税務当局は、関連するリスクと責任を伴いながら、政府のデータセンターとなりつつあります。
税務当局は、強化されたデジタル能力を活用して納税者の利便性を高め、納税遵守を促進できます。
豊富な税務データは、政府の行政運営や意思決定の改善に役立つ知見をもたらします。
2021年は再構想の年だと思いますか。私はそう思います。それが戦略的な経営判断の結果であれ、新型コロナウイルス感染症のパンデミックから立ち直るための復興計画であれ、あるいは、この1年で私たちを取り巻く世界が大きく、そして取り返しのつかないほど変化したことへの反応であれ、そう考えます。
世界経済フォーラム(WEF)のダボス2021グレート・リセット・イニシアチブを見れば、経済回復を後押しするよう設計された運営モデルや戦略とともに、世界が結束して新しい働き方を支えることの重要性がわかります。
より強靭な企業インフラは、経済的困難を食い止めることができます。企業が新興技術や新技術を最大限に活用できる、堅牢でありながら柔軟性の高い計画があれば、リモートワークやギグワーカーを活用し、新たな形で顧客とのつながりを築けます。
少なくとも過去40年間のどの時期よりも、変化を支えると同時に信頼の基盤となり、長期的な価値を築く、意外な仕組みの活用が広がっていると言えるでしょう。その仕組みとは何でしょうか。税です。
税務当局は、数兆ドル規模の政府刺激策を実施する担い手として、
税務専門家は企業レベルでその刺激策を管理する立場として、
税務行政は政府のデータウェアハウスとして、
税制立案者は新たな税、税負担軽減策、優遇措置を設計する立場として機能しています。人々や環境の状況に対処する利他的な社会的解決策から、ほぼ普遍的なデジタル化を背景とする歳入重視の執行メカニズムまで、その範囲は多岐にわたります。
そして、納税者からの税収は、革新的な査定・徴収手法、拡大するギグエコノミー、そして高度化するデジタル税務当局を通じてもたらされます。
税をめぐるエコシステムが進化し続けるなか、税務当局は大きな変化を経験するだけでなく、その変化を推進しています。税務当局は、関連するリスク、責任、機会を伴いながら、政府のデータセンターとなりつつあります。これを受け、世界各国の政府は、それぞれの税務当局に運営方法の再構築を求めています。
デジタル経済の拡大とともに数年前に始まった変化の第一波に加え、パンデミックによる経済的打撃への対応が、変化の進行を確実に加速させ、税の責任範囲と役割を拡大しました。
パンデミックのあらゆる段階で、税務当局と税制は、個人、企業、組織を含むすべての納税者を支援するうえで重要な役割を果たしてきました。第二次世界大戦以降で最も深刻な世界的景気後退からの回復を促すには、前例のない規模の政府支出が必要でした。その結果、これまでに世界140を超える管轄区域が総額28兆ドルの金融刺激策を実施しました。これは世界金融危機で生じた債務の3倍を超え、米国、英国、日本の名目GDPの年間合計におおむね匹敵します。
そのため、税務当局は従来の職務に加え、事実上、刺激策の判定者となり、さまざまな形の経済的救済を分配する役割を担うようになりました。これは、政府と市民をつなぐ主要な窓口となる自然な流れです。とりわけ、経済が急速に変容し、税務行政の急拡大する業務領域に新たなデータ源、デジタルツール、高度な分析手法が組み込まれている状況では、その重要性が増します。
いずれ政府は財政赤字の均衡を図ることになり、税は必然的に引き上げられるでしょう。しかし、成長を促すには、その時期を慎重に見極めることが重要です。2021年を見通すと、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは世界経済の変革をさらに加速させると予想されます。政策立案者が刺激策による支援から歳入確保策へいつ移行するかという難題に直面するなか、税務当局は強化されたデジタル能力を活用し、納税者の利便性を高め、納税遵守を促進し、業務の卓越性を向上できます。
当面の目標の一つは、納税者が自らの納税額を簡単かつ効率的に把握し、過不足なく納められるようにすることです。新たなデジタルシステムによって、政府サービスは利用しやすく、情報がより伝わりやすくなり、導入やアクセスも迅速になります。また、世界各国の政府は税務詐欺によって年間3兆ドルを失っているため、新技術、革新的な人工知能(AI)、データシステムを導入し、商取引に見られる不正行為を示す重要なデータパターンを特定することには大きな効果があります。この損失を埋めることは歳入不足の解消に向けた大きな一歩となり、世界各地の持続可能な開発目標の達成に向けた資金調達を支える可能性があります。
世界経済フォーラムが提唱する「グレート・リセット」は、政府を含む「複数のシステムにおける不整合、不備、矛盾」への対処を呼びかけています。役割が拡大し、納税者や取引単位のデータを保有する税務当局には、市民を中心に据え、あらゆる意思決定が事実に基づき、データによって裏付けられるよう取り組む機会があります。これは、税に関わるあらゆる面で市民の体験を大きく改善するはずです。
この領域のエコシステムは、政府の公約を税務当局が実現できるよう支援する仕組みになっています。ここ数年のイノベーションにより、税務行政は中核的な目標に向けてすでに大きく前進しました。デジタルIDの改善による、納税者が政府の保有情報にいつでもどこからでもアクセスできる仕組み、税務当局に売上データをリアルタイムで提供する電子レジスター、あるいは申告書の事前入力を可能にするデータ共有などがその例です。
さらなる便益も期待できます。政府が豊富な税務データを司法、社会福祉、環境などの他の機関にも活用すれば、政府の行政運営や意思決定を改善するための、より深い知見を得られます。その結果、政策立案、不正検知、社会福祉の給付判定などにおいて、より良い成果につながります。
強化された税のエコシステムは、税務当局、税制立案者、納税者である市民の間に、より良い関係を築くことができます。譲れない条件は、デジタルの未来を支えるデータ保護とプライバシーの重要性を尊重し、透明性、説明責任、信頼を土台として構築されることです。
具体的にはどのような姿でしょうか。議論はそこから始まります。
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