世界には新たな社会契約が必要だ。その理由とは

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  • 企業、政府、市民社会のリーダーが行動を起こさなければ、世界は危機に陥り、その未来も危うくなります。

  • 制度への脆弱な信頼は、社会をさらに損ない、私たちが直面する最大の課題への前進を妨げる恐れがあります。

  • 信頼を再構築する新たな社会契約が必要です。協力と説明責任に基づく契約です。

世界を代表する企業、政府、社会のリーダーたちが、2年ぶりにダボスに対面で集まろうとしています。私は強い危機感をもって、私たちを結びつけている仕組みを見直すよう呼びかけます。今すぐ行動し、企業、政府、市民社会、個人の関係を根本から変革しなければ、現行制度の枠組みは完全に崩壊しかねず、私たちの未来は危ういのです。

この2年間、ましてやここ数カ月の試練は、世界の脆さをあらわにしました。パンデミックとその経済的影響に拍車をかけられ、以前から存在した亀裂は深い溝となり、社会の中核を揺るがし、最も困難な課題へのさらなる前進を脅かしています。

政府への信頼は低下し、激しい政治的分断が深まることで、社会不和と経済停滞に拍車がかかっています。新技術が産業全体を揺るがすなかで雇用は変化し、富の格差は根強く拡大する一方、気候危機が人類の未来を脅かしています。

経済の最も活力ある分野で新たに生まれた雇用には、多くの労働者が就けず、親たちは子どもの将来に絶望しています。人々が制度への信頼を失いつつあるのも不思議ではありません。あまりに多くの人にとって、政府も経済も期待に応えてこなかったのです。パンデミックが私たちの暮らしを一変させる前からそうでした。

政府が自分たちの感じる緊急性をもって行動するのを待つことに疲れた若者たちは、さまざまな抗議デモで街頭に繰り出し、自ら行動を起こしています。その数も激しさもソーシャルメディアの後押しを受けて、急速に増しています。

しかし、地球規模の問題には地球規模の解決策が必要です。さらに、これらは構造的な問題であり、一貫性のある長期的かつ広範な戦略的行動が求められます。私たちが直面する課題の範囲と規模を考えれば、それ以下では不十分です。各国、国際企業、多国籍機関のリーダーとして、私たちは修復と再生を可能にする構造改革に直ちに着手しなければなりません。ダボスはそのためのまたとない機会です。今年のテーマ「転換点に立つ歴史:政府の政策と企業の優先事項」は、必要な変革を推進するために信頼を再構築し、協力することの重要性を示しています。問題は、その方法です。

新たな社会契約は、信頼の再構築から始まる

すべての答えを知っているふりはしません。しかし、新たな社会契約から始まることは分かっています。世界経済フォーラムが人々を集める力を生かせば、この取り組みを動かすことができます。

契約の核心には交渉があります。全員が席に着かなければ、具体的な解決策づくりを始めることはできません。それなのに、あまりにも長い間、私たちは縦割りで取り組み、企業を協議の場から締め出し、異なる目標を掲げて別々の時間軸で動いてきました。

契約の核心には交渉があります。全員が席に着かなければ、具体的な解決策づくりを始めることはできません。

ロベルト・アゼベド、ペプシコ副社長兼最高渉外責任者、ペプシコ財団理事長

今こそ、協力と説明責任に基づく新たな関係を築くときです。そうして初めて、信頼を再構築し、包摂的な経済成長を促すことができます。この転換の中心にあるのは、政府、市民社会、企業が協力し、人々の意思をよりよく取り入れる必要性です。選挙サイクルの不安定な変動に左右されず、長期的な構造解決策を共に追求しなければなりません。

パンデミック、気候変動、続くサプライチェーンの混乱が繰り返し示すように、私たちが直面する最大の課題は政府だけでは解決できません。企業は解決に不可欠な存在です。インフラに共同投資し、画期的なイノベーションを生み出し、解決策を迅速に届けています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をめぐる不確実性と分断された政治状況のなか、世論調査では企業が世界で最も信頼される機関として台頭したことが示されています。企業はその発言力、資金、資源を通じて、リーダーシップの空白を埋め、支援や変化を必要とする地域社会に届けています。

新たな社会契約は信頼の再構築から始まります。世論調査では、企業が世界で最も信頼される機関として台頭したことが示されています。Image: エデルマン・トラスト・バロメーター

しかし、企業が常に責任ある行動をとってきたわけではありません。抗議活動を受けて、企業は労働慣行の改善、環境負荷の最小化、多様性と公平性への注力、重要な政治課題に対する立場の表明を迫られてきました。

市民活動家は、企業と政府に説明責任を求め、この変化を推進しています。対立する関係にするのではなく、活動家や社会的責任を果たす企業の取り組みを発展させ、企業、政府、市民社会のすべてが協議の場に参加する協力関係を築くことができます。

政府にも重要な役割があります。確固として十分に練られた行動基盤を公共政策が整えなければ、意義ある、または実効性のある目標は達成できません。選挙での受けを狙った単純な処方箋は、公共機関への不信を深めるだけです。

新たな社会契約に向けた重点分野

分断された制度のもとで新たな社会契約を築くことは、手の届かないことのように思えるかもしれません。しかし、世界貿易機関、国連、OECD、あるいはフォーラムを通じて、際立って異なる見解を持ち、共通点がないように見えた国々が、あらゆる困難を乗り越えて世代を画する合意を結ぶ姿を、私たちは見てきました。重点を3つの分野に置けば、再びこの道のりを共に歩み始めることができます。

  • すべての人による協力と共同投資:誰もが自分にとって完璧な解決策を期待することはできません。合意に正当性、持続性、実効性を持たせるには、双方がさまざまな点で妥協しなければなりません。私たちの誰も、すべての答えや資源を持っているわけではありません。しかし、自分自身と互いの強み、弱みを認めることで、前進し、信頼を取り戻し、すべての人にとって機能する世界経済を築き始めることができます。

  • 透明性と説明責任をもって運営する:説明責任を確立するため、企業、政府、個人の間で対話を始めなければなりません。グリーンウォッシュや誇大なマーケティングは容認できません。企業として、関係者と協力し、利益だけでなく社会への貢献も引き続き重視するとともに、社会に奉仕する方法について透明性と説明責任を示す必要があります。社会全体が繁栄しなければ、利益の持続可能性はありません。一方、どれほど望ましく、超越的に見えようとも、柔軟性を欠いた非現実的な提案は議論の出発点にもなりません。双方が歩み寄らなければなりません。

  • 武装を解く:交渉者として解決策を見つける最も効果的な方法は、耳を傾けることです。どれほど扇情的な言葉の背後にも、共通点はあります。だからこそ、攻撃を控え、耳を傾けることで、私たちは構えを解かなければなりません。それが信頼を再構築する最も確かな方法です。

新たな社会契約は一夜にして生まれるものではありません。考え方を変えるための継続的な取り組みであり、今すぐ始めなければなりません。現在の進路は持続可能ではありません。私の5人、まもなく6人になる孫娘たち、そして世界中の未来世代のためにも、この道を進み続けることはできません。私たちの過ちや不作為の代償を、彼女たちが負うことになるからです。

新たな関係はすべて、対話から始まります。ダボスで、私たちの人生で最も重大なものとなるかもしれない対話を本当に始める機会があります。

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