ケネス・ロゴフは、ダボス会議の参加者の通説はいつも間違っていると言ったとき、冗談を言っていたのかもしれない。それでも、実際にそうなのか、そうだとすればなぜなのかを考える機会にはなる。今年、この問題を取り上げるためにセッションを設けた。
まずは事実から見ていこう。ドナルド・トランプ氏の勝利も英国のEU離脱も、1月時点では確実視されていなかったのは事実だ。しかし、2016年の政治を揺るがす出来事の予測を誤ったのは、参加者だけではなかった。
オックスフォード大学の実験心理学准教授、モリー・クロケットは、その理由の一つとして、予測を立てる際、予測者は感情よりも物質的な世界を重視する傾向があると論じる。「自分の世界観を表明したいという動機がいかに強いかを、人々はしばしば過小評価します。その代わり、予測では経済的な利己心に焦点が当てられがちです。こちらのほうが具体的で、測定しやすいからです。」
ペンシルベニア大学ウォートン校の教授、フィリップ・テトロックによれば、その答えは、今後、より多くの証拠に基づく予測へと移行することだ。ただし、あまり期待しないほうがいい。「単純な外挿アルゴリズムを上回るのは、どんな専門家にとっても非常に難しいでしょう。変化を予測することこそ大きな課題であり、ほとんどのシステムが失敗するのはここです」とテトロックは言う。
変化を予測するのがこれほど難しいのなら、フォーラムやその関係者による予測のなかには、結局それほど的外れではなかったものもあるのかもしれない。国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事は、テレビの視聴者に対し、2013年にすでに格差の危険性を世界に警告していたことを、今日あらためて伝えた。さらにさかのぼると、世界経済フォーラムの創設者兼会長であるクラウス・シュワブ教授は1996年に、反グローバリゼーションの高まりについて書いている。また、フォーラムの「グローバルリスク報告書」は2012年に、深刻な所得格差を今後10年間に世界が直面する最も可能性の高いリスクとして特定した。
その1年後、私たちは、当時まだ予想の範囲をはるかに超えていた別の傾向を指摘した。大規模なデジタル上の誤情報、当時私たちが「デジタルの山火事」と呼んだ現象であり、開かれた誰もが容易にアクセスできる情報システムの悪用がもたらす課題に警鐘を鳴らした。
テトロックは、時がたてば、変化をより的確に予測できるシステムが構築されると楽観視している。それでも、政治変動の一因となった怒りを防ぐ最善の方法は、その原因に対処することだという点で、彼とクロケットの意見は一致している。その原因とは、不平等や不安、無視されているという感覚だ。
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