米国経済は回復前にさらに悪化する可能性も—知っておくべきこと

The US economy is struggling — and EY predicts that the pain is not yet over.
The US economy is struggling — and EY predicts that the pain is not yet over.Image: REUTERS/Andrew Kelly
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  • EYは、実質GDP成長率が2023年に約0.9%、2024年に約1.2%になると予測している。

  • 高止まりする金利、物価、賃金を背景に企業と消費者の信用環境が引き締まり、民間部門の活動が抑制される。

  • パンデミック後の独特な経済状況により、景気減速が起きた場合、過去の景気後退とは大きく異なるものになる。

EYの予測によると、米国経済は回復前にさらに悪化する可能性が高い。

高止まりする物価、高金利、そして信用環境の引き締まりが重なり、今後数カ月は企業投資、個人消費、取引市場の重しとなる。経済全体に広がる不均衡の兆候は見られないものの、景気後退はしばしば心理面で非線形に進行する。

EYは年央の景気後退を引き続き予想しており、FRBは5月に25ベーシスポイント(bps)の利上げをもう一度実施し、年末までに「調整」を目的とした利下げを実施する可能性が高い。

チーフエコノミストの展望 2023年5月 Square
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苦境に立つ住宅市場

金利に敏感なすべての部門が顕著な後退を経験しており、調整の影響を最も強く受けているのが住宅市場だ。住宅販売は過去1年間に30%急減し、建設活動も遅れて落ち込んでいるため、今後数カ月も住宅部門は大きな圧力にさらされる可能性が高い。最近の金利低下と住宅価格の軟化(特に過熱した一部の地域市場)は、住宅購入を後押しする可能性があるものの、住宅取得のしやすさは依然として過去最低水準に近いことを忘れてはならない。

幸い、歴史的な速さで進んだ住宅市場の調整は、家計のレバレッジが20年ぶりの低水準に近い時期に起きた。そのため、今回の調整は、過剰なレバレッジと高まった信用リスクが重なり、より広範な金融危機につながった2008年の再来ではない。住宅所有者の80%が4%未満の住宅ローン金利を固定していることから、今後の住宅市場にとって最大の懸念は信用リスクというより、住み替えの少なさと参入障壁の高さである。

企業投資が縮小

新規受注、雇用、受注残がいずれも縮小し、企業投資活動は弱まっている。需要が継続的に減速し、中国の再開による明確なプラスの波及効果も見られないなか、企業の景況感は変化しているようだ。耐久財の受注と出荷の動向も急速に悪化しており、今年第1四半期の設備投資の勢いは2022年末より弱まったことを示している。資本コストの上昇が構造物への支出を圧迫するなか、第2四半期、場合によっては第3四半期にも企業投資が縮小する可能性が高まっている。

在庫管理は企業幹部にとって中心的な懸念事項となっている。2021年と2022年の大半を、猛烈な速さで在庫の積み増しに費やした後、今年は在庫を再調整する年になる可能性が高い。将来の需要鈍化を踏まえて企業幹部が在庫水準の適正化を図るなか、設備投資の景気循環が下方に増幅することも十分あり得る。

冷え込む個人消費

米国経済の基盤は依然として消費者だが、そこでも第1四半期末にかけて支出の大幅な冷え込みが見られる。年初の好調な滑り出しを受け、実質個人消費の伸びは第1四半期に年率換算で平均約4%となる見通しだ。この好調な数字は、消費者の基礎的な強さを誤って解釈させるおそれがある。しかし、個人所得が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前のトレンドを大きく下回り、個人消費よりも大幅に低い状態は持続可能ではない。消費者は貯蓄や信用の利用拡大によって高い物価に対処できたかもしれないが、中期的にはそれで本来の所得の伸びを補うことはできない。

過去8カ月間の実質個人所得の回復が好ましい動きではないという意味ではない。実際、好ましい動きだ。しかし、消費者が直面する逆風の拡大を相殺するには不十分だろう。特に低所得層から中所得層の世帯は、根強いインフレ、所得の伸びの鈍化、信用へのアクセス縮小、貯蓄の減少による圧力が強まっている。

