スペインのペドロ・サンチェス首相は5月24日火曜日、ダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会の全体会合で演説した。
ロシアによるウクライナ侵攻は、欧州連合(EU)とその理念すべてに対する直接的な攻撃でもあると述べた。
スペインが現在、10万人を超えるウクライナ難民を受け入れていることを明らかにした。
回復への道は欧州が共に歩まなければならず、戦争は大陸が遅滞なく歩みを進めるべきことを改めて示していると述べた。
ベルリンの壁が崩壊し、ソ連が解体したとき、私はまだ10代だった。その後の10年間は、フランシス・フクヤマの「歴史の終わり」論に彩られた。自由民主主義と市場経済が勝利し、後戻りはあり得ないという主張だ。私の世代は、経済成長、相互のつながり、思想と言論の自由、人類の進歩は、必然であると同時に予測可能なものだと考えながら成長した。
しかし2022年の今、自由民主主義は自然に実現するものではないと、私たちはよく知っている。それには相当な努力と育成が必要だ。そして歴史の終わりは、まったく見えていない。今日ここで皆さんにお話ししている間にも、ウクライナの人々は自由と民主主義のために戦っている。彼ら自身のためだけでなく、私たちのためにも。
欧州の地で、爆撃や虐殺のあのようなおぞましい光景を再び目にするとは思ってもいなかった。ブチャやマリウポリといった地名は、処罰を免れてはならない蛮行と戦争犯罪の代名詞となった。
プーチンの残虐な侵略に直面するウクライナの人々の勇気と尊厳に、私自身、そしてあえて言えば、今日ここにいる皆さん全員が抱く称賛を、改めて表明することしかできない。今日、彼らは私たち共通の欧州の価値を真に守る姿を体現している。
この違法で、不合理かつ不正な戦争は、ウクライナ内外に苦しみと絶望をもたらしている。
国際的な食料危機
私たちは、第二次世界大戦以降で最大の人々の流出を目の当たりにしている。600万人を超える人々が国外に逃れ、さらに800万人が国内で避難を余儀なくされている。しかし、これは地域紛争にとどまらず、欧州だけの紛争でもない。出身地にかかわらず、私たち全員に影響を及ぼす重大な国際危機だ。
そして、これから何が起きるのかを十分に認識しなければならない。ロシアのウクライナ侵攻は、前例のない世界的な食料危機を引き起こし、最も脆弱な国々や個人、家族に深刻な影響を及ぼしている。国連によると、17億人が貧困と飢餓の危険にさらされている。
食料輸入への依存度が最も高い国々は、前例のない供給不足に直面し、その国民は記録的な食料価格の影響を受けている。同時に、一部の国は一方的な貿易措置を採用し、世界の需要を満たすことをさらに難しくしている。
食料不安は社会不安や、しばしば武力紛争の引き金となる。したがって、食料生産と貿易の仕組みを回復し、最も脆弱な人々の食料安全保障を実現するため、あらゆる努力を尽くすことが不可欠だ。
スペインも役割を果たす
この機会に、ウクライナへの自国の支持と、プーチンが目的を達成しないよう支援するという私たちの決意を改めて表明したい。
スペインは再び、連帯の模範を示した。ウクライナの人々は、必要な限り、スペイン国内でウクライナ難民を受け入れることを安心して期待できる。現在、その数はすでに10万人を大きく超えている。
これまでと同様、プーチン政権に対する最も厳しい制裁を引き続き支持し、ウクライナへの人道支援と援助も続ける。
私たちの支持は揺るぎない。かかっているものを理解しているからだ。主権国家の領土保全、その国民の命、夢、幸福、そして国際法、自由民主主義、欧州の大義である。
誤解してはならない。プーチンによるウクライナへの残虐な侵略は、欧州連合(EU)とその理念すべてに対する直接的な攻撃でもある。結束と決意をもって対応することで、EUは国際秩序の基本原則を守るだけでなく、創設以来その土台となってきた価値そのものを守っている。
欧州の結束
この数年、欧州統合の歩みが容易ではなかったことは明らかだ。まず、新型コロナウイルス感染症が私たちに大きな打撃を与えた。そして今、ウクライナ戦争の影響に対処しなければならない。しかし、課題が大きいほど、私たちの対応はいっそう断固としたものになる。
この困難な時期を通じて、私たちは常にさらなる統合を選んできた。分断ではなく、団結を。共通のプロジェクトである欧州を、より強くすることを。
ワクチンの共同購入、雇用を守るためのSURE制度、そして次世代基金を通じて、それを実現した。今、戦争への対応でも再び同じことを進めている。
侵略者に長期的なコストを最大限負わせるため、前例のない制裁を科している。そして、この戦争によって、ロシアと世界に対するプーチンの構想が実現することのないようにしている。
