拠(Barrios et al. 2020、Durante et al. 2020)と、今回の結果は矛盾しない。それでも、人々が最も強く反応するのは、自分自身と家族に及ぶ危険であることを示している。

健康状態が悪い人には呼びかけがより効果的

これらの結果は、メッセージキャンペーンの効果について厳しい見方を示すが、呼びかけが重要な点で効果を発揮することも分かった。健康状態が悪い人が自宅にとどまる確率は、呼びかけによって80%を超えて有意に高まる(図2)。

図2 最も効果的な呼びかけの処置効果(受け手の健康状態別)

強調点の違いによって、自宅にとどまる人の行動がどう変わるか。Image: VoxEU

注:健康状態が悪い回答者では、個人のリスクと家族のリスクを強調した呼びかけを受け取ると、自宅にとどまると回答した人の割合が2倍を超え、自宅にとどまる人の割合も80%増加する。健康状態が良い回答者では、個人のリスクを強調した場合、自宅にとどまる意向は36.5%高まり、家族のリスクを強調した場合は38.2%高まるが、結果が有意なのは10%水準にとどまる。健康状態が良い回答者のうち実際に自宅にとどまった人の割合は、こうした呼びかけを受けても10%未満の増加にとどまり、その効果は統計的に有意ではない。

技術的注記: 回答者は健康状態を5段階で評価する。この分析では、最も低い2段階を健康状態が悪いとみなす。効果は、同じ健康区分の対照群のうち、自宅にとどまる意向がある人、または実際に自宅にとどまった人の割合に対する変化率である。棒の上部に示した星印は、係数の有意水準を表す(** p<0.01、* p<0.05、* p<0.1)。星印のない棒は、処置効果が0と有意に異ならないことを示す。

これは公的機関にとって重要な結論であり、メッセージキャンペーンではリスクにさらされている集団を優先すべきである。差し迫ったリスクに直面しておらず、呼びかけにもほとんど反応しないとみられる人々を説得しようとするより、この戦略のほうが早く成果を上げるだろう。

今回の発見は、国際社会にとっても教訓となる。世界の多くの地域でCOVID-19は依然として脅威であり、社会的距離の確保を含む責任ある行動の促進は、引き続き政策の最優先課題である。しかし、各国政府が当初の制限を緩和するにつれて、人々の警戒を保つことは次第に難しくなり、人々の意図と行動の隔たりが問題を深刻化させる。今回の研究は、効果を上げるには呼びかけの対象を適切に定め、タイミングを見極める必要があることを示している。

脚注

1 デンマークでは、最も厳しい制限措置が3月11日から4月中旬まで実施された。4月15日に保育所と幼稚園が再開し、制限の緩和が始まった。

2 20%の効果が統計的に有意でないという事実は、こうした影響が実際にはかなり小さく、大規模なサンプルを用いても検出が難しい点を踏まえて解釈すべきである。対照群で自宅にとどまった人の割合は15%未満なので、20%の正の効果は、100人中で自宅にとどまる人が3人未満増えることに相当する。

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