パイプラインからプラットフォームへの転換で医療を変革する方法

A platform-based model can improve the equity, cost and efficiency of healthcare delivery
A platform-based model can improve the equity, cost and efficiency of healthcare deliveryImage: Unsplash/National Cancer Institute
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  • 医療は非常に複雑な分野であり、変革が難しいことで知られています。

  • 変革にあたっては、治療法の拡充、拡張性、医療の公平性、費用、データプライバシー、医療におけるAIの必要性に取り組まなければなりません。

  • こうした課題に対処し、持続可能な変革を実現するには、医療はパイプライン型のビジネスモデルからプラットフォーム型のモデルへ移行する必要があります。

世界各地で、医療は何十年にもわたり、アクセスや質のばらつきに苦しんできました。患者、医療提供者、支払者のいずれも変革を求めていますが、医療分野は外部からの破壊的変化に概して抵抗してきました。

したがって、変革を促すには、まず考え方を変えなければなりません。従来の直線的なパイプライン型サービスモデルの思考から、プラットフォーム型のアプローチへ移行する必要があります。このアプローチでは、長期的な医療データ、生産者、消費者を結び付けて新たな医療のパラダイムを共創し、医療の提供方法や治療法の開発を根本から変えていきます。

そのためには、メイヨー・クリニックをはじめとする医療提供者が、補完的なパートナーと連携し、患者中心の変革を主導する責任を負うと私は強く信じています。私たちは日々、患者とともに、医療上の意思決定に伴う複雑な感情面とデータに基づく側面の双方に向き合っています。その変革では、アクセス、費用、質だけでなく、拡張性、公平性、データプライバシー、そして医療における人工知能(AI)の新たな役割にも取り組む必要があります。メイヨー・クリニックでは、医療変革のための新たな手段としてメイヨー・クリニック・プラットフォームを構築しており、世界的な医療変革の青写真となる可能性があります。

医療プラットフォーム独自のアーキテクチャ

医療プラットフォームは、他の分野のものをそのまま応用できません。医療プラットフォームは一から構築する必要があり、そのアーキテクチャでは、一見矛盾する要件、すなわち患者データを完全に保護しながら、幅広いデータアクセスを通じてイノベーションを可能にすることを両立させなければなりません。

メイヨー・クリニック・プラットフォームは、柔軟性と高度なセキュリティを兼ね備えた新たなデジタル基盤から始まります。世界最大級の長期的な臨床データセットを収めるクラウド上のこのプラットフォームでは、認証済みの匿名化データを用いた連合学習モデルを採用しています。ツールにデータを送るのではなく、プロセスを逆転させ、匿名化データの側にアルゴリズムツールを持ち込みます(下図1参照)。このアーキテクチャは「ガラスの壁」を設け、データがプラットフォームの外に出ることなく、外部の協力者がデータにアクセスして医療の向上に取り組めるようにします。これにより、患者とデータプライバシーの権利を最優先にでき、プラットフォームを活用する医療システムに対する患者の信頼を守るうえで欠かせない要件を満たします。

パイプラインからプラットフォームへの転換による医療の変革Image: メイヨー・クリニック

プラットフォームでイノベーションを起こし、アクセスを拡大し、知識を広げる

医療プラットフォームは、ばらばらに存在する臨床データと非臨床データを集約し、調和させることを支援します。これにより、より多くの人を治療し、人々とデータを結び付けて新たな知識を生み出し、新たに開発・検証したエンドツーエンドのアルゴリズムやその他の革新的な解決策によって医療を変革し、ケアを向上させることができます。

私たちの診療現場では、医師や研究者がGoogle、nferenceなどの外部パートナーと連携し、膨大なデータを活用して、心血管疾患、乳がん、膵臓がん、神経筋疾患、不安・うつ病を早期に予測・特定するアルゴリズムを開発してきました。患者一人ひとりの病気の経過を変えることが目的です。また、臨床や事務における反復作業の負担を軽減するAIアプリケーションも開発しています。