所得上位20%の世帯が成長をけん引し続ける力は弱まりつつある。主に2つの要因が、こうした世帯の支出能力を圧迫するとみられる。第一に、サービス価格は急速な上昇を続けており、インフレが鈍化しているとはいえ、物価水準の上昇は消費者の意欲を確実にそぐだろう。第二に、信用環境が引き締まっており、最近の銀行部門のストレスがその影響をさらに悪化させ、高額商品やサービスへの支出を鈍らせる。EYは、第2四半期と第3四半期の実質個人消費が、いずれも年率換算で約1%縮小すると予想している。

独特な労働市場

パンデミック後の労働環境は独特だ。企業幹部が価値ある優秀な人材層を手放したがらないため、労働市場の逼迫はこの景気循環の特徴として続くだろう。一方で、採用の縮小、戦略的な人員規模の見直し、賃金上昇の圧縮が進むと引き続き予想している。最新の求人・労働異動調査(JOLTS)報告は、回答率が低いため慎重に読む必要があるものの、求人と採用の減少傾向を示した。同様に、特にホワイトカラー職で離職率が低下している。

3月の雇用統計が示したように、多くの部門で採用活動は大幅に縮小されたようだ。財部門の雇用の伸び鈍化、労働時間の緩和、賃金上昇の前期比モメンタムの鈍化、労働参加率の上昇は、労働市場の逼迫が望ましい形で和らいでいることを示している。しかし、これは米国経済のソフトランディングを示唆する一方で、前方の着陸滑走路は狭く短い。景況感は変化し、労働市場の減速は加速している。

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続く信用引き締め

銀行部門の状況がどのように推移するかを正確に見極めることは不可能だが、EYは今後数カ月で信用環境が引き締まると予想している。消費者、中小企業、不動産に金融仲介サービスを提供する数千の小規模銀行が存在する米国の銀行制度は分断されており、信用環境の引き締まりはさまざまな経路を通じて経済を減速させる可能性が高い。

国内認可の小規模商業銀行(資産規模上位25行を除く)は、米国の銀行部門における消費者ローン、商工業向けローン、住宅ローンの3分の1から半分を占める。また、商業用不動産向け銀行融資全体の約80%を占める。銀行部門のストレスが顕在化する前から、銀行の純計50%が商工業向けローンの信用基準を引き締め、25%~40%が自動車ローン、クレジットカード、住宅ローンの基準を引き締めていた。今後、引き締めはさらに強まるだろう。

米国経済への影響

EYは、信用環境の引き締まりが今後18カ月間に米国経済にGDPの約0.5%相当の下押し圧力をもたらすと予想している。その結果、実質GDP成長率は2023年に約0.9%、2024年に約1.2%になると、現在は見込んでいる。

FRBが金融政策手段とマクロプルーデンス手段を区別する二本立てのアプローチを採用するなか、EYは5月に最後の25bpsの利上げがあると予想している。これにより、フェデラルファンド金利の最終的な誘導目標レンジは5.00%~5.25%となり、連邦公開市場委員会(FOMC)の声明にある「追加的な政策引き締めが適切となる可能性がある」に沿うことになる。

FRBは今後数カ月、利下げについて「考えることを考えていない」という姿勢を保つだろうが、夏の終わりごろのジャクソンホール会合で方針転換する可能性も排除できない。その頃には、民間部門の活動鈍化、雇用喪失、金融市場への潜在的な悪影響を伴う景気後退に入っていると予想している。EYは年末までに利下げが実施される可能性が高いとの見方を維持する。初めは調整措置として実施される可能性が高いが、インフレが持続的に低下してFRBの目標に近づいていることを示す証拠がより十分になれば、利下げ幅が拡大し、ペースも速まる可能性がある。

著者が表明した見解は著者個人のものであり、必ずしもErnst & Young LLPまたはEYグローバル組織の他のメンバーの見解を示すものではない。

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