中東・北アフリカ(MENA)は、世界で最も水不足が深刻な地域の一つである。
長年にわたり、水危機は紛争や政治的緊張を悪化させてきた。さらに、この問題は地域の人々、特に女性や子どもの健康とウェルビーイングに大きな影響を与え続けている。実際、ユニセフによると、地域の子どもの約90%が水ストレスが高い、または極めて高い地域に暮らしている。
世界の気温上昇と気候危機の加速に伴い、MENAの水危機はさらに深刻化し、経済成長にも影響を及ぼすと予想される。世界銀行は、気候変動に関連する水不足により、今後30年間で地域のGDPの最大14%に相当する経済損失が生じる可能性があると指摘した。
しかし、技術革新や高度な水管理システムが、状況の緩和に役立っている。大規模な海水淡水化プラントの開発に加え、持続可能な農業や水のリサイクル計画の実施も進んでいる。
世界経済フォーラムの2023年年次総会がスイスのダボスで開かれるのを前に、業界リーダー4人がMENAの水危機について見解を共有し、今後数年間に地域が水不足を克服できるよう支援するための進行中の取り組みを詳述する。
ピーター・テリウム、ENOWA最高経営責任者、NEOMエネルギー・水・食料担当マネージングディレクター
「サウジアラビア北西部に位置するNEOMでは、地域の人口増加を背景に、農業や灌漑で地下水がますます利用されるようになりました。その結果、地下水位が低下し、地域の多くの泉が枯れ、環境の様相が変わりました。水需要のために帯水層はもはや自らを再生する能力を失い、未処理の廃水を土地に投棄したことで、この希少な資源が汚染されています。
「灌漑に使われている地下水を淡水化した水に置き換え、廃水を処理し、通常なら無駄になるすべての水をリサイクルすることで、生態系の均衡を取り戻し、地域に自然のオアシスを復活させます。NEOMのエネルギー・水事業子会社であるENOWAは、循環型の水システムを構築しています。その実現に向け、水のバリューチェーン全体、さらにはその先にわたるイノベーションを結集しています。
「世界全体の平均水損失率は約30%です。ENOWAは革新的な技術を活用して損失率を3%に引き下げ、水インフラ全体と水のコストを削減することを目指しています。スマート監視技術、廃水の100%リサイクル、クリーンな産業用資源の生産を通じて、産業や農業における水利用の可能性を最大限に引き出し、自然の均衡回復にも取り組んでいます。」
循環型のアプローチを通じて、NEOMの動植物に良い影響を与えています。この好影響を世界中に広げたいと考えています。
ピーター・テリウム、ENOWA最高経営責任者
バーレーン経済開発委員会
「湾岸協力会議(GCC)加盟国は、水不足への対処に多面的な取り組みを進めています。サウジアラビアのラービグ3独立系造水プラントは、逆浸透膜法を用いて、1日あたり60万立方メートルの淡水化水を生産しています。100万世帯の需要を満たすことができ、ギネス世界記録に世界最大の逆浸透膜式海水淡水化プラントとして認定されています。
「アラビア半島のように乾燥した地域には、イノベーションと効率性の両方が求められます。バーレーンの農業は、1985年まで地下水のみに依存していました。その年、政府は廃水を再利用するための処理を始めました。現在、再生水が農業部門の需要の40%を賄っています。
「バーレーン経済開発委員会(EDB)は、水不足のような課題に良い影響をもたらす解決策の構築と投資誘致に力を入れています。その一例が、温室効果ガスを一切排出せずに淡水を生産する海水淡水化の専門企業、パビリオン・ウォーターです。
「革新的な農業も、地域全体で水の使用量を減らしながら食料生産を増やすことに貢献しています。アラブ首長国連邦を拠点とする新興企業スマート・エーカーズは、屋内で垂直型水耕栽培を行っています。従来の方法に比べ、土地を10分の1しか使わずに20倍の食料を生産し、水の使用量を90%削減しています。
「水不足解決に向けた研究の国際協力も、すでに重要な成果を上げています。例えばオマーンは、地域に新たなアイデアを導入するためにオランダ政府と協力しており、マスカットにある中東淡水化センターは、研究のための先駆的な拠点として機能しています。」
パディ・パドマナタン、ACWA Power副会長兼最高経営責任者
「世界では、健康な生活を維持するための基本的なニーズである水を十分に利用できない人が何十億人もいます。物理的な水ストレスの面で最も厳しい状況にあるのが中東・北アフリカです。他の地域より降水量が少ない一方で、人口が急増し、人口密度の高い都市部では、より多くの水が必要とされています。
「まず、この問題への認識を高め、消費量を1日あたり150リットルに抑える必要があります。しかし、この低い水準の消費量を供給するだけでも、イノベーションを続けなければなりません。
「ACWA Powerでは、従来の慣行に挑み、ビッグデータ、計算能力の飛躍的な向上、高度な分析、機械学習、人工知能の活用を増やすことで、技術の可能性をさらに引き出しています。エネルギー、化学薬品、高度な消耗品の使用量を減らし、海水から塩分を取り除く(淡水化する)コストを下げるとともに、再生可能エネルギーの利用を拡大しています。これにより、エネルギー集約型のこの工程のカーボンフットプリントも同時に削減し、気候変動への影響を抑えながら、飲料水の供給を拡大し、コストを段階的に引き下げています。
「世界をリードする淡水化事業者としての実績を持ち、現在、1日あたり640万立方メートルの淡水化水を供給しています。数年前には1立方メートルあたり2ドル超だった淡水化水のコストを、現在は0.50ドル未満にまで引き下げるというコスト削減の取り組みを主導できたことを誇りに思います。」

マジド・アル・フッタイム・ホールディング
「一人あたりの水消費量が世界でも特に多く、暑く乾燥した気候、水を浪費するインフラ、温室効果ガスを排出する淡水化への大きな依存があるため、MENA諸国は水不足の影響を特に強く受けています。地域の急速な人口増加により、多くの国が、枯渇し続ける地下水や地表水に大きく依存するようになっています。
「マジド・アル・フッタイムでは、問題の深刻さを認識し、サステナビリティ戦略の一環として対策に着手しました。水の生産技術、地域での相殺、再生可能エネルギーを動力とする逆浸透膜式海水淡水化プラントの開発への投資に重点を置いた、クリーンウォーター投資戦略を策定しました。
多様な業種で事業を展開するマジド・アル・フッタイムは、一般に水使用量が多い複数のセクターで事業を行っています。それでも同社は、水フットプリントを効果的に最小限に抑えるため、いくつもの対策を講じています。
マジド・アル・フッタイム・ホールディング
「食品・飲料小売部門では、商品の80%を地域内から調達しています。また、サプライチェーンにマイクロ灌漑システムや水耕栽培農場を導入し、水の損失を最小限に抑えて持続可能な農業を促進しています。一方、業界全体で年間930億立方メートルの水を使用するファッション業界では、マジド・アル・フッタイムはサプライヤーと連携し、長持ちし、再利用やリサイクルも可能な、持続可能な方法で製造された製品を提供しています。
「マジド・アル・フッタイムは、建設・コミュニティ開発部門にも持続可能な水管理システムを導入しています。例えば、現地での水処理技術や持続可能な園芸手法を採用しています。」
