インドのイシャ財団創設者サドグルは、福祉に関する考え方を再構築し、その代償を避けるため消費を抑える必要性について語る。
食料危機を防ぐには、農業の過程で地球の土壌を豊かにするよう配慮しなければならない。
このインタビューは、『The Great Narrative』の執筆に寄せられた意見の一つとなった。同書はクラウス・シュワブとティエリー・マレレによる新刊である。
インドのイシャ財団創設者サドグルは、ヨギー、神秘家、環境保護活動家など、さまざまな呼び名で紹介されてきた。しかし彼自身は、周囲の世界に非常に敏感な自分を表す比喩として、ことさら謙虚に「ミミズ」を挙げる。
彼は自身の洞察を通じて、短期的で個人主義的な考え方が、未来の世代のための地球をいかに損なっているかを語る。
インドのイシャ財団創設者サドグルとの以下のインタビューは、世界の思想的リーダー50人から寄せられた意見の一つとして、『The Great Narrative』に生かされた。クラウス・シュワブとティエリー・マレレによる同書は、新型コロナウイルス感染症後の、より強靱で包摂的かつ持続可能な未来をどう築けるかを描いている。
ウェブ上では見つからないことで、ご自身について何か個人的に話したいことはありますか。
人々は私をヨギー、神秘家、環境保護活動家、オートバイ乗り、パイロットだと思っています。さまざまな人間だと思われていますが、私は本質的には、地球上にいるミミズのような、ごく基本的な生命形態です。ミミズが周囲で起きることに敏感なように、私も自分に何が起きているかを知っています。おそらくミミズは、この地球上の博士たちより土壌や気候についてよく知っているでしょう。私の人生は教育や学問ではなく、世界から得た経験と、自分自身の内面を深く探ることで得た経験にあります。私が持っているのは、この二つだけです。
私は、世界やこの人生に注意を払ってきました。そうする人はごくわずかでしょう。多くの人にとって、注意を向けるほどの価値がないからです。ほかに関心を持つものを見つけたのでしょう。しかし私がこの人生に目を向けたとき、それは人間という、実に驚くべき仕組みでした。私はそこに大きな注意を注いできました。だから、ミミズや昆虫のほうが、人間より自分自身についてよく知っていると思います。そういう意味で、私は地球上のミミズだと言えるでしょう。
個々の考えを超えて
あなたはミミズだとおっしゃいますが、さまざまな活動を通じて世界中の何百万人もの人々に影響を与えてきました。ご自身の中心的な考えを定義するとしたら、何でしょうか。
自分たちの考えを世界にはびこらせる必要はないと思います。生命は一つの現象です。この現象が道を誤らず、すべての人にとって最良に働くにはどうすればよいでしょうか。私の考えも、あなたの考えも、誰かの考えも、具体的になると哲学になります。哲学はやがてイデオロギーとなり、さらに信念体系や宗教になります。それらは生命に甚大な損害を与えてきました。最大級の暴力や流血、そして地球の破壊をもたらしてきたのです。
ですから、私には本当に何の考えもありません。私は生命に仕えるミミズです。
ご自身をヨギーであり神秘家だとおっしゃいました。多くの人は哲学者と見なすでしょう。哲学者ではないのですか。
いいえ、まったく違います。私には哲学はありません。「ヨガ」という言葉は「結合」を意味し、ヨギーとはそれを体験した人です。結合とは何でしょうか。個人であるという考えは、心理的な問題です。呼吸を介したやり取りなしには存在できませんし、さまざまな生化学的過程や素粒子はあらゆるものと接しています。ですから、あなたの存在も生命という、より大きな現象の一部です。それでも、創造の寛大さが私たちに個としての体験を与えてくれました。
私たちはここに座って、創造とは何かと思いを巡らせることができます。それは大きな特権です。しかし残念ながら、人間がこの特権を文字どおり、つまり個人そのものとして受け取るところから問題が始まります。多くの人は、埋葬されるまで、自分がこの世界の一部であり、創造の一部だと気づきません。埋められれば、誰もが土の一部だと理解します。しかし土の上に立っているときは、自分がほかのすべての一部でもあることに気づきません。自分だけで一つの世界だと思っています。これは私の世界、あれはあなたの世界、私は私だけの世界で、あなたはあなた自身の世界。そして一人ひとりが、自分だけの世界になろうとする。これがあらゆる問題の根底にあります。個人という考えをあまりに深刻に受け止めてきたのです。
