パンデミックとウクライナでの戦争は、持続可能な慣行の緊急の必要性を浮き彫りにした。
世界のネットゼロ目標の達成には、公共部門と民間部門の双方が重要な役割を担う。
サプライチェーンから金融に至るあらゆる分野で強固なグローバルネットワークを築くことは、サステナビリティ目標の達成に不可欠だ。
私たちの暮らし方や働き方を変えた世界的なパンデミックに続き、ウクライナでの戦争は、私たちが直面する不確実性と不安定さを深めている。こうした混乱から何か良いものが生まれるとすれば、それは組織がより良い形へと自らを刷新する機会を得たことだ。過去の慣行を捨て、未来に向けたサステナビリティのビジョンを受け入れることで、イノベーションや事業運営のあり方、すべてのステークホルダーのために価値を創造する方法を見直せる。
サステナビリティの原則に基づく意思決定は、今日の複雑な課題に対処し、短期的な負担を乗り越え、変化するグローバルシステムに適応するうえで欠かせない。これらすべてを通じて、今後数年間の成長の基盤を築く。持続可能なビジネスへの道筋を描くにあたり、リーダーが優先すべき概念は3つある。
1)再生可能エネルギーの利用を加速する
欧州は化石燃料に依存している。ウクライナでの戦争が始まる前、欧州はガスの約40%、石油の4分の1以上をロシアから輸入していた。EUはロシア産石炭を拒絶した一方で、ロシア産の石油とガスをどのように、どれほどボイコットするかについて合意に苦慮している。多くの国が代替供給源を探しており、米国、サウジアラビア、ベネズエラなどの生産国が不足分を補っている。
産業部門は、世界の最終エネルギー消費量の約54%を使用しており、他のどの部門よりも多い。そのエネルギーの80%超は、いまだに化石燃料から生産されている。短期的には、エネルギー政策と気候政策が影響を受けることは明らかだ。戦争によって化石燃料の利用が長引き、ネットゼロ排出の達成時期が危うくなる可能性が高い。ネットゼロ目標に向けた進展を遅らせたり、後退させたりしないために、民間部門は再生可能エネルギー利用への移行を加速しなければならない。
過去20年間で再生可能エネルギーのコストは大幅に低下し、それに伴い利用も増加した。しかし、安全で持続可能かつ経済的に実現可能なエネルギーシステムを構築するには、政府と企業のリーダーが協力し、迅速な普及を促す政策と資金調達の環境を整える必要がある。クリーンエネルギー技術は、エネルギー効率化策と組み合わせることで、排出削減に不可欠となる。
企業はエネルギー戦略を正式に策定し、主に国内で調達でき、より安全性と安定性が高く、大規模導入時のコストも低い再生可能エネルギー源の導入を支援する必要がある。そのために、自家発電を優先するか、電力を100%再生可能エネルギー由来にすることを約束できる。また、再生可能エネルギーのインフラプロジェクトを開発するために連携し、RE100のような連合に参加することもできる。
2)協働ネットワークに参加する
ロシアによるウクライナ侵攻は、グローバルサプライチェーンの不安定さを増し、重要資源の不足を深刻化させた。安定的で信頼でき、持続可能なサプライチェーンを構築するには、データが豊富な相互接続されたビジネスネットワークが必要だ。こうしたネットワークは透明性を高め、資源の入手可能性をより適切に管理し、不可欠な製品やサービスを提供し、非倫理的な行為に対処し、環境への影響を減らす。
例えば、世界で生産される食料の30%超が、需要予測の誤りや輸送上の問題によって失われるか、廃棄されている。ウクライナには酸化リチウムの大規模な鉱床がある。電気自動車で最も高価な部品はバッテリーであり、ニッケルとリチウムの価格上昇は市場への普及を遅らせる可能性がある。
この紛争は非倫理的な労働慣行を招くおそれもあり、サプライチェーン全体で人権や労働条件を監視することが重要だ。サステナビリティを中心に据えた計画と技術があれば、政府、企業、NGOは、自然災害や社会的緊急事態などの危機対応に備えやすくなる。
Catena-XやWBCSD Carbon Transparency Pathfinderのような産業データネットワークにより、企業はサプライチェーン全体のサステナビリティ実績を管理できる。これには、原材料の調達、製品に蓄積された炭素排出量、製品のライフサイクル終了時の再利用可能性が含まれる。
3)サステナブルファイナンスを活用する
ビジネスリーダーは、サステナビリティを高めると収益性が下がると思い込んでいることが多い。それは事実ではない。低炭素、低廃棄、低不平等の経済へ移行し、サステナブルファイナンスを活用することは、大きな機会をもたらす。
資本市場はグリーン化している。サステナブル債の発行が急増し、その過半数を企業が占めるようになった。サステナブル融資は昨年、300%増加した。サステナビリティへの取り組みで評価される企業が、M&Aの対象となるケースも増えている。株式市場が変動するなかでも、サステナブル企業の株式価値は2021年に平均46%上昇した。
持続可能な企業と経済への移行に資金を供給するには、ビジネスリーダーは株主へのリターンだけを優先する姿勢から、幅広いステークホルダーを重視する姿勢へと転換する必要がある。そこには従業員、地域社会、顧客、パートナー、規制当局、そして何より自然環境が含まれる。サステナブルファイナンスは、森林などの炭素吸収源の保護から、生態系の再生や生物多様性の支援に至る自然を基盤とした解決策への企業投資を加速できる。
環境・社会・ガバナンス(ESG)の報告基準が強化され、企業には複数の基準に照らして自社の影響を正確に収集、整理、報告することが求められている。投資家は、規制だけでなく、消費者や従業員の需要の動向にも注目し、より詳細な情報開示を求めている。より持続可能な製品、サービス、方針、事業実績を望み、責任ある企業で働きたいと考え、仕事への関与も深めている。これは経済的な機会の創出と雇用の安定につながる。
ビジネスリーダーは「公正な移行」に役割を果たし、気候変動やESGの課題による最大のリスクに直面する新興市場を支援する必要がある。パンデミックとウクライナでの戦争は、新興市場に複合的な負担をもたらし、その影響は一様ではない。西側諸国政府による援助・支援資金は、もともと十分に供給されていなかったが、欧州での軍事支援と人道支援へと振り向けられている。
こうした投資支援への需要が高まっている。中国を除く新興市場向けの対外資金調達に占めるESG投資の割合は、現在ほぼ18%に達し、近年の平均の4倍となっている。サステナブルファイナンスは高いリターンをもたらすと同時に、気候、生物多様性、社会的不平等の課題に直接取り組むことができる。
サステナビリティへの影響を左右する重要な担い手として、民間部門は政策を促し、事業運営、製品、サプライチェーンのサステナビリティ実績を高め、サステナブルファイナンスを提供し、大規模に展開できる解決策を生み出す重要な役割を担っている。力を合わせれば、地球と地域社会に良い成果をもたらし、すべての人にとって長期的な安全、安定、公平な経済的進歩を確かなものにできる。






