生産性の高い企業では、市場拡大へのアクセスをもたらす輸出の追い風により、イノベーションが促進される。こうした追い風は、新たな競合企業を招く可能性もある。
経済理論では、新たな国際市場へのアクセスを広げる輸出の追い風には、2つの効果があるとされる。一方では、市場が大きくなれば、イノベーションによる収益も拡大するため、企業のイノベーションへの意欲が高まる可能性がある。他方では、市場の拡大によって新規参入企業が集まり、競争が激化し、利益とイノベーションによる収益の双方が減少して、イノベーションが抑制される可能性もある。個々の市場環境で、どちらの効果がどの程度強く表れるかは、実証的に検証すべき問題である。
以下の論文で輸出がイノベーションに与える影響:理論と実証(NBERワーキングペーパー第24600号)、フィリップ・アギオン、アントナン・ベルジョー、マチュー・ルキアン、およびマーク・J・メリッツはこの問題を検討している。生産性フロンティアに近い、生産性の高い企業では、市場規模の拡大がイノベーションにもたらすプラスの効果が、競争激化によるマイナスの効果を上回ることが分かった。こうした企業では、輸出の追い風に伴い、特許出願件数が増加する。一方、生産性の低い企業では、イノベーションを抑制する競争の効果が優勢とみられる。こうした企業では、輸出の追い風に伴い、イノベーションが減少する。
研究者らは、貿易自由化によって大きな輸出の追い風が生じた1994~2012年を対象に、フランスの製造企業について、特許、税関、製造に関するデータを連結して分析し、これらの知見を導き出した。
研究者らは、「輸出企業はイノベーションに取り組む可能性が大幅に高く、イノベーションを行う企業は輸出する可能性が高い」と指摘する。イノベーションを行う企業のうち、輸出を報告していない企業はわずか5%で、大半は大規模な輸出企業である。イノベーションを行う輸出企業は、イノベーションを行わない輸出企業に比べて従業員数が4.5倍で、生産量は約8倍、輸出先は3倍に上る。こうした違いは、イノベーションの高い企業と低い企業が事業を営む業種の違いでは説明できない。
輸出比率とイノベーションの関係は、輸出分布の上位で特に顕著である。研究者らは、「輸出分布の95パーセンタイルを超えると、企業の過半数がイノベーションを行っている。最上位のパーセンタイルでは、企業の68%がイノベーションを行っている」と記す。「輸出の最上位パーセンタイルに属する企業が、フランスの特許総数の41%を占めている。」




