気候危機を身近に、無視できず、行動につながるものにするテクノロジーの役割

The climate crisis is at a tipping point, but technology can help steady it.
The climate crisis is at a tipping point, but technology can help steady it.Image: Torsten Dederichs on Unsplash
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  • 国連総会に世界の指導者が集まる中、私たちは世界を取り返しのつかない損害へと導きかねない重大な臨界点の瀬戸際に立たされています。

  • 危機が深刻化する一方で、それに対処する私たちの能力も高まっています。新興技術は、私たちが直面する課題を実感させる強力なツールとなっています。

  • テクノロジーの最善の活用により、革新的で協調的な解決策への道を切り開き、それによって、すべての人にとってより明るく持続可能な未来を創ることができます。

後退する氷河の衝撃的な映像は私たちの多くが目にしてきました。しかし、その溶けゆく心臓部に足を踏み入れ、太古の氷が崩れ落ちていく様子を感じたり、それが海へ流れ込む轟音を聞いたりした人は、どれほどいるでしょうか。

気候危機に対する没入型のアプローチは、政府、科学界、産業界の間で、今まさに必要とされている共同の行動を喚起するだけでなく、現実世界におけるより環境に配慮した意思決定にもつながりえます。バーチャルツールを通じて意思決定者を容易にアクセスできない環境へと誘うことで、抽象的な問題を実感できるものにします。遠く離れた北極および南極の危機を身近に、差し迫ったものとして、そして無視できないものとして感じさせるのです。

私たちは、差し迫った脅威を人々に実感してもらう必要があります

長年にわたり、科学は気候変動について警鐘を鳴らし、極地域で起きている広範な生態系の変化を浮き彫りにしてきました。現在、国連総会に世界の指導者が集まる中、私たちは世界を取り返しのつかない損害へと導きかねない重大な臨界点の瀬戸際に立たされています。

世界の気候の健全性を示す指標ともいえる北極の夏の海氷は、今年、記録史上最低水準の一つに達すると予測されています。1979年以来、夏の終わりの海氷面積は10年あたり13%という憂慮すべき割合で縮小しています。

この喪失は連鎖的な影響を引き起こします。消えゆく氷は北極海の表層水の温暖化を招き、この地域の温暖化をさらに加速させます。北極におけるこの温暖化の進行は、グリーンランドの氷床の融解や永久凍土の融解にも影響を及ぼします。その結果、大規模な気象パターンの乱れ、北半球全域での極端な気象現象の増加、北極の熱反射能力の変化が生じかねません。これら相互に絡み合う システムの規模の大きさは警鐘を鳴らしています。地球の安定性は、今や危うい状態にあるのです。

気候危機:引き返せない地点が近づいている

16の気候の転換点(気候システムにおいて、条件のわずかな変化が急激で、しばしば不可逆的な変化を引き起こしうる臨界点)のうち、5つが極地域に存在します。ここで問題となるのは、パリ協定の目標である+1.5°Cの温暖化に達しただけで、そのうち3つ(グリーンランド氷床の崩壊、西南極氷床の崩壊、北方永久凍土の急激な融解)が作動してしまうことです。特に懸念されるのは、これらの転換点が作動すると、それ自体が地球温暖化を激化させ、自己強化型のサイクルを生み出す可能性があることです。その結果、世界は+2°Cを超える温暖化状態へと押し進められ、世界中の生態系と社会に深刻な影響を及ぼしかねません。

私たちが気候非常事態に直面していることは明らかです。しかし、地球の極地で氷が溶けているという話になると、それが世界、人々、そして私たち一人ひとりにとって何を意味するのかを思い描くことは難しいかもしれません。地球環境リスクの第一線で活躍する専門家たちは、重大な生態系の課題とその潜在的な影響に対する認識を高める必要性を長年指摘してきました。さらに難しいのは、その緊急性を、私たちが共に集まって対処するための、大小さまざまな行動に置き換えることです。

まだ手遅れではありません

危機が深刻化する一方で、それに対処する私たちの能力も高まっています。人工知能(AI)、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)を含む新興技術は、私たちが直面する課題を実感させる強力なツールとなる一方、多様な声を届け、課題解決に向けた考えを前進させるプラットフォームを支える役割も果たしています。

​​世界経済フォーラムのグローバル・コラボレーション・ビレッジは、次世代技術を活用し、世界経済フォーラムがアクセンチュアおよびマイクロソフトとの連携により立ち上げた、目的志向のプラットフォームです。このプラットフォーム内で、新たな「極域の転換点ハブ」が公開されました。Arctic Basecampの専門知識を基に開発されたこのハブは、すべての気候の転換点と、それらがもたらしうる連鎖的リスクを独自の方法で可視化します。

Arctic Basecampを含む機関のデータを集約することで、Arctic Basecamp、NASA、および米国国立雪氷データセンター(NSIDC)のデータを活用し、本ハブではライブシミュレーションを用いて、海面上昇、極端な気象現象、熱ストレスと熱波、食料と水の安全保障の低下、気候移住、病気の悪化、物流およびサプライチェーンの混乱といった差し迫った脅威を独自に可視化しています。

南極の氷が溶けることで、コウテイペンギンの雛が死んでいる。
南極の氷が溶けることで、コウテイペンギンの雛が死んでいる。
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本ハブでは、没入型のデジタル空間を活用し、将来の状況に関する複雑なリアルタイムのシミュレーションやモデリングを行うことができます。これにより、海氷の消失、永久凍土の融解、氷床の崩壊など、気候目標が達成されなかった場合の影響を示す極地の温暖化傾向を検証できます。この独自の体験はまた、極地の変化を通じて、ある地球規模のリスクが別のリスクとどのように結びついているかも示します。さらに、気候の転換点が作動すると、予想以上に気温を押し上げうることも明らかにします。

世界は岐路に立っています。私たちは直面する危機への認識を高めなければならず、その認識を具体的な行動へと結びつけなければなりません。テクノロジーの最善の活用により、革新的で協調的な解決策への道を切り開き、それによって、すべての人にとってより明るく持続可能な未来を創ることができます。

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