海洋を守る必要性への認識が高まる一方、海洋はかつてないほどの圧力にさらされています。
世界経済フォーラムと連携する持続可能なブルーエコノミーのアジェンダ「Ocean 20」は、海洋の保全における民間セクターの役割を強調しています。
持続可能な海洋開発に向けた年間1,745億ドルの資金調達機会を生かすには、さらなるイノベーションと投資が必要です。
海洋は広大で、その美しさと豊かさは人々の心を動かします。世界中の地域社会に持続可能なビジネスと、公平で、強靱かつ包摂的な繁栄をもたらす原動力となる海洋の可能性も、同じように大きなものです。
最も広い意味で世界の持続可能な開発アジェンダを達成するうえで、海洋が中心的な役割を担うという認識が高まっています。食料と雇用の安定から気候危機への取り組みまで、平等とクリーンエネルギーへのアクセスの改善から健康とウェルビーイングの向上まで、その範囲は広がっています。私たちが連携する地域社会やリーダーの間で、海洋に関する行動はますます優先課題と見なされています。乱獲の終結、海運の脱炭素化、ブルーカーボン事業の強化、持続可能な沿岸観光の主流化、再生可能エネルギーの導入加速、海洋由来の食料のバリューチェーン改善など、さまざまな取り組みが進められています。
海洋の持続可能性と健全性に向けて
強靱で豊かに繁栄する海洋なくして、健全な地球はあり得ません。その実現には、海洋を積極的に守る対策を強化する必要があります。2030年までに海洋の少なくとも30%を保護しようという呼びかけが広がり、取り組みも進展しています。「30 by 30」または「30x30」として知られるこのアプローチは、地球と人々の双方に利益をもたらします(十分に保護された海洋は食料や雇用をより多く提供でき、気候危機の最悪の影響から私たちを守る緩衝材にもなります)。2022年12月にモントリオールで開かれた国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、この目標に向けた画期的な合意が成立しました。各国、企業、地域社会に対し、意欲と決意を具体的かつ有意義な行動に直ちに移すよう強く求めます。
健全な海洋がもたらす恩恵は、さまざまな分野や地域で海洋が直面する圧力の増大と持続不可能な慣行によって脅かされています。データ、科学、地域社会の知見、意欲的な公共政策が、迅速かつ大規模で持続的な影響をもたらすための土台と枠組みを提供する一方、民間セクターは、衰退した海洋の再建と再生に必要な変化を推進し、促進するうえで大きな役割を果たせます。
海洋が一つの国だとすれば、世界経済への貢献をGDPに換算した規模は、世界第7位になると推定されています。さらに、世界経済フォーラムの『New Nature Economy Report II: The Future of Nature and Business』は2020年、健全で生産性の高い海洋を維持することで、毎年1,700億ドルを超えるビジネス機会と、2030年までに1,400万人の追加雇用を創出できると推定しました。
2022年11月、G20首脳会議に合わせてバリで、インドネシア政府は世界経済フォーラムと協力し、Ocean 20を立ち上げました。これは、G20全体でブルーエコノミーを発展させ、持続可能な成長を実現するための新たなアジェンダです。官民両セクターから立ち上げに参加したリーダーたちの信念と決意を目の当たりにし、大きな感銘と励ましを受けました。このアジェンダを前進させる役割は、現G20議長国であるインド政府に引き継がれました。世界経済フォーラムはまた、Ocean 100 Dialoguesも開催しています。これは、海洋経済を担う最大手企業が業界横断的で変革的かつ先駆的な行動を起こし、持続可能な海洋の保全を加速できるようにする、科学とビジネスの連携プラットフォームです。
Ocean 20のような取り組みは、海洋の健全性に向けて、すべての関係者が参加し、確かな決意と信念に支えられた進展があるという、現実的で具体的な希望を生み出します。海洋は健全な地球に不可欠なだけでなく、数え切れない形でプラスの影響を増幅させる存在にもなり得ます。
海洋経済に関わる企業や世界各地の企業には、経営リーダーが海洋の健全性の回復を戦略的優先事項とし、強固な気候行動戦略に組み込むことが求められます。ネットゼロ達成の誓約、よりクリーンで環境に配慮した事業慣行の選択、汚染の防止、それぞれの分野で海洋の守り手として積極的に関与することなど、具体的な約束が含まれるでしょう。
一方、さまざまな課題に対処するため、海洋分野のイノベーションが加速し、規模を拡大していることは、大きな励みになります。ガバナンスの改善に役立つデータや海洋の健全性を回復する技術から、沿岸地域の何百万人もの人々の生命維持基盤である沿岸生態系をよりよく守る解決策まで、こうした取り組みがさらに広がることを期待しています。
この豊かなイノベーションを育み、発展させるには、すでに存在する多様な海洋ソリューションを支え、さらに多くの創出を促し、持続可能な規模拡大を確実にするエコシステムが必要です。1000 Ocean Startupsは、現在、世界経済フォーラムが運営する連合体で、海洋への好影響をもたらすイノベーションの加速に向けて大きな前進を遂げています。
これと並行して、ブルーエコノミーを持続可能な形で発展させるために埋めるべき、投資と資金調達のギャップがあります。強固なガバナンスの枠組み、科学的根拠と地域社会から得た知見、創造的な解決策を発展させるには、官民双方からの投資が切実に必要です。対象はブルーフード、ブルーカーボン、洋上風力、持続可能な沿岸観光など多岐にわたります。地球、人々、繁栄を両立させる道筋を追求し、2030年までに海洋に関する持続可能な開発目標(SDG14)を達成するため、年間1,745億ドルを確保する必要があります。
海洋の持続可能性を世界のビジネスリーダーの優先課題に据える時です。健全な海洋があってこそ、人々と地球の双方に世代を超える豊かさを築けます。





