責任あるAIは、AIがもたらす潜在的な有害影響を認識し、それに備え、軽減することを目的としています。では、なぜ誰もこのことを話題にしないのでしょうか。
倫理、バイアス、信頼への配慮を促す正式な枠組みを設けていると回答した組織は、ほぼ50%に上ります。
組織が責任あるAIをめぐる議論に参加するための5つのヒントをご紹介します。
AIのバイアスや、この技術がもたらすその他の悪影響は、メディアで頻繁に取り上げられる話題になっています。
メディア報道から受ける印象では、開発したAIシステムがユーザーや社会に意図せず害を及ぼさないよう対策を講じている企業は、ごく一部に限られます。
しかし、IDCの調査の結果から、多くの企業が責任あるAIに向けて動き出していることが分かります。倫理、バイアス、信頼への配慮を促す正式な枠組みを設けていると回答した組織は、ほぼ50%に上りました。
世界経済フォーラムの「Jobs Reset Summit」とは?
しかし、この新たな重点分野にどう取り組んでいるのかを明かす企業が、これほど少ないのはなぜでしょうか。こうした投資が示す、テクノロジーの責任ある利用への取り組みを考えると、沈黙が続くのは不可解です。
進行中の取り組み
責任あるAIは比較的新しい分野で、この2年間に急速な発展を遂げてきました。2018年には、責任あるAIの実践に向けた初期の公開ガイドラインの一つが発表されています。
それでも、この分野で進めている取り組みについて、実質的かつ透明性のある形で、積極的に公表している企業はごく一部です。一方、多くの企業は、自らの弱点を明かすことで生じる悪影響(評判へのリスクなど)を恐れているようです。また、具体的で前向きな成果を示せるようになるまで取り組みを公表せず、「完成品」を待つ企業もあります。
自社の事業に関わるあらゆる問題への答えを備えた、堅牢な解決策があると伝えることが重要だと考えているのです。
透明性を確保しようとする姿勢は、業界によって異なることも分かっています。例えば、バグ修正や新しいバージョンについて日頃から発信している企業向けソフトウェア企業にとって、責任あるAIへの取り組みは事業の自然な次の一歩となるかもしれません。しかし、データを収益化する企業は、こうした透明性を高めることで、ビジネスモデル自体に対するステークホルダーの懸念が強まるのではないかと危惧するかもしれません。
企業との対話を通じて、責任あるAIを完全に実現した企業はなく、各社が異なる切り口で取り組んでいることが分かりました。そして概して、各社が孤立して完璧を目指し続けるよりも、知見を共有し、互いに学ぶ方が得られるものは多いのです。
リスクばかりで、見返りはないのか?
AIの失敗に関するニュースがこれほど多いと、戦略を伏せておきたくなるのも無理はありません。しかし、コミュニティと教訓を共有する価値を理解することが大切です。
まず、アルゴリズムの改善に向けた取り組みを率直に語ることは、顧客との信頼関係を築きます。そして、信頼は企業が持ち得る最大の競争優位性の一つです。さらに、Appleなどの企業が実証しているように、フィードバックの仕組みを取り入れた顧客中心のアプローチは、より良い製品づくりに役立ちます。
ステークホルダーからのフィードバックに責任あるAIを取り入れることは、評判の失墜を防ぐだけでなく、最終的には顧客エンゲージメントの向上にもつながります。
ステークホルダーからのフィードバックに責任あるAIを取り入れることは、評判の失墜を防ぐだけでなく、最終的には顧客エンゲージメントの向上にもつながります。さらに、データサイエンスの専門分野は、成熟に向けた発展の初期段階にあります。問題解決のプロセスに倫理を取り入れるモデルや枠組みは、バージニア大学の研究者が発表したものなど、ようやく登場し始めたところです。
その結果、社会的影響評価やバイアス検出などの責任あるAIの実践が、データサイエンティストの手法に取り入れられ始めたばかりです。他社の同業者と課題について話し合うことで、データサイエンティストや開発者はコミュニティを形成し、問題を解決し、最終的にはAI分野全体の改善につなげることができます。
責任あるAIを推進する立場から、企業の皆さまに、同業者や専門家と連携し、成功だけでなく課題も共有しながら、責任あるAIに積極的に取り組むよう呼びかけます。業界を前進させ、すべての人の利益となるテクノロジーを築くために、企業は協力しなければなりません。
責任あるAIをめぐる議論に参加する5つの方法
企業幹部との対話や、世界経済フォーラムの「Responsible Use of Technology」プロジェクト・コミュニティへの参加を通じて得た知見を、企業が責任あるAIの取り組みに透明性を取り入れるための5つの領域にまとめました。
安心して学べる場をつくり、参加する:世界経済フォーラムの「Responsible Use of Technology」のような非公開フォーラムは、透明性に向けた安全で実現可能な一歩となります。企業がリスクを気にせず、同じ立場の相手と率直に話せる場です。他社との交流によって、責任あるAIの実践に関する知識の共有が促進され、自社の取り組みへの自信も深まります。
顧客やコミュニティと関わる:顧客との対話やフィードバックは、より良い製品につながります。こうした対話に責任あるAIを加えることは、リスクが低く安心できる環境で顧客と関わる優れた方法です。
段階的に進める:「何もない状態から、いきなりプレスリリース」へ進む必要はありません。取り組みが育つ時間を確保しましょう。まずは非公開フォーラムで対話し、従業員と話し合い、ブログ記事を書いてみるなどして、そこから広げていきます。大切なのは透明性に向けて一歩を踏み出すことです。一歩の大きさはそれほど重要ではありません。段階的に進めることで、自分たちらしい発信の仕方も見つかります。
多様性は重要です:多様な背景を持つステークホルダーと関わることは、責任あるAIを改善するプロセスに不可欠な一歩です。AIシステムの設計、導入、利用のあらゆる段階で、異なる視点を持つ人々の懸念に積極的に耳を傾け、対応することで、意図しない影響を特定し、軽減できます。このアプローチは、より幅広い市場に役立つ優れた製品の創出にもつながる可能性があります。
適切な姿勢を示す:文化の変革はトップから始まります。経営幹部は、弱点や学びを安心して共有できるよう、率直さと透明性を重んじる姿勢を示す必要があります。最終的には、責任あるAIについて公に対話することへの組織内の抵抗を和らげることにつながります。
責任あるAIはまだ発展の初期段階にありますが、成功や学び、課題を共有するために協力すれば、急速に前進できます。同業者との交流を始めるには、世界経済フォーラムの「Shaping the Future of Technology Governance」ページをご覧ください。