ウクライナの友人たちが自由と民主主義のために戦うのを支援するだけでなく、私たちは一丸となって、より大きな戦略的自立に向けて進んでいる。
単一市場を深化させ、サプライチェーンを多様化し、エネルギー、重要技術、原材料、半導体、医療製品への依存を減らすことで、私たちは強靱性を高め、新たな経済・地政学的現実、すなわち化石燃料後の時代への移行を加速している。
欧州の防衛力を強化する取り組みも、同じ考え方に導かれている。戦略的依存を減らし、安全保障と防衛能力を高めるため、投資額を増やすだけでなく、より効果的に投資したい。
また、欧州連合の新たな社会アジェンダを推進するにあたり、私たちは確実に最高水準の意欲を示さなければならない。不平等との闘いと社会的結束の促進こそが、進歩、繁栄、福祉という目標を最も効率的に達成する唯一の方法だからだ。
要するに、これは私たちが共に歩まなければならない道であり、ウクライナでの戦争は、遅滞なく歩みを進めるべきことを改めて示している。
世界経済の見通し
ロシアの侵略は世界経済の見通しを変えつつある。新型コロナウイルス危機から力強く立ち直りつつあったが、エネルギー価格の高騰によるインフレから、消費者心理の悪化、サプライチェーンのボトルネックまで、各国経済は深刻な影響を受けている。
当然ながら、スペインもこのショックを免れてはいない。
2020年と2021年に、新型コロナウイルス感染症が経済に与える影響に対処するため、約800億ユーロの公的資金を投入した。さらに最近、ウクライナ紛争がスペインの家計、中小企業、特定の産業分野に及ぼす影響を緩和するため、160億ユーロの対策を承認した。
戦争が始まるかなり前から、私の政権は一時的な減税や補助金を通じ、EU全域での電気料金の上昇を乗り越える取り組みを主導してきた。
最近では欧州理事会が、電力生産に使うガスを対象に、イベリア半島で12か月間の価格上限を承認し、まもなく実施される。これにより価格を引き下げ、エネルギー市場の極端な変動や急騰の可能性から家計と企業を守ることができる。
私たちは再び逆境と闘い、生活に大きな影響を与える極端で外的、予測不可能な要因を乗り越えなければならない。
スペイン経済
それでも、スペイン経済には楽観視できる固有の強みがある。
スペイン経済は2022年第1四半期に前年同期比6.4%成長し、年間成長率は4.3%に達すると推定している。これは先進国の中でも最高水準の伸びの一つだ。
雇用は増え、財政赤字は減少している。経済の中核をなす輸出産業と観光産業は新型コロナウイルス感染症前の水準を回復し、この成長を牽引している。
言い換えれば、他の経済よりもはるかにうまく損害を抑えている。
中長期的な見通しを見ると、スペイン経済の基礎的条件はさらに強固だと考えている。さらに重要なのは、スペイン政府が国の近代化に向けた明確なロードマップを持っていることだ。
私たちの構想を支える三つの重要な柱を紹介したい。
1. 第1の柱は、NextGenerationEU復興計画の実施である。
昨年、私たちは6年間で700億ユーロを投じる意欲的な復興・変革・強靱化計画を開始した。この計画はすでに経済を変革しており、グリーン移行、デジタル変革、社会的・地域的結束、ジェンダー平等という四つの基本的な推進力に基づいている。
今、NextGenerationEU資金の活用に関するあらゆる面で、スペインが断然最も先行している国だと、誇りを持って言える。
ポルトガルとともに、復興計画の承認を受けた最初の国となり、マイルストーンと目標の達成に連動した資金を最初に受け取り、さらに2回目の資金拠出を最初に申請した。
そして、ウクライナで戦争が始まって以来、その実施を加速している。ロシア産のガスと石油への依存を終わらせる答えは、まさに経済の脱炭素化にあるからだ。
しかし、スピードだけでは不十分だ。資金を最も必要とされるところに投入しなければならない。この考えのもと、官民連携を強化する革新的な仕組みを創設した。これを私たちは戦略プロジェクト、またはPERTEと呼んでいる。
PERTEは、スペイン経済の成長、雇用、競争力を牽引するために創設された。民間の取り組みを補完するために国の介入が必要な戦略分野で、優先度が高く複雑な投資を促進し、調整する仕組みである。
これらのプロジェクトを通じて300億ユーロを超える公的資金を投入し、その約4倍の民間資金を呼び込むことを目指す。電気自動車とコネクテッドカー、再生可能エネルギーと水素、水管理、循環型経済、医療、航空宇宙などの分野で、すでに10件の戦略プロジェクトを承認した。
