S&P株価指数の構成企業のほぼ半数が、今後10年で姿を消すでしょう。
企業に求められる成果を出し続けるプレッシャーは非常に大きく、成長とイノベーションを持続させるには、協調とエコシステムの構築だけが答えです。
EYのような企業はこの点を認識し、社内外を見据えて、いかに効果的に協調できるかを真剣に検討しています。
今日の企業には、より多くの、より大きな価値を生み出すことへの途方もないプレッシャーがかかっています。テクノロジーは急速に進化しており、その過程で消費者の購買の方法と内容も再定義されています。
現在の入れ替わりのペースでは、S&P株価指数の構成企業のほぼ半数が、今後の10年以内に姿を消すことになります。市場におけるこの大きな変化により、組織には明確な選択肢が突きつけられています。すなわち、迅速に変革するか、全面的な混乱のリスクを負うかです。
組織は、高まる消費者と社会からの期待に応えようと奮闘していますが、その一方で、利益率を圧迫する記録的な高インフレ、気候変動の影響、ウクライナでの戦争の継続を含む地政学的緊張の高まり、そして越境貿易、海外投資、グローバル化の構造が根本的に変化しているという認識にも直面しています。
単独での取り組みはもはや十分ではない
消費者と社会が年々求める、複雑で絶えず変化する解決策を、一社だけで提供することはとうていできません。気候変動、経済格差、エネルギー転換といった広範な課題について、単独で意味のある前進を果たせる組織や国はありません。
多様な考え方と新たなスキルを生み出すために、国境を越え、社会的・経済的な分断を越えて手を取り合う必要があります。しかし現実には、世界の共同体は分断に直面しています。
ビジネス界として、どうすればこれを乗り越えられるでしょうか。リスクが至る所にあり、世界が慣れ親しんだものを好む中で、どうやってビジネスモデルを変革すればよいのでしょうか。競争の激しい市場において、答えに最も速く、最も生産的に到達する道である協調を、どうすれば優先できるのでしょうか。

協調することで競争力を高める
私たちは事業のあり方を見直す必要があります。競争は長らく、業界を問わず企業にとっての基本的な行動様式でした。実際、成長を促すうえで競争の要素は常に必要です。しかし、協調的なモデルが純粋な競争モデルを上回る成果を生む可能性があることを認識すべき時が来ています。一見相反するこれらのアプローチをいつ、どのように統合するかを理解することこそが、複雑で変化の速い世界で成功するための鍵となるかもしれません。
メルセデス・ベンツとBMWを例に挙げましょう。両社は自動車事業を営んでいますが、顧客が求めているのは単なる自動車ではなく、地点Aから地点Bへ移動することです。競争の激しい市場において、両社はカーシェアリングサービスを共同で運営し、タクシーアプリや電動キックボードのサービス事業者を組み合わせて、モビリティの「スーパーアプリ」であるFreeNowを立ち上げました。このアプリは、16か国の顧客に複数の交通手段を提供することができます。その結果、全員にとってより大きなパイの取り分が生まれました。
こうした事業上の提携により、企業はイノベーションを生み出すテクノロジー、スキル、データに迅速にアクセスできるほか、機動性と回復力も高まります。自然界で動植物が協力し合うように、これらのエコシステムは、企業が適応し、繁栄し、生き残るためにますます重要になっています。実際、少なくとも一つのエコシステムで事業を展開する経営者を対象とした、EYによる最近の調査では、この方法で働くことにより、年間総収益の平均13.7%を占める効果があり、12.9%のコスト削減、13.3%の追加利益につながったことが分かりました。
こうした理由から、この5年間でEYのチームは、100社以上の提携パートナーからなるエコシステムを構築してきました。その中には、Dell Technologies、IBM、Microsoft、SAP、ServiceNowが含まれ、これらのエコシステムが提供するデータ、関係構築、テクノロジーにより、EYのクライアントは持続可能で長期的な価値を引き出すことができます。

協調と社会課題
しかし、エコシステムは商業的に有利になるだけではありません。事業を展開する地域社会に、企業が前向きな影響を与えることを可能にするうえでも極めて重要です。
EYは、神経多様性センター・オブ・エクセレンスの設立を通じて、このことを身をもって示してきました。このセンターは、さまざまな機関からなるエコシステムとして機能しています。EYとSAPは毎年協力し、ビジネスクライアント、学術機関、公共部門、NGOの関心を、ディスレクシア、ADHD、自閉症、アスペルガー症候群など、認知特性の違いを持つ人々の才能を活かすことに向けています。このエコシステムの共通の目標は、多様なスキルセット、新しい考え方、包摂的な雇用の機会を提供することによって、すべての人に恩恵をもたらすものであり、協調なしには実現し得ないものです。
協調は、気候変動のような地球規模の課題に取り組むうえでも極めて重要です。Microsoftのクラウドプラットフォームや Azureのブロックチェーン機能といったテクノロジーを組み合わせることで、改ざんが困難で、極めて正確な炭素排出量の追跡が可能になりました。
エコシステムは、それが機能するからこそ、こうしたソリューションの中核にあります。
正しい考え方を持つこと
協調のメリットを十分に享受するには、企業がエコシステム型ビジネスモデルを効果的に導入する必要がありますが、それは一朝一夕には実現しません。単発の取り組みであってはならず、組織の文化に深く根付かせる必要があります。
CEOやビジネスリーダーとして、私たちはしばしばゼロサムのアプローチを取るよう条件づけられています。顧客に販売するサービスや製品が増えるほど、競合他社が販売する量は減り、その逆もまた然りです。こうした考え方の問題点は、迅速に対応し、補完的な資源を持つ相手と連携し、市場に効率的かつ効果的に提供するために素早くイノベーションを起こす機会を制限してしまうことです。
これを正しく行うには、サービス、製品、プロセスについて考えるのではなく、企業は次のように自問しなければなりません。私たちは何の問題を解決しようとしているのか。もし自社だけで解決できないなら、必要なパズルの一片を持っているのは誰か。そして最も重要なのは、どのようにしてこれらのパートナーを、解決策を提供するための相互に有益なモデルへと組み立てるかです。
EYもこうした問いを投げかけています。現在、組織は、パートナーによる投票を条件として、二つの独立した組織に分割する提案を検討しています。主な利点の一つは、これまで制約があったパートナーや提携先とともに、エコシステムを拡大できることです。
経済的・社会的な複雑性が高まる中で、技術革新が前進を続けるにつれ、協調の必要性は今後数年でさらに高まるでしょう。
新興テクノロジーを掌握し、市場で優位に立ち、差し迫った社会課題に対処したいと考えるビジネスリーダーは、エコシステムに参画しなければなりません。競争の未来は協調にあります。
本記事に示された見解は筆者個人のものであり、EYのグローバル組織またはそのメンバーファームの見解を必ずしも反映するものではありません。


