「公正な移行」なしにネットゼロを目指す選択肢はない理由

For a just transition, developed markets must help emerging markets find the financing they need.
For a just transition, developed markets must help emerging markets find the financing they need.Image: Shutterstock
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  • 先進市場には長期的な気候目標を達成するための資金があると考えられる一方、新興市場では資金不足が依然として大きい。

  • 公正な移行を実現するには、先進市場が新興市場の必要な資金調達を支援しなければならない。ここで民間投資家は大きな影響力を発揮できる。

  • 必要な民間投資を呼び込むには、政府と民間部門の連携を強化する必要がある。

気候変動は国境を選ばないが、その影響は途上国の最も貧しい市場で、はるかに深刻に感じられるだろう。

化石燃料への依存を減らし、二酸化炭素排出量のネットゼロを目指すために行動が必要だという現実に、世界は気づき始めている。しかし、誰一人取り残さない形で移行しなければならない。

最大の問題は、ネットゼロへの移行に必要な資金をどう確保するかだ。各国政府は、再生可能エネルギー源の導入拡大、よりクリーンな交通網の整備、建物のエネルギー効率向上に向けた方策を検討している。

先進市場には長期的な気候目標を達成するための資金があると考えられる一方、新興市場では資金不足が依然として大きい。最新の報告書「ジャスト・イン・タイム」によると、新興市場が移行を実現するには、約95兆ドルが必要となる。

ネットゼロ達成に必要な排出量削減の50%は、まだ発明されていない技術によって実現できる可能性がある。
ネットゼロ達成に必要な排出量削減の50%は、まだ発明されていない技術によって実現できる可能性がある。
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資金の確保は容易ではない。新興市場での増税や借り入れは、最も不利な立場にある一部の地域社会にさらなる負担をかける可能性がある。新興市場の家計消費は年平均で5%減少し、今から2060年までに家計は合計で約2兆ドル分、より貧しくなると見込まれる。それでは到底うまくいかない。

必要なのは公正な移行、つまり新興市場が成長と繁栄を犠牲にせずネットゼロを達成できる移行だ。炭素集約型の活動に成長を大きく依存している限り、こうした市場の多くでは排出量が増え続ける可能性が高い。新興市場に気候資金を振り向け、より持続可能な成長を育むのが早いほど、ネットゼロへの移行も早まる。

「公正な移行」に向けた資金調達

公正な移行を実現するには、先進市場が新興市場の必要な資金調達を支援しなければならない。ここで民間投資家は大きな影響力を発揮できる。

必要とされる94.8兆ドルのうち、民間投資家には推定83兆ドルの投資機会がある。しかし、2020年の報告書「50兆ドルの問いが示すように、新興市場への投資を促すのは容易ではない。

世界の運用資産総額が50兆ドルを超える上位300社の投資会社は、中東、アフリカ、南米への投資割合がそれぞれわずか2%、3%、5%にとどまる。

民間投資をさらに促せば、新興市場の移行を後押しすると同時に、成長も高められる可能性がある。投資家が公正な移行への資金提供を支援すれば、今から2060年まで、新興市場の家計消費は年平均で最大4.5%増加し、同じ期間の新興市場のGDPも年平均で3.1%増加し得る。

この投資を実現することが極めて重要だ。これ以上大きなものはないほど、懸かっているものは重大である。新興市場がネットゼロへの移行で支援を得られなければ、移行をまったく実現できずパリ協定の目標が達成されないか、移行しても経済に壊滅的な影響が及ぶことになる。炭素を動力源としてきた豊かな国々が二世紀にわたり享受してきたのと同じ発展を、これらの市場に認めないのは不公正であり、世界的な不平等の深刻化や社会不安を招きかねない。

官民連携

必要な民間投資を呼び込むには、政府と民間部門の連携を強化する必要がある。公共部門は、民間投資を促すために自らの資金を活用しなければならない。例えばブレンデッド・ファイナンスは、公的資金で資本コストを補助したり、損失の可能性を軽減したりしてリスクを下げることで、民間部門の投資を呼び込める。

一方、銀行などの金融機関は、新興市場への投資に向けた革新的な金融商品を打ち出し、主導的な役割を果たす必要がある。新興市場の低炭素プロジェクトは、インパクトと期待収益の両面で大きな機会をもたらし、必要な資本を呼び込む助けとなる。報告書「50兆ドルの問い」の調査で明らかになったように、 投資家の88%が、2017年から2020年にかけて新興市場への投資は先進市場と同等以上の成果を上げたと回答した。

さらに重要なのは、新興市場がネットゼロへ移行するには、銀行がCOP26で表明した誓約を果たす必要があることだ。例えば、私たちが主要メンバーを務めるグラスゴー金融同盟(GFANZ)は、共通の気候目標の達成に向け、代表する130兆ドルの資産が持つ影響力を最大限に活用しなければならない。

要するに、必要な資金は巨額であり、ネットゼロの達成は決して容易ではない。それでも、越えるべき山がどれほど高くても、公正な移行を実現する力を信じ、楽観的であり続けなければならない。

私たち全員が、はるかに強い切迫感を持って行動し、困難な課題に粘り強く共に取り組む必要がある。これほど大きなものが懸かっているのだから、そうしない理由があるだろうか。

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