自国インドだけでなく、世界全体を見たとき、今後数年について何が見えますか。
福祉、豊かな暮らし、成功についての考え方を再構築しなければなりません。福祉とは何かについて、より理にかなった考え方へと変えなければ、それに投資しなければ、私たちの成功そのものが災厄になります。インドには、木の枝を切りながら枝の先端側に座っている男のたとえ話があります。切り終えたとき、彼は落ちてしまいます。今の私たちは、まさにそのような状態です。成功や福祉、豊かな暮らしについての考え方があまりに歪んでいて、常に誰かより上に立とうとしているからです。私たちは自らを災厄へと追い込んでいます。
この世代と未来の世代にとって世界で最も重要なのは、豊かな暮らしについての考え方を練り直し、再構築することです。現在、豊かな暮らしとされているものは、破滅的な過程です。この方向へ勢いよく進めば、大惨事になります。
これは、西洋世界を覆い、世界の多くの国にも広がった物質主義や消費主義への執着を捨てる必要がある、ということでしょうか。私たちは変化し、適応する必要性を認識していると思いますか。
そのように考える人は少数ですが、長い間不足を強いられてきたより大きな割合の人々は、今まさに急速に前進しています。私たちが考える豊かな暮らしのモデルは米国です。「リビング・プラネット」の統計によれば、地球上の76億人または78億人が平均的な米国市民と同じものを持つには、地球が4.5個必要になります。しかし、残っている地球は半分だけです。その方向へ進むのは理にかなっていません。ここで西側諸国の責任は非常に大きいのです。成功と福祉について新しい考え方を示す必要があります。試みている国も少しはありますが、全体としては逆の方向へ進んでいます。
企業は、福祉や豊かな暮らしについての考え方を変えさせてはくれません。消費拡大を前提に成り立っているからです。そこで経済の原動力を練り直し、一定の速度で回ってすべての人に福祉をもたらすものにする必要があります。少数の人が数分間だけ宇宙へ飛び出してピクニックをするために、突進するのではなく。私たちは今、こうした過剰な状態にあります。4人が冒険に出て戻ってくるのは、すばらしいことです。しかし、明日何百万人もの人々が出かけ始めたらどうでしょう。経済的な費用だけでなく、ほかにどんな代償があるでしょうか。
排出量の少ない自動車を売る話をしながら、人々は今、4人をピクニックに連れていき、少しの無重力を体験させたロケットの打ち上げ時の火球や爆発について語っています。食べる量を減らして、もっとジョギングすれば、無重力状態は手に入るのに。
福祉の考え方を再構築する
ヨギーとしての実践は、福祉についての考え方を再構築し、物質的な願望に突き動かされる度合いを減らして、精神的な考慮をより重視するうえで、どのように役立ちますか。
今、私たちは何を追い求めているのでしょうか。人間が追求するのは、自らの福祉です。生き延びられるかどうかが問題のとき、それは大きな課題です。それが解決すると、幸福や喜び、愛、心地よい経験を求めます。その追求のために、私たちは地球を引き裂いています。しかし人間の経験は内側から生まれます。痛みも苦悩も恍惚も、私たちの内から生じます。人間の経験がすべて内側で生み出されるのなら、喜びに満ちているために、なぜ世界を掘り返すのでしょうか。最大の問題は、人間が子どもの頃のように自然に喜びに満ちていないことです。
人生の出発点では、誰もが穏やかで喜びに満ちています。しかし知性が育つにつれ、惨めになっていきます。私は知性が解決策だと思っていましたが、どういうわけか、人々は知性こそ最大の問題だと証明しようとしているようです。それをストレス、緊張、不安、狂気など、何と呼んでもかまいません。知性があなたに敵対しているのです。知性があなたに敵対すれば、地球をひっくり返すほどのことをしても、問題は解決しません。
人間が惨めになったのは、周囲の生活が悪いからではありません。教育制度や社会構造が、自分自身の能力、心、記憶、想像力をどう扱うかを教えてこなかったからです。人々は常に何かに苦しんでいます。幼児期には歩けないという問題があり、よちよち歩きの頃にはおむつの問題があり、思春期にはホルモンの問題があります。中年期には危機が訪れ、老年期は悲惨です。これには終わりがありません。
