サステナビリティは動き始めている。その歩みを正しい方向へ導こう

COP26 showed that momentum around sustainability is growing. Pictured: Climate action at COP26 in Glasgow
COP26 showed that momentum around sustainability is growing.Image: Unsplash/William Gibson
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  • ビジネス界全体で、サステナビリティをめぐる共通の目的意識が高まりつつあります。

  • ネットゼロ目標の達成には、協働と価値の再定義の両方が欠かせません。

  • このアプローチについて、世界各地の先住民族の文化から多くを学ぶことができます。

昨年、グラスゴーで開催されたCOP26の会期中、土曜日の中日には交渉が「休み」となりました。その日、家族連れや学童、活動家、先住民族など、一般市民10万人が参加した平和的な抗議デモが、グラスゴーの街なかを行進しました。

サステナビリティの原則を現実のものにする

私も、この心を揺さぶる懸念の表明に加わりました。グローバル企業のサステナビリティ担当役員として、私の仕事の大部分は「中間層の声を伝える」ことです。これは、ロバート・ソコロウが考えるように、意見が二極化した問題で中道を取り、具体的な行動を促すことです。そのため、私は通常、大規模な抗議活動を避けています。

しかし、あの行進は、多様な人々が共有する目的意識を力強く示すものであり、平和的な行進だったことで、その力はさらに強まりました。

ビジネス界でも、私が関わる重工業、つまり燃料採掘、化学プラント、大規模な鉱山や製錬所、パイプライン、発電所の中に、同じような共通の目的意識が育っていると感じます。こうした産業は、私たちの経済の基盤を成しています。国の安定にも影響を与えています。多くの人が享受する現代の便利な暮らしを、私たちはこれらの産業に支えられています。

しかし科学が示すように、こうした産業には、私たちが負担できない環境コストが伴います。

こうした産業から目を背けるのではなく、私の勤務先は積極的に関与し、真の、目に見える改善を実現するパートナーとなる道を選んでいます。これらの産業を変革しなければ、気候変動の解決策も持続可能な開発も実現できないからです。

私たちが考える変革とは、製油所が低排出燃料の生産へ切り替えたり、製錬所がよりクリーンなガスに移行したりすることです。排出負荷を伴わずに飛行機を飛ばし、肥料によって食料を育てることを可能にする、クリーン水素のバリューチェーンが生まれつつあります。企業の収益性を保ち、脱炭素化を可能にすること。ネットゼロへのコミットメントを、意図の表明から行動へと移すことです。

この取り組みを進める中で、私たちがようやく定義に着手したばかりの、複雑な実行上の課題が見えてきました。この課題を解決するには、環境、社会、経済の成果のバランスを取り、サステナビリティの原則を真に現実のものにする必要があります。

価値はもはや金銭だけを意味しない

2021年8月、私たちはプリンストン大学のアンドリンガー・エネルギー・環境センターと、ネットゼロを実現するインフラの構築に関する論文を発表しました。タイトルは『野心から現実へ:ネットゼロ実現の糸を紡ぐ』です。そこから浮かび上がったのは、特定の金融上または技術上の課題ではなく、インフラ実現に関する巨大な課題でした。問題の緊急性は、新たな発想を求めています。

今世紀半ばまでにネットゼロを達成する使命に失敗するリスクを避けるには、インフラの開発と導入のあり方を大きく転換する必要があります。実際、半分にも届かない可能性さえあります。必要な転換の一つが価値の再定義です。純粋に財務面に偏った視点から、より広い価値の定義へ移る必要があります。そこには環境価値、地域社会や社会の価値、そして包摂的な移行が含まれます。

つまり、気候変動への対策として取るあらゆる行動が「付随的な損害」をもたらす可能性に注意しなければなりません。人々から清潔な水や人生を変えるエネルギーへのアクセスを奪う、重要な生態系を破壊する、地域社会を孤立させ、反感を募らせ、解決困難な対立を生み出すような手法で、気候変動に対処することはできません。

化石燃料を使わない「グリーンスチール」は、産業界の気候変動への影響を軽減できる可能性がある。
化石燃料を使わない「グリーンスチール」は、産業界の気候変動への影響を軽減できる可能性がある。
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ソコロウはこれを「警戒」と呼び、個別の行動に走る落とし穴を避けることだとしています。ESGに携わる私の同業者にとって、これは目新しいことではないでしょう。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の相互連関や、しばしば必要となる妥協にも表れています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)はこれを「不適応」と呼んでおり、気候課題に対する真に持続可能な解決策を見いだすにあたり、私たちはそれを避けなければなりません。

実務の中で私は、サステナビリティへの取り組みが、とりわけエコシステムにおいて、システム思考へと移りつつあるのを感じます。生物システムという文字どおりの意味ではなく、金融、環境、社会など、複雑な地域・世界システムの相互連関という意味です。企業の業績を商業面とESG面の両方から統合的に報告する動きや、サステナビリティ評価の比較可能性と信頼性を高める新たな国際基準にも、これが表れています。

サステナビリティの課題解決に向けた協働を促す文化の転換

もちろん、依存関係や課題を抱えるこのサステナビリティの難題を、一つの管轄区域や企業だけで解決することはできません。協働し、互いに学び合えば、解決できる可能性は大きく高まります。

『野心から現実へ』では、ネットゼロの実現とは、組織と市民の間にこれまでになかった水準の協力を必要とする使命だと論じています。必要な協働の規模は、多くの関係者に居心地の悪さを感じさせるでしょう。商業上の保護主義や法的な契約戦略の限界に踏み込み、許容できるリスクを再定義することになるからです。また、これまで不可能と思われていた関係を築くことも求められます。

そして、私たちは学ばなければなりません。他の企業や管轄区域からだけでなく、自然や先住民族からも学ぶ必要があります。自然も先住民族も、何千年もの時をかけて設計や実践を磨いてきました。

IPCC第6次評価報告書は、インフラ設計、特に気候レジリエンスを備えた設計において、自然から学び、自然の仕組みを模倣する必要性を指摘しました。たとえば、河口にマングローブを活用して高潮の影響を抑え、海洋の生産性向上という追加の恩恵も得る方法などが挙げられます。

先住民族から学べることは数多くあります。私が暮らすオーストラリアでは、オーストラリアの先住民族が6万年以上にわたって実践してきた持続可能な営みのおかげで、素晴らしい自然環境と景観を享受しています。これは、ヨーロッパ人の入植以降250年間にもたらされた損害とは、著しい対照をなしています。

世界が直面する気候やその他のサステナビリティの課題に真に対処するには、このように学び、協働関係を築くことを、日常の業務にしていかなければなりません。

サステナビリティの課題への対処には、活動家の運動だけでは足りません。しかし、グラスゴーの行進は、私のような人々や、私たちが働く企業が負う責任と説明責任を思い起こさせるものでした。

サステナビリティは動き始めていますが、分野、地域、文化を越えて協働する新たな方法を、これからも見いださなければなりません。自然や最も古い文化から学ぶ必要があります。科学に基づき、課題の複雑さを理解し、私たちだけでは成し遂げられないと認識しなければなりません。

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