今後、データ、分析、テクノロジーの活用により、医療が向上し、民主化され、誰もがより利用しやすく、負担しやすくなると期待しています。その一例が、心電図AIアルゴリズムの取り組みです。そう遠くない将来、ごくわずかな費用で、スマートウォッチや安価な1誘導デバイスを使って複数のAIアルゴリズムを実行し、症状のない15~20種類の疾患をモニタリングできるようになると考えています。これにより、大規模なスクリーニングを行い、病気を極めて早期に発見して介入できるようになります。拡張可能なもう一つの例は、複雑な頭頸部の放射線治療計画の作成に臨床医が費やす時間を、17時間から1時間に短縮するアルゴリズムです。今後数年以内に、私たちのプラットフォームから臨床知識が流通することで、世界各地のさらに多くの病院が複雑な疾患を診断、管理、予防できるようになると見込んでいます。

病院を患者のもとへ

パイプライン型の思考からプラットフォーム型の思考へ移行することで、パンデミック中に頼るようになった在宅病院モデルなど、遠隔でのケアも拡大できます。推計では、医療提供者の40%が、今後3年間で病床の20%を在宅ケアへ移行するとされています。

新型コロナウイルス感染症のパンデミック初期に、私たちは「アドバンスト・ケア・アット・ホーム(ACH)」を開始しました。これは、患者の自宅で病院レベルの包括的なケアを提供するもので、メイヨー・クリニックの医療提供者が24時間体制で対応し、地域の医療パートナーのネットワークが定期的に訪問します。パートナーであるMedically Homeと協力し、この取り組みでは、テクノロジー、医療提供者のネットワーク、臨床の専門知識を組み合わせ、患者一人ひとりのニーズに応える在宅病院ケアに必要な要素をすべて調整します。ACHにより再入院を半減できました。その結果、患者は施設で過ごす時間が減り、家族と過ごし、生活を楽しむ時間が増えています。現在、Kaiser PermanenteおよびMedically Homeと連携してこのケアモデルの拡大に取り組み、持続可能な拡大を目指す幅広い「アドバンスト・ケア・アット・ホーム連合」を設立しました。ACHは、複数のデータ入力を活用して、デジタルケアと従来型の対面ケアの間をシームレスにつなぐ、将来の医療体験の一部となります。

プラットフォームで公平性を高める

医療プラットフォームのデータセットにAIを適用すると、格差が拡大するおそれがあるという懸念はもっともです。一方で、プラットフォーム型の思考と組み合わせ、AIを倫理的かつ検証済みの方法で活用すれば、世界各地で十分な医療を受けられない多くの人々に、公平な医療アクセスを提供できます。

メイヨー・クリニック・プラットフォームの一環として、私たちは開発・導入する各アルゴリズムを検証し、目的に適合していることを確かめるプロセスを整えました。米国の医療提供者や分野横断的なパートナーとともに、信頼性と透明性のある医療AIシステムを通じて、すべての人に質の高い医療を促進する指針を策定するため、「医療AI連合」を設立しました。連合の成果の一つに、各アルゴリズムの開発に使用したデータ、特定の集団における有用性と限界を説明するアルゴリズム表示モデルがあります。たとえば、女性のデータだけで学習したアルゴリズムは、男性には有用でない場合があります。このデータ表示プロジェクトは、AIアルゴリズムへの信頼と透明性を高め、エンドユーザーが意図された用途に適していると確認できるようにすることで、信頼性、公平性、包摂性の向上を目指しています(下図2参照)。

Image: メイヨー・クリニック

パイプライン型の思考からプラットフォーム型の思考への転換は、医療を変革し、次に必ず訪れる危機への対応力を高めるために必要な柔軟性をもたらす大きな可能性を秘めています。過去2年間、私たちは医療におけるプラットフォーム型思考の可能性、適用性、拡張性を示してきました。今必要なのは、政府、バイオテクノロジー企業、製薬企業、NGO、医療提供者による大規模な導入と、パイプライン型思考への逆戻りを防ぐ障壁です。プラットフォーム型思考は、病気の予測と予防、患者の自宅での病院レベルのケアの実現、そして世界各地の多様な人々に臨床知識を届けるための拡大を後押しします。プラットフォーム革命がついに医療分野に到来する今、私たちは共にこの未来を築いています。

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