2023年は子どもたちにとって最悪の年の一つとなりました。現在、10億人が気候変動のリスクが極めて高い国々に暮らし、4億6,000万人が紛争地域で暮らしています。
2024年には、官民連携、第4次産業革命のテクノロジー、そして子どもや若者のリーダーシップの高まりが、より良い方向へと進路を変える可能性があります。
世界には、1世代全体にこれほど大きなリターンと成果をもたらす集団的な動員はほとんどありません。
2023年が終わるにあたり、3つの重要な節目を迎えたことで、2024年は世界中の子どもたちのために持続可能な開発目標(SDGs)への道筋を再構築するうえで、極めて重要な年となります。
第一に、国連事務総長が招集したSDGサミットは、世界が重要な世界目標の大半の達成に向けて軌道を外れていることを明らかにし、各国に行動計画の迅速化を改めて約束させました。
第二に、COP28では初めて、気候変動が子どもの健康とウェルビーイングに及ぼす特有かつ不均衡な影響が強調されました。現在、10億人の子どもがリスクが極めて高い国々に暮らしています。
そして第三に、2023年を終えるにあたり、この年が子どもたちにとって最悪の年の一つだったと認識しました。4億6,000万人が紛争地域で暮らしており、そこでは命に差し迫った明白な危険に直面するだけでなく、子どもたちを育む制度との信頼関係が損なわれ、将来も見通せない状況に置かれています。
今こそ、その信頼を取り戻し、未来への道筋を修復するときです。子どもたちのための新たな社会契約から始めなければなりません。
協働によるアプローチ
2024年の初め、今の子どもたちがどのような世界を受け継ぐのかを思い巡らせる私は、深い希望を抱いています。分断とポリクライシスが過去数十年にわたって子どもたちのために積み上げてきた貴重な成果を脅かす一方、前向きな力も存在します。とりわけ、官民パートナーシップや連合を築く新たな方法、第4次産業革命のテクノロジー、そして子どもや若者のリーダーシップの高まりが、2024年により良い方向へと進路を変える可能性があると考えています。
ユニセフの「2024年グローバル展望」は、協働とパートナーシップを軸とするアプローチを通じて、私たちが共にどこまで進めるかに光を当てています。組織、企業、政府が共に解決策を創り、より多くの子どもを基礎的サービス、質の高い学習、手頃な医療につなげるうえで、これは欠かせません。また、経済の分断が家族の生計、子どもの成長、若者の雇用を脅かすという広い意味でも、同じく重要です。
SDGsに向けた子どもたちの新たな社会契約は、経済的連帯、市場における協働、そして子どもの権利と未来を守るため将来必要となるスキルへの投資に共に取り組む姿勢を基盤としなければなりません。不可欠な物品やサービスをより公平に利用できるよう、貿易政策の策定において子どもを優先しなければなりません。債務再編によって、経済上の要請と社会的投資(社会保障の拡充、より手頃で質の高い基礎的サービス、そして最も取り残されている子どもたちへの支援)のバランスを取り、次の世界的な危機に備えて世代全体の将来を守ることができます。
第4次産業革命
人工知能(AI)などのテクノロジーには、世界中の子どもたちが属する、完全にデジタル化された世代のために、より良い成果をもたらす可能性があります。AIは、知的で個別化された指導、学習機会へのアクセスの多様化、作物の収量向上による栄養状態の改善などに加え、最も支援が届きにくい地域でもデータの分析に役立ちます。
最近インドを訪れた際、地域の保健従事者がモバイルアプリのPOSHAN Trackerを使い、地域で子どもたちの栄養状態を把握するための情報を記録している様子を見ました。ユニセフはパートナーによる、気候災害時に役立つグアテマラのドローン緊急対応試作機の開発を支援しています。また、ベンチャー基金を通じて、子どもたちが直面するデジタルリスクに取り組むオープンソースのAI活用ソリューションに投資しています。
今の初期段階には、子どもにとって公平で、包摂的かつ安全なAI・テクノロジー革命を設計する機会があります。規制や説明責任、子どものプライバシーとデータ、アルゴリズムの偏りに関する課題とともに、十分に管理されないテクノロジーが子どものウェルビーイングにもたらし得る重大なリスクを、私たちは認識しています。
それにもかかわらず、各国のAI戦略や倫理指針の大半は、子どもとそのニーズに十分な焦点を当てていません。政府にもテクノロジー企業にも、人々、とりわけ子どもたちと協働して政策や製品を開発するための確かな仕組みがありません。しかし、これは変えることができ、変えなければなりません。今こそ協力し、AI政策が子どもたちやその経験に響き、彼らのニーズと希望に真に応えるようにするときです。
私たちの前には2つの道筋があります。一つは、世界的な協力とパートナーシップを強化し、知識の共有と公平な成長を通じて、テクノロジー、貿易、イノベーションの恩恵を広げる道です。もう一つは、結束と豊かさに乏しく、気候変動、資源をめぐる紛争、保護主義的な政策の影響に対処しなければならない道です。
こうした分岐する未来の道筋を思い描くことで、政策立案者、企業のリーダー、関係者は課題を予測し、機会を生かして、子どもたちにとってより安全で公平な世界を築くことができます。その恩恵は、子どもたちの家族や地域社会に波及し、やがて経済にも広がるでしょう。
過去の成功を土台に
この協働アプローチが過去に成功した例は数多くあります。たとえば、世界の人々が力を合わせて2000年から2021年にかけて5歳未満児の死亡率を半減させたこと、あるいは1990年以降、安全に管理された水と衛生サービスを利用できるようになった20億人を超える人々です。
こうした成果を実現するために必要だった大きな粘り強さと協働に思いをはせると同時に、この未来への投資にかかる費用がいかに小さいかも考えます。栄養、教育、保健、緊急対応、社会保障、子どもの保護、水と衛生、分野横断型プログラムを網羅する、ユニセフの191か国を対象とした統合年間事業予算は、年間50億ドルをわずかに上回る額です。比較すると、ニューヨーク市の市予算は950億ドルです。
物質的な面での支援対象者数と、健康で技能を備え、自らの力を発揮できる未来の計り知れない価値の両方において、1世代全体にこれほど大きなリターンと成果をもたらす集団的な動員は、世界にほとんどありません。
2024年の未来サミットに向けて、子どもたち、その利益、そして声を、私たちが共有する未来をめぐる交渉の中心に据えるため、団結し、行動と投資を一段と強化しなければなりません。企業のリーダーにとって、子どもの権利をサステナビリティ戦略やESG戦略の中核に組み込むことは、今日の子どもたちの権利とウェルビーイングを尊重しながら企業の社会的な貢献を高めるために不可欠であるだけでなく、明日の世界を受け継ぎ、担う人々の未来を形づくるうえでも重要です。



