中東・北アフリカ(MENA)諸国の国連持続可能な開発目標(SDGs)の達成度は現在、平均で100点満点中59.8点であり、アラブ諸国のうち14か国は目標を一つも達成できていない。
各国が2030年のSDGs達成期限を前に大きな行動を起こさなければ、この進捗の遅れにより、世界が持続可能な開発アジェンダを達成するまでに必要な期間が60年延びる可能性がある。
包摂的で公平な成長、若者と技能、テクノロジーを促進する取り組みに投資を集中させれば、MENAは失われた時間の一部を取り戻せる可能性がある。
国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の採択からほぼ10年が経過した今も、人々、地球、繁栄を支える世界的な計画は大幅に遅れている。2030年の期限まで折り返し地点を過ぎたが、達成に向けて順調に進んでいるのは、SDGsのうちわずか17%にすぎない。目標の50%で進捗は低調で、さらに深刻なことに、ターゲットの30%超で後退が見られる。
中東・北アフリカ(MENA)では、2023年の地域評価でSDGsの進捗は平均100点満点中59.8点だった。65点を超えたアラブ諸国はわずか7か国で、さらに憂慮すべきことに、アラブ諸国のうち14か国はSDGsのターゲットを一つも達成していない。この進捗の遅れにより、SDGs達成の目標年である2030年からさらに60年を要することになると、国連西アジア経済社会委員会は述べている。
MENA諸国が失われた時間を取り戻し、SDGs達成に向けて再び軌道に乗るための4つの方法を紹介する。
1. 包摂的で公平な成長を加速する
MENAでは経済が発展したにもかかわらず、貧困と不平等は2010年の12.3%から2023年には18.1%へ上昇し、世界でも特に高い水準にある。紛争は貿易の混乱や不確実性を通じて、地域の経済安定を引き続き損なっている。2024年の成長率予測は2.8%に下方修正され、パンデミック前の低水準に並ぶ。地域の中所得国は、膨らむ債務、高金利、インフレ圧力による財政上の負担にも直面している。
多角化と雇用創出に焦点を当てた既存の改革を加速させれば、より公平な成長を実現できる。例えば、サウジアラビアでは非石油部門の成長が現在、GDPの50%を占めている。同部門は技能向上とウェルビーイングに注力しながら、経済に100万人を超える雇用を創出した。
債務負担を軽減し、先端製造業など成長分野に投資を振り向ける構造改革も、包摂的な成長を加速させる。例えばオマーンでは、製造業の雇用1件が他の分野で2~3件の追加雇用の創出につながると推定されている。
地域の政府は、世界でも最低水準にある女性の労働参加率(19.9%)の改善にも注力すべきだ。この雇用における男女格差は、地域に最大で年間5,750億ドルの損失をもたらすと、経済協力開発機構(OECD)は述べている。
地域の安全保障上の課題も、持続可能な成長にとって重大な障壁となっている。地政学的緊張によりスエズ運河を通過する船舶が66%減少し、2023~2024年にエジプトは20億ドル超の損失を被った。各国政府は制度と安定に投資し、持続的な平和を実現するために協力しなければならない。
同様に、資源豊富な湾岸協力会議(GCC)諸国と北アフリカの間の地域間貿易を強化すれば、MENAのSDGs達成を後押しし、今後数年間で1兆ドルの価値を生み出す可能性がある。現在、域内貿易はMENAの貿易活動全体のわずか17.8%にとどまる。これに対し、域内貿易はEU全体の貿易活動の62%を占める。
2. MENAの若年労働者の技能を高める
MENAの持続可能な開発には、人的資本と若者への投資が不可欠となる。地域の若年失業率は世界でも特に高い。2023年には、若者の4人に1人が失業しており、世界平均の2倍だった。技能不足は70%に達し、2050年までに3億人分の雇用を創出する必要もあることから、さらなる遅れのリスクが高まっている。
各国政府は教育、特にデジタル技能への投資を大幅に拡大しなければならない。ドバイがAmazon、Google、Microsoftと連携し、10万人のコンピュータープログラマーを育成する取り組みは、好例の一つだ。モロッコも世界銀行と協力して、5億7,000万ユーロを投じた工科大学を設立し、北アフリカの労働力の競争力向上に貢献している。
研究開発への投資はイノベーションを促し、成長を開発機会につなげる。心強いことに、MENAの若者の34%がSDGsを知っており、世界平均の23%を上回る。このことは、MENA地域で人的資本や若者を重視した投資を増やすことで、どのような機会を実現できるかを改めて示している。
3. 脱炭素化とクリーンエネルギーの導入を促進する
MENA地域は世界で最も暑い地域の一つであり、今後20年間で気温が4°C上昇すると予測されている。これにより、2050年までにGDPが最大21%減少する可能性がある。現在、同地域は世界の排出量の8%を占め、排出量はこの10年間だけで21%増加した。この増加率は北米に次いで高く、南アジアの6倍に上る。熱波、干ばつ、洪水など、頻度と強度を増す異常気象に加え、水供給への懸念も深刻化するなど、影響は甚大だ。
一方、MENAでは前向きな動きも進んでいる。国際エネルギー機関によると、2028年までに再生可能エネルギーの発電容量を62GW増やす見込みだ。サウジアラビアは2030年までにクリーンエネルギーに2,660億ドルを投資する計画である。エジプトのベンバン・ソーラーパークは世界最大級の太陽光発電所の一つで、電力構成に占めるエジプトのクリーンエネルギーの割合を42%に引き上げることを目指している。
ただし、課題は残る。地域の企業でネットゼロ目標を掲げているのは12%にすぎず、明確なロードマップを持つ企業はわずか6%だ。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)は、MENAが気候危機対策を推進するには2030年までに4,360億~4,780億ドルが必要になると推計している。
この投資には炭素除去技術を含め、クリーンエネルギーのインフラにもさらに資金を動員すべきだ。民間部門の参画は、透明性の向上、気候に資する行動の促進、資金不足への対処に不可欠となる。
4. 最先端技術を活用する
テクノロジーはおそらく、MENAの持続可能な開発を加速させる最大の可能性を秘めている。人工知能だけでも、生産性の向上や消費者への便益などを通じて、2030年までに同地域で最大3,200億ドルを生み出す可能性がある。
テクノロジーは、食料・水の安全保障や健康といった深刻な課題への対処に役立つ。これらは、SDGsの多くの目標を実現するうえで重要だ。例えば、MENAの人口は世界人口のわずか6%だが、世界の栄養不足人口の12.2%を占めている。
ヨルダンでは、ARDIイニシアチブが、雨水貯留や水耕栽培システムなどのスマート農業ソリューションを活用し、食料安全保障の強化と雇用創出に取り組んでいる。同様に、サウジアラビアのHumaはAIを活用して、3,400万人に在宅医療サービスを提供している。同社は心血管疾患に重点を置いており、この疾患は2015年に地域の死亡の37%と関連していた。
MENAには世界最大級の政府系ファンドが数多くあり、これらは地域の変革を支えている。そのため、同地域にはテクノロジー主導の持続可能なソリューションで世界をリードする可能性がある。イノベーションへの継続的な投資に加え、地域全体で知識や資源を共有することが、SDGsの進捗を加速させるうえで重要となる。
MENA地域全体の持続可能な開発格差を埋めるには、迅速で連携の取れた行動が欠かせない。多くの国では、すでに重要な取り組みが始まっている。公平な開発、若者のエンパワーメント、クリーンエネルギー、テクノロジーへの投資を拡大すれば、MENAは2030年のSDGs達成期限を前に、永続的な変化を生み出す機会をつかめる。







