テクノロジーはラテンアメリカ・カリブ海地域の腐敗とどう闘えるか

A man checks his phone while sitting on a bench in Saltillo, Mexico, November 30, 2017.
In our hands: Technology can be a powerful tool to combat corruptionImage: REUTERS/Daniel Becerril
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サイバー犯罪の増加や、ソーシャルメディア上でいわゆる「フェイクニュース」が広がったことで、多くの人々はデジタル革命に幻滅している。しかし、こうした憂慮すべき動向を可能にしている同じ新技術は、腐敗との闘いにも、はるかに効果的に役立てることができる。

近年、大規模な腐敗スキャンダルが相次いだラテンアメリカでは、政府の不正を暴き、良心のない公務員やその共犯者を阻止する強力な手段としてデジタルツールが活用され始めており、心強い事例がいくつもある。

煩雑な手続きの削減

多くの段階と承認を要する複雑な官僚的手続きは、腐敗の温床となりがちだ。市民と公務員のやり取りが対面で行われると、賄賂を要求したり提供したりする機会が増える傾向にある。これは、この地域では今もよく見られる状況だ。

この問題を認識し、ラテンアメリカ・カリブ海地域の各国政府は、行政手続きを簡素化・デジタル化して、煩雑な手続きを積極的に減らしている。サービスを自動化してオンラインで提供すれば、腐敗した公務員が恣意的な判断を下す余地を狭められる。

ウルグアイを例に挙げると、市民が政府との手続きの100%をオンラインで開始できるようにするという目標の達成が近い。パナマは主要な450のサービスをオンライン化する意欲的な計画に着手しており、アルゼンチンもペーパーレス政府の実現に向けて動いている。

こうした国々などで煩雑な手続きを減らすことは、良い結果をもたらしている。腐敗を抑えるだけでなく、官僚制度を簡素化・合理化すれば、経済の競争力を高め、公共機関への信頼を強化できる。この地域が情熱をもって追求すべき二つの目標だ。最終的に、こうした取り組みは、デジタル時代の市民の高まり続ける期待に応える、より良いサービスの提供を目指している。

ビッグデータの活用

デジタル革命によって膨大なデータが生み出されており、政府、企業、市民社会組織はそれを活用して、より十分な情報に基づく意思決定を行い、サービスを改善し、透明性と説明責任を高めることができる。

データへのアクセスを開放することで、政府は市民が税金の使途をより詳しく追跡できるようにしている。ブラジルの公共支出監視機関は、ビッグデータ分析ツールを使って調達における不正の可能性を検出している。2015年には12万件を超える契約を精査し、総額1億400万ドルの取引に関わる7,500件超の事案に警告を発した。例えば、競争性の高い入札を避けるために大型契約が小規模な契約に分割されているかを見つけるフィルターもある。

米州開発銀行(IDB)は、この地域の複数のオープンデータ事業を支援している。メキシコの腐敗対策パッケージ、アルゼンチンの地域主導の取り組み、コスタリカの公務員を対象としたビッグデータ分析研修などが含まれる。各国も独自の実験を進めており、例えばメキシコ政府は、ニューヨーク大学のGovLabが開発した手法に基づくスマートなクラウドソーシングを試している。

リスクの高い分野を監視

古代以来、公共部門の投資は特に腐敗の影響を受けやすい。しかし、オンラインのデータ可視化プラットフォームは、腐敗に対する強力な防波堤になり得る。

コロンビアのオンラインプラットフォームでは、鉱業ロイヤルティの使途を追跡できる

コロンビアはMapaRegalíasというプラットフォームを構築した。誰でも、鉱業会社が納めたロイヤルティが公共事業にどう使われているかを追跡できる。中央政府はこれを使って、規則の遵守状況を監視している。昨年は、データを適切に報告しなかった125自治体への資金移転を停止した。同様のプラットフォームがパラグアイ、コスタリカ、ペルーでも開発されている。

過剰な統制は政府を麻痺させかねないが、技術的解決策を賢く使えば、監査をより機動的に行える。チリの統合監査管理システムは、簡素化されたリスクベースの監査プロセスを提供する。ポータルサイトのContraloría-Ciuadadanoは監査人と市民を効果的につなぐコミュニケーション手段であり、一般市民がプロセスに参加できる。

テクノロジーを活用した健全性確保の仕組みは、マネーロンダリング対策にも役立つ。安全なデジタル本人確認システムがあれば、銀行は「顧客確認(KYC)」規制を遵守しやすくなる。ジャマイカは、こうした遵守を促す国民ID制度を導入している。実質的所有者に関する情報は、金融セクターの健全性を確保するだけでなく、脱税やマネーロンダリングとの闘いにも役立つ。

信頼を支える技術の検証

新しいデジタル技術が急速に登場し、普及している。その一例がブロックチェーンだ。多数の関係者が保護する安全な分散型台帳を作り、取引の改ざんを防ぐ。

ブロックチェーンは、デジタル通貨ビットコインを支える技術として広く知られている。しかし、不動産取引の記録や、紛争ダイヤモンドの密売対策にも試験的に利用されている。IDBは現在、アルゼンチン税関およびMITのメディアラボと連携し、国境を越える貨物輸送を特定して追跡するためにブロックチェーン技術を使うプロジェクトに取り組んでいる。

各国が変化を受け入れなければ、デジタル革命の恩恵はほとんど得られない。テクノロジーは、振れば何もかも解決する魔法の杖ではない。解決策の一部ではあるが、その導入は、制度を強化し、市民社会の基盤を再構築する幅広い取り組みと並行して進めなければならない。

この点についても、私たちは楽観している。来年、ペルーは米州首脳会議を主催し、世界経済フォーラムのラテンアメリカ会議はブラジルのサンパウロで開催される。これらの会合では、腐敗に対抗する民主的な統治が各国首脳や政府首脳の中心的な議題となる。民間セクターも参加する。世界経済フォーラムの腐敗防止パートナーシップイニシアチブ(PACI)などの取り組みが促進する、地域各国政府との対話にも民間セクターは関わってきた。

政治的な決意と相まって、デジタル革命は、政府の透明性と説明責任を高めるという目標を、想像していたよりもはるかに迅速かつ効率的に達成する一助となり得る。

モレノ氏は米州開発銀行総裁であり、世界経済フォーラム評議員会のメンバーである。

本記事は、世界経済フォーラムの腐敗防止パートナーシップ・イニシアチブ(PACI)が編集する世界反腐敗デー連載の一部である。

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