新型コロナ危機は社会契約を再活性化させた。それはいつまで続くのか?

A person holds a placard as protesters temporarily block the street to U.S. Senate Majority Leader Mitch McConnell's (R-KY) house with a live band on a flatbed truck, demanding the extension of coronavirus disease (COVID-19)-related unemployment aid, on Capitol Hill in Washington, U.S. July 22, 2020. REUTERS/Jonathan Ernst - RC2JYH9ELMKL
Image: REUTERS/Jonathan Ernst
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  • 2020年の大規模な介入は一つの傾向を反転させ、少なくとも今のところ、事実上、社会契約を復活させた。

  • しかし、過去1年間に見られた大規模な政府支出は、長期的には持続可能ではない可能性が高い。

  • パンデミック下で政府が介入した際のエネルギー、迅速さ、創意工夫を生かし、長年にわたる社会問題の解決に注力することは、重要な教訓の一つとなり得る。

新型コロナ危機が始まってからの過去1年間、世界各国の政府は、多くの国で民間部門と協力しながら、市民のための経済的セーフティネットを大幅に強化してきた。G20諸国だけで合計10兆ドルを超える財政パッケージを実施し、経済全体が急激に縮小するなかで、雇用をおおむね全額賃金(欧州)で維持し、可処分所得(米国)の下支えを図った。

こうした介入は、医療費の負担や家賃の上昇抑制、住宅ローン返済の猶予などを通じて、基礎的な財・サービスへのアクセスを支え、より手頃な価格で利用できるようにした。

個人を守るこうした措置を総合すると、個人と制度の間でリスクと利益をどのように分かち合うかを定める取り決めや期待、すなわち社会契約の経済的側面が目覚ましく復活したことになる。パンデミック以前、MGIは個人の経済的成果に関する調査を発表し、労働者、消費者、貯蓄者としての役割に注目した。その調査は、雇用保障や公的年金の保障など一部の分野で制度が後退する傾向にあり、個人が自身の経済的成果に伴う負担をより多く背負うようになっていたことを示した。

2020年の大規模な介入はその傾向を反転させ、事実上、社会契約を復活させた。少なくとも今のところはそう言える。例えば米国では、給付や消費促進策のおかげで、実質GDPが10%減少したにもかかわらず、2020年上半期の平均実質可処分所得は8%増加した。欧州では、ドイツの雇用維持制度であるKurzarbeitや、フランスのchomage partielなどの制度が、雇用上の地位を守ることで、危機を乗り越えるための経済的な安心を従業員にもたらした。実質GDPが2019年第4四半期から2020年第2四半期にかけて14%減少するなか、公的部門がその落ち込みの大部分を補った。雇用は下支えされ、減少幅は3%にとどまった。

OECD諸国全体では、その結果、労働者5,000万人、つまり約4人に1人が雇用を維持できた。こうした制度の一部は以前にも使われていた可能性があるが、パンデミック下での規模は前例がなく、対象となった労働者は2008年の世界金融危機時の約10倍に達している。

こうした制度の一部は以前にも使われていた可能性があるが、パンデミック下での規模は前例がなく、対象となった労働者は2008年の世界金融危機時の約10倍に達している。

現在、ワクチンの接種が始まり、今後1年ほどで保健危機が終息する可能性が見えてきた。しかし、経済に残る傷の回復には、さらに時間がかかるかもしれない。政策立案者や企業リーダーにとって重要な問いは、緊急介入が個人の経済的成果にもたらしたプラスの効果の一部を、将来にわたってどう持続させるかである。

それは容易ではない。過去1年間に見られた大規模な支出は、長期的には持続可能ではない可能性が高いからだ。調査対象とした先進22か国では、政府の財政支出はGDP比で、2019年から2020年にかけて平均20%増加した。

パンデミック前には社会契約への支出が比較的少なかった米国や英国などの国々は、以前から支出が多い国に数えられていたデンマークなどよりも大幅に支出を増やした。2020年だけで、欧州連合(EU)各国政府は2019年と比べ、1人当たり約2,300ドルを追加支出すると見込まれる。一方、米国では1人当たりの支出が6,500ドル超増える見通しだ。

その結果、債務は急増した。調査対象22か国では、2019年から2020年にかけて総債務残高が平均16パーセントポイント増加すると見込まれる。したがって、多くの国にとって、現在の高水準の支出と制度的介入を続けることは、比較的短期の選択肢にとどまる可能性が高い。

しかし、振り子が振り戻されるように、新型コロナ以前の社会契約に戻ることは望ましい結果ではない。

振り子が振り戻されるように、新型コロナ以前の社会契約に戻ることは望ましい結果ではない。

保健危機の終息によって、企業の活力、投資、技術、雇用拡大への継続的な注力を通じて、経済成長と生産性が急速に伸びる新たな時期が訪れる可能性はある。その場合でさえ、パンデミック前からすでに明らかになりつつあった多くの課題が再浮上し、さまざまな脆弱性が再び顕在化するおそれがある。それらに対し、公的部門も民間部門も、まだ恒久的な解決策を見いだしていない。

さらに、パンデミック以前に経済的に最も脆弱だった層の多く――低所得労働者、若年層、女性、マイノリティ――は、新型コロナの経済的影響を最も強く受けた。世帯が安定した経済状況を取り戻すには、追加の支援が必要となる可能性が高い。

2020年のパンデミック対応から教訓を引き出し、社会契約の重要な改善点の少なくとも一部を恒久的な仕組みにする方法を検討することが重要だ。政府支出を持続可能な水準に戻すとしても、介入の対象を最も脆弱な人々により適切に絞ることはできる。理想的には、民間部門がより大きく、体系的な役割を果たすことが望ましい。例えば、住宅や保育など不可欠な財・サービスを手頃な価格で提供できるようにする方が、所得の安定を図るよりも社会契約にとって費用対効果が高いかもしれない。デジタルID、決済手段、データを含む適切な金融インフラも、最も脆弱な層を支援対象として特定し、不正を減らし、支援プログラムの効率を高めるのに役立つ。

私たちは皆、このパンデミックから多くを学ぶ必要がある。政府が介入した際のエネルギー、迅速さ、創意工夫を生かし、それらを長年にわたる社会問題の解決に向けることは、重要な教訓の一つとなり得る。

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