いつでも、人々はそれぞれの問題を抱えています。人生の各段階が問題と名付けられてきました。人生が問題だからではなく、教育制度や社会構造が、これに対処する方法を示していないからです。私たちは別の惑星を開発することには関心がありますが、この惑星をどう自分の手で治めるか(自分自身を指して)には関心がありません。
今、苦しんでいるのは私たち自身の能力であり、外の世界ではありません。この世代には、かつてなかった快適さが数多くもたらされました。それでも苦しんでいるのは、自分自身の知性が内側から毎日、突き刺してくるからです。誰かと一緒にいる必要はありません。誰かに拷問されなくても、自分の中に自分で苦しみを生み出し続けられます。今年、70万人が自殺したと聞いています。自殺は、知性が私たちに敵対することの究極の現れだからです。
人間に何よりもまず必要なのは、ここに座っているだけで、自分の本性によって至福に満たされることです。これは実現しなければなりません。そうなれば、世界での行動は強迫的なものではなくなります。今、誰もが強迫的な状態にあるため、搾取が際限なく続いています。世界から幸福を搾り取ろうとしているからです。ジャガイモ農家がリンゴの木のところへ行き、上を見ずに地面を掘り始めるようなものです。リンゴは地下では育たないので、実らなくなるだけです。地面を掘れば、木を根こそぎにしてしまいます。それでもリンゴは手に入りません。リンゴを得るには上を見なければなりません。
人間も同じです。喜びや平穏、健康、恍惚、至福を望むなら、内側に目を向けなければなりません。今は外の世界からそれを絞り出そうとしています。これを物質主義と呼んでもよいでしょうが、狙いを誤ったミサイルです。
問題は農業にある
解決策は私たち一人ひとりの内にあるのですね。では、政策の観点から、世界をより良い場所にするために必要な大きな変化は何でしょうか。
世界の大部分が民主主義になるにつれ、人々を喜ばせるための政策が作られるようになりました。人々が満足しなければ政治家を選ばず、政治家の任期も行政上の4~5年間に限られるからです。政策は人々を喜ばせ、任期中の目的にかなうよう作られます。企業であれ政府であれ、誰もが短期目標に関心を寄せるため、これは世界に大きな損害を与えてきました。自分の任期を超えて考えようとしないため、十分な長期的視点を持つ人はいません。しかし、世界にはこの点への意識が必要です。
有権者は、自分たちが何を望むかを表明する必要があります。私たちは「コンシャス・プラネット」運動を通じてこれを実現しようとしています。世界の有権者の60%、つまり30億人以上(56億2000万人が投票権を持っています)に働きかけ、政府を選ぶよう促す取り組みです。人々の意識を変えようとしていますが、訴えは一つの課題に絞ります。10個のことを言っても理解されないからです。
多くの国で飢饉が何百万人もの命を奪ってきました。特にインドや中国で、また時代によってはヨーロッパでもそうでした。今日では、食料の供給体制が整い、どこからでもどこへでも運べるようになっています。農業の過程を管理できるようになったため、飢饉は起きなくなりましたが、その代償は土壌に重くのしかかっています。インドの土壌のほぼ60%は有機物含有率が0.5%未満です。農地には最低でも3~6%の有機物含有率が必要です。森林では有機物含有率が70%に達します。本来、土壌はそのようであるべきです。「人間」を意味する「human」は、豊かで生きた土壌を意味するラテン語の「humus」に由来します。私たちの体は、まさに私たちが歩く土そのものだからです。
土を守ることは、私たち自身である土を守ることです。国連によれば、地球の土壌で作物を育てられるのは、あと最大80~100回です。つまり45~60年後には、食料危機に直面します。家の壁でカブを育てている人に会ったことがあります。取り組み自体はすばらしいのですが、なぜ収穫しないのでしょうか。人々が見に来るので、見せるためにそのままにしておくと言っていました。しかし土を豊かにしなければ、ほかに方法はありません。
