水と気候の関係を理解することは、気候危機に取り組むうえで不可欠です。
気候変動の緩和に欠かせない水は、世界の温室効果ガス排出量の10%を占める一方、気候変動への適応にも大きな可能性をもたらします。
3月の国連水会議では、この分野で確かな誓約を求めます。
水は持続可能性への影響を増幅させる要因であり、気候変動や生態系の劣化と切り離せない関係にあります。自然災害の90%は水に関連しています。洪水、干ばつ、あるいは猛烈な暴風雨によって、毎年数百万規模の損害が生じています。年を追うごとに、記録的な多雨期や乾燥期が増え、生計に影響を及ぼし、サプライチェーンを混乱させ、地域社会に甚大な被害をもたらしています。同時に、世界経済の減速、食料不足、エネルギー供給の混乱など危機が深まるなか、地域社会がこうした災害から立ち直ることも難しくなっています。現在の危機は、より構造的な問題の表れです。持続可能な開発目標を達成するには、短期的な課題と並行して、こうした問題にも取り組まなければなりません。
今年3月に開催予定の、46年ぶりとなる国連水会議は、地球システムを再生させる力であり、その血流でもある水の重要性を強調する重要な機会となります。この会議は、私たちが直面する問題の緊急性を示し、重要な資源である水を持続可能な形で管理するための大胆な誓約を呼びかけます。清浄な水が利用できることは、人々の暮らしを支え、雇用を生み、包摂的な経済成長を促し、持続可能な開発を確かなものにします。
水の真の価値
水は資源として過小評価されることがあまりに多く、生態系サービスや人間開発にもたらす恩恵も著しく過小評価されてきました。社会における水の真の価値が認識されなければ、問題の深刻さを把握することは困難です。
保険、ファッション、食品・飲料に至るまで、水は実に多くの産業の中核にあります。水に関する非効率性に対処すれば、民間企業のリスクを減らせるだけでなく、周辺地域の水の安全保障にも役立ちます。たとえば、大手ホテルチェーンでは、客室1室の1日あたりの利用につき、淡水を380~1,500リットル使用します。水不足の地域に立地している場合、周辺地域に必要な水を転用してしまう可能性があります。その結果、人々の生計や暮らしに影響が及びます。
ファッション産業は、農業に次ぐ最大級の水消費産業の一つであり、世界の淡水取水量の4%を占めています。ジーンズやTシャツ用の綿花の栽培から、生地の染色、最終製品の加工まで、各工程で水が必要です。
水は、豊富にあるように見える地域で最も過小評価されがちです。しかし、気候変動によって気象パターンの変動が続くなか、あらゆる産業のウォーターフットプリントを把握し、利用可能な飲料水の価値を適切に評価することが必要です。水の価値が適切に評価されれば、価格設定とガバナンスも改善されます。これは、サプライチェーン全体で気候にプラスの変化を促すため、事業戦略の中心に水を据えることの重要性を示しています。
水を通じたレジリエンス
水に関連する排出量に対処しなければ、ネットゼロ目標の達成は決してできません。データサーバーの冷却から廃水処理まで、水は世界の温室効果ガス排出量の10%を占め、気候変動の緩和に不可欠です。また、化石燃料の採掘や精製にも水は欠かせず、こうした作業は水不足の地域で行われることが少なくありません。エネルギーシステムを脱炭素化し、再生可能な代替エネルギーに移行すれば、エネルギー消費に伴うウォーターフットプリントを減らし、他の用途に水を確保できます。
水がもたらす最大の可能性は気候変動への適応にあり、生態系と地域社会の双方のレジリエンスを高めます。地域社会への水供給を支える水システムのレジリエンスを高め、水関連災害に備えてインフラを強化すれば、長期的な発展と成長を確かなものにする好循環を生み出せます。たとえば、再生型の手法を取り入れて農地管理を変えることで、土壌はより多くの水を保ち、灌漑への依存を減らせます。これにより農業で使う淡水の量が最適化され、肥料や農薬など農業資材に由来する化学物質の流出から地下水を守り、農業関連の排出量を減らし、将来の収穫に向けて土壌の健全性を保てます。
インフラの面では、ハリケーンや洪水などの水関連災害に脆弱な地域社会を考えると、都市のレジリエンスは、強固な水管理システムによって支えられます。廃水・雨水管理システムを更新し、水位の急上昇により適切に対応できるようにすれば、水路を汚染する合流式下水道の越流(CSO)を減らし、経済成長や開発への支障も軽減できます。都市は水の利用経路をより循環型に見直し、全体のウォーターフットプリントを減らすとともに、未処理の廃水が水域に戻る量を抑えることもできます。
つまり、変化する気候に対する世界のレジリエンスを高めるには、自然・人工を問わず、水システムを適応させることが不可欠です。
システム思考によるアプローチ
私たちはますます個別の領域に分断されて活動していますが、ここで挙げた例は、農業・食料システム、エネルギー、自然、水が相互に結びついていることを示しています。こうした課題に同時に取り組み、自然の生態系や気候パターンへの今後の人間の介入が、人々と地球にとってプラスとなるようにするには、システム思考によるアプローチしかありません。世界経済フォーラムの2023年年次総会では、官民のリーダーがパネルに参加し、セッション「水:地球システムの血流」
必要な情報はすでに手元にあります。あとは、進捗を追跡するためにデータをどう測定し、活用するかです。生態系の回復とネットゼロの達成に必要なことは分かっています。各分野がどう結びついているかも分かっています。こうした課題について考えるために学際的なアプローチを構築するには、この情報を活用することが欠かせません。科学的根拠に基づく目標を設定し、データを広く利用可能にすれば、こうした解決策はさらに強化されます。
最後に、新技術と組み合わせて、ビジネスモデルや資金調達モデルを革新的に考えることが、最善の道筋です。革新的な技術は急速に開発されていますが、初期の実証段階を越えて規模を拡大するのに苦労しています。こうした技術革新を支えるために、ビジネス、資金調達、ガバナンスのモデルを適応させれば、解決策が発展するために必要な環境を整え、水システムの効率とレジリエンスを高められます。年次総会では、グローバル・ウォーター・イニシアチブが水イノベーション・チャンピオン会合を開催し、こうした重要な実現要因について知見を提供するとともに、2023年3月以降に向けた実行可能な誓約を提示します。
このイノベーションのエコシステムを発展させ、水に取り組む起業家、すなわちアクアプレナーが技術を拡大できるよう、フォーラムはHCLTechと提携し、アクアプレナー・イノベーション・イニシアチブを通じて、フォーラムのオープンイノベーション・プラットフォームUpLinkで5つのチャレンジを実施します。アクアプレナーが成長し、水システムに継続的に貢献するために必要なネットワークと資金を提供します。最初のチャレンジであるグローバル淡水チャレンジは11月に締め切られ、最初のトップ・イノベーターの一団が、発表される予定です。こうしたイノベーターは、2023年ダボス年次総会で、水利用のモニタリング、水質の回復、地域社会と生態系のレジリエンス強化に向けた、データを活用した新たな手法を紹介します。
水のために行動を起こすべき時は今です。水への取り組みをさらに46年間遅らせる余裕はありません。大胆で測定可能な誓約を掲げれば、世界中のすべての地域社会が水に恵まれる未来を確かなものにできます。国連水会議は、水と気候を結びつけるまたとない機会です。2023年3月に、あなたは何をもたらしますか?
世界の水危機に対処するフォーラムの取り組みについて、詳しくはこちらをご覧ください。