今日、私の政権はマイクロエレクトロニクスと半導体に関する新たな画期的戦略プロジェクトを承認する。120億ユーロを超える公的投資により、需要拡大とサプライチェーンの混乱に対応するため、業界がマイクロチップの生産を拡大・多様化する取り組みを支える最良のパートナーとなることを目指す。
スペインは最先端技術をめぐる競争に敗れることはない。それどころか、産業と技術の進歩を先導する立場を目指しており、半導体に関する戦略プロジェクトがそれを証明している。
2. 第2の柱は、経済の構造的問題に対処するため、私の政権が始動させた意欲的な改革課題である。欧州委員会によるスペイン向けの具体的な勧告に基づき、復興計画と連動した100を超える構造改革で構成されている。
私たちが取り組みを集中させている三つの分野を紹介したい。
第一に、グリーン移行と気候変動対策である。経済の脱炭素化に向けて300億ユーロを投じる。これはスペインのNext Generation資金の40%にあたる。これらの投資と併せて、気候変動対策を強化し、循環型経済、自家消費、持続可能なモビリティを促進する意欲的な改革を進めている。天然資源を最大限活用し、グリーン水素からエネルギー貯蔵、クリーンな自動車まで、未来の技術に大規模な投資を行うことで、スペインは世界をリードする持続可能性の国を目指す。
第二に、デジタル変革である。私たちのデジタル・アジェンダは、デジタル技能からサイバーセキュリティ、中小企業のデジタル化から健全なクラウド政策、5G接続から人工知能まで、あらゆる分野を網羅する構想だ。
第三に、教育と人材の誘致である。人的資本こそ経済成長を動かす原動力だと理解しているからこそ、教育制度を根本から改革している。就学前教育の充実から職業訓練制度の大幅な拡充・近代化まで、大学改革から、適切なインセンティブを設け、研究・開発・イノベーションへの資金を倍増させる新たな科学法まで進めている。
3. 最後に、改革課題全体を貫く柱として、質の高い安定した雇用の実現を目指している。雇用主と労働組合が交渉し合意した労働市場改革により、スペインは労働市場に根深い不安定雇用と有期雇用の問題を是正する軌道に乗っている。旧法のもとでは、新規契約の10件に1件しか無期雇用ではなかった。現在は、新たな有期契約1件につき、無期契約が1件結ばれている。雇用創出率は前年同期比5%に達している。若者と女性の失業率は着実に低下している。そして史上初めて、国内の就業者数が2,000万人を超えた。公的投資を増やし、教育をより良くする。雇用を増やし、仕事の質を高める。つまり、誰もが成長できる機会を増やすことだ。
最善の社会政策とは、社会全体に質の高い雇用機会を提供すると同時に、支援を必要とする人々を守る強固な福祉国家を組み合わせるものだからだ。そして、これはスペインのような国だけに当てはまる方策ではない。何億人もの人々が憧れてきた生活様式を本当に守りたいのなら、誰もが質の高い仕事に就けるようにする必要がある。誰もが経済的機会を得られるようにする必要がある。
しかし、それは国内外での租税回避や不公正な税慣行と闘うことも意味する。新興国が切望する機会を本当に提供できるだけの勇気を持つことも意味する。これらの地域の人々の人間開発に真に投資することを恐れてはならない。不可欠なインフラ事業への資金提供にとどまってはならない。国内の市民に対しても、他の地域に対しても、長期的な関与と包摂こそが、権威主義と排外主義に対する最善の処方箋である。
未来は切り開くべき土地
私たちが目の当たりにしているのは、歴史が30年前に終わったわけではないということを改めて示すものにとどまらない。私たちは、無邪気さの時代の終わりを目撃している。
今、私たちの社会の基盤となる価値を守らなければならないことが見えてきている。
プーチンの正面からの攻撃は、未来は切り開くべき土地であることを思い起こさせる。過激主義と専制政治の台頭は、決して必然ではない。それどころか、民主主義、自由、国際法の価値が今後も発展し続ける明確な可能性がある。
自信を持つべき時だ。恐怖と憎悪で未来を阻もうとする勢力を恐れてはならない。賢く使えば、私たちには最も強力な武器がある。民主主義と多国間主義は、ときに混乱し、騒がしく、不完全かもしれない。それでも、長期的に平和と自由へ至る唯一の道だと、私たちは知っている。
ジョージ・オーウェルはかつて、「過去を支配する者は未来を支配し、現在を支配する者は過去を支配する」と名高い言葉を残した。今日、最後に皆さんに伝えたいのは、過去を支配するためではなく、未来をつかむために、今に対して勇敢でなければならないということだ。現状に甘んじる時代は終わった。決意を貫けば、理性、自由、民主主義は必ず勝利する。
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