少なくとも192の民主主義国家すべてで、地球規模の政策をどう変えるか、農地所有者が一定の有機物含有率を保つための簡単な規則をどう作るかを考えています。有機農業の話をしているのではありません。何をするかは彼らの自由です。しかし土壌は豊かでなければなりません。私たちは今、土壌を使っていますが、次の世代も将来それを必要とします。彼らが月や火星へ行くわけではありません。私たちと同じく、ここで暮らすのです。
土壌を少なくとも適度に豊かな状態で残すことは、極めて重要です。損傷が広範囲に及んでいるため、私たちに与えられた状態のまま残すことはできないでしょう。地球の砂漠化は深刻な問題です。私たちの体そのものが土だからです。海洋に次いで、世界最大の炭素吸収源は土壌であり、最も多く水を蓄えるのも土壌です。土壌の状態が良ければ、植物の営みを通じて吸収し、循環させられる炭素の量は膨大になります。世界のかなりの部分、特に熱帯地域を日陰で覆わなければなりません。
今、苦しんでいるのは私たち自身の能力であり、外の世界ではありません。
インドのイシャ財団創設者、サドグル
現在、地球温暖化について語られています。私はこの22年間、地球温暖化が起きればインド南部には恩恵があると言ってきました。人々は信じませんでしたが、今日降っている大量の雨を見てほしいものです。私たちにとって、かつての夏はほとんどなくなりました。夏の間も雨が降ります。気温が1.5°C上昇すれば、何百万、何十億トンもの水が蒸発するでしょう。それはどこへ行くのでしょうか。
水は大気中にあります。半島や島々はその恩恵を受けますが、地球の北部では、雪として降っていたものが雨になり、ニューヨーク市で前例のない洪水のような、途方もない災害が起きるでしょう。こうした問題について、誰もが炭素排出や石炭燃焼を考えます。しかし最も重要なのは、土壌が樹木に覆われていれば、地球温暖化は現在のペースで進行しないということです。
つまり、農業と土壌の再生が重要なのですね。
問題は、常に産業の問題に焦点が当たっていることです。しかし産業は、適切な規制とその執行によって容易に改善できます。
農業は世界の土地のほぼ60%を占めています。問題はそこにあります。それでも農業では、従事者は貧しい人々だから手を出せない、という理屈が常に逃げ道になってきました。そこで私たちは、過去20年間に実施し、10万人を超える農家に恩恵をもたらしてきた方法を考案しました。経済活動を通じて土壌の生態学的価値を高めるよう、生態系と経済を結びつけたのです。さまざまな面で大きな生態学的恩恵と経済の改善が生まれています。農家の収入は何倍にも増え、同時に土壌も豊かになっています。
農家は毎年、土壌に腐植をさらに加えています。これは世界中、特に熱帯地域で起こる必要があります。熱帯では、日光が地面、しかも耕されてむき出しになった土壌に降り注ぐと、生物多様性がすべて失われることになります。実際、この30年間で昆虫のバイオマスの80%が失われました。私たちは土壌を絶滅させようとしているのです。土壌に生物量がなければ、砂も同然です。
何に希望を持っていますか。
私は人間に希望を持っています。地球上で唯一の問題ではありますが、私たちにはある程度の知性が備わっているので、変わることができます。ここに座って世界に語りかけることなど、かつては不可能でした。この地球には偉大な人々が数多く現れましたが、彼らが語りかけても、聞いた人は10人にも満たなかったでしょう。今では、ここから世界中に話しかけられる技術があります。そうした技術や道具が使える今こそ、人類を変革する時です。それをしないなら、単に関心がないということです。
私たちの組織の動画は、昨年、合計18億2000万回視聴されました。誰もが手元にある道具を使って取り組めば、すべての人に教育を届けられます。今はそれを実現するのに最適な時です。技術も手段もあります。私たちの生きているうちにこれを果たすために、必要な決意と勇気はあるでしょうか。これは私たちが果たすべき世代の責任です。実現させましょう。
このインタビューは、ダボス・ビジョンをまとめ、未来に向けて建設的で共通の物語をどう形づくるかを探る、クラウス・シュワブとティエリー・マレレの新刊『The Great Narrative』に寄せられた意見の一つとなった。
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