「トップ10新興技術レポート」は、意思決定者と一般の人々が次に来る主要技術を予測し、その機会を活用するとともに、リスクを軽減するのに役立つことを目的としています。
最新の年次報告書では、今年最も影響力のある新興技術を取り上げており、6月26日に公開されます。
フォーラムの過去の版の「トップ10」は、数年のうちに教育、農業、医療を変革する多くの革新的技術によって、その予測が正しかったことが証明されています。
10年以上にわたり、世界経済フォーラムは、産業、経済、社会を変革すると見込まれる新興技術について、学術関係者、業界リーダー、未来学者を対象に調査を行ってきました。その成果は、年次報告書である「トップ10新興技術レポート」にまとめられています、これらの専門家の知見と予測は、意思決定者と一般の人々が次に来る技術を予測し、それに伴う機会を活用するとともに、あらゆるリスクを軽減する方法を理解するのに役立っています。
どれほど多くの優れた頭脳を一室に集めても、未来を予測できる人はいません。しかし、科学文献を追い、投資動向を把握し、イノベーションの最前線にいる科学者や起業家に話を聞くことで、少なくとも今後3~5年の間に形作られる可能性が高い技術トレンドについて、根拠のある推測を立てることは可能です。
「トップ10」の過去10回の版を振り返ると、報告書を作成した専門家グループは、多くの場合で的確な予測をしており、技術が数年のうちに教育、農業、医療の変革につながっています。一方で、次の大きなブレークスルーとして期待されながら、根拠のない過剰な期待や、資金面または規制面での拡大への障壁などのために、その潜在能力を十分に発揮できなかった技術もあります。
来週発表される2023年版「トップ10新興技術レポート」に先立ち、Frontiersとの協力のもと、過去10年間に取り上げた100の技術を振り返り、最も大きな成功事例のいくつかを抽出しました。
ゲノムワクチン
ゲノムワクチンが「2017年のリスト」に掲載された時点では、長年の開発を経ていたにもかかわらず、研究者や製薬業界の関係者以外にはほとんど知られていませんでした。
従来のワクチンは、弱毒化した病原体または病原体のタンパク質を人体に導入することで、免疫反応を引き起こします。 しかし、DNAとRNAで構成されるこの新しいクラスのワクチンは、体が免疫を誘発するタンパク質を自ら作るための「指示」を届けることを約束するものでした。
その後数年で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、ゲノムワクチン、特にメッセンジャーリボ核酸(mRNA)ワクチンが人々の注目を集め、接種されるようになりました。SARS-CoV-2(COVID-19の原因となるウイルス)に対する命を救うワクチンの大半は、この技術に依存しています。
その用途は感染症にとどまらず、遺伝子治療、がん治療、再生医療にも広がっています。
高精度な遺伝子工学技術
2015年のリスト」では、CRISPR-Cas9が取り上げられました。これは、研究者がDNAの追加、削除、置換を行い、その結果を観察することで、特定の遺伝子の正確な機能を解明するために、ますます利用されるようになっている高精度な遺伝子編集ツールです。
この技術の開発は遺伝子研究や将来的な応用の分野において非常に大きな変革をもたらすと判断され、その開発に関わった科学者たちは2020年のノーベル化学賞を受賞しました。
その応用は医療、農業、研究にまたがっていますが、2015年の時点で、「トップ10」の運営委員会は、植物の遺伝暗号を編集し、より栄養価を高めたり、気候変動により適応できるようにしたりする応用の可能性に期待を寄せていました。
この技術の普及における社会的な関与のおかげで、CRISPR-Cas9は現在、世界各地の厳しい栽培環境において、害虫と干ばつに強い作物を生み出すために利用されており、さらには空気中のCO2を回収し、土壌により効果的に貯蔵することにも使われています。
AIを活用した分子設計
今日では、ニュースを見れば人工知能(AI)に関する話題が必ず目に入ります。しかし2010年代に遡ると、研究者たちはAIが取り組める課題について実験を行っていました。最大の課題の一つは創薬であり、前臨床段階には通常3~6年かかり、数億から数十億ドルの費用がかかります。
AIツールが創薬プロセスのほぼすべての段階を変革し得ると認識した「トップ10」の運営委員会は、AIを活用した分子設計を「2018年のリスト」に掲載しました。
それ以来のわずか数年で、この分野では多くのブレークスルーがありました。DeepMindのAlphaFoldは、2億種類のタンパク質の構造を予測することに成功し、AIによって発見された最初の医薬品が臨床試験に入る段階に至りました。
生成AIは、これをさらに次の段階へと進め、研究者が新たな抗体を設計することを可能にしました。特定の標的に結合する抗体の訓練データを一切使用せずに、その標的に結合する抗体を設計できるのです。言い換えれば、AIは人間が発見していなかった新しい抗体を生成したのです。今後、このアプローチは、従来「治療不可能」とされてきた疾患に対する治療法を開く可能性を秘めています。
新技術は、産業を変革し、経済を成長させ、生活を向上させ、地球の回復と保護を支える可能性を秘めています。ただし、それには指導者が機会を捉え、リスクを軽減する準備を整えていることが前提となります。
今後発表される2023年版「トップ10新興技術」レポートが、10年にわたる実績をさらに発展させ、ビジネスリーダーや政策立案者が今後の方向性を形作る手助けとなることを期待しています。





