カーニー氏:大手金融機関に大胆な気候変動対策を取らせるにはどうすればよいか

DAVOS/SWITZERLAND, 24JAN15 - Mark J. Carney, Governor of the Bank of England; World Economic Forum Foundation Board Member is captured during the session 'The Global Economic Outlook' at the Annual Meeting 2015 of the World Economic Forum at the congress centre in Davos, January 24, 2015. WORLD ECONOMIC FORUM/swiss-image.ch/Photo Moritz Hager
"It's a critical year for climate," says Mark Carney.Image: WEF
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  • 元イングランド銀行総裁は、世界の金融セクターに対し、資産を気候に優しい活動へ移すよう働きかけている。

  • 同氏によれば、気候変動と気候政策がもたらすリスクは、金融市場に大きな変化をもたらすという。

  • 企業は、気候変動への影響と排出量削減計画を開示することを今後ますます求められるようになるだろう。

元イングランド銀行総裁。マーク・カーニー氏は、英国のボリス・ジョンソン首相の金融顧問を務めており、11月に開催されるCOP26気候サミットに向けて、また国連の気候行動・金融担当特使も務めている。

世界経済フォーラムのダボス・アジェンダの週に、同氏はRadio Davosに対し、今年および今後10年間に予想される課題について語った。

金融記者は、市場は恐怖と欲望という二つの要因によって動くと教えられる。投資家であれば、伝統的に、一方の端から お金を入れ、もう一方の端からより多くのお金を引き出すことを期待する。人は良いことをするために お金を投資するわけではない。こうした重要な気候プロジェクトへの投資や、温室効果ガスを大量に排出する事業からの資金の引き揚げは、どのように実現されるのだろうか。

では、あなたの「恐怖と欲望」を「リスクと機会」に置き換えて、基本的な点を述べましょう。それは、気候変動は存亡に関わるリスクだということです。これに対処しなければ、人類の生活と生計、経済、さらには生態系の最も基本的なレベルにおいて、根本的な課題に直面することになります。

これを逆から見れば、解決に取り組み、存亡に関わるリスクに立ち向かい、問題の一部ではなく解決策の一部となるならば、それは非常に大きな機会となります。そして、あなたの言葉を借りれば、それは欲望、すなわち方程式の機会の側面に転じます。投資家であれ、融資を行う人であれ、年金のために投資する人であれ、金融は「その機会」に注目しています。かつては価値があったものの、ネットゼロの世界では価値を持たなくなる資産や活動があります。言い換えれば、それらは問題の一部であるため炭素を過剰に排出し、座礁資産となるでしょう。一方で、解決策の一部となる技術や活動は、非常に大きな価値を持つことになります。そして現在起きているのは、リスク、すなわち「恐怖」から離れ、あなたの言葉で言えば「欲望」、すなわちそれらの機会へと向かう転換です。これは資本における非常に大きな転換であり、この課題に対処するために、今後数十年にわたり毎年数兆ドル規模で測定されることになるでしょう。

では、企業に気候変動への影響を開示させる取り組みについてお聞かせください。なぜそれが非常に重要なのか、そしてどのように進めていくのか教えていただけますか。

それは根本的なことです。情報が必要なのです。測定されたものは管理されます。そこで、企業の現在の気候フットプリントについての情報だけでなく、今後それをどのように管理しようとしているのか、つまりリスクと機会の両面からの情報を得ることから始めます。そして投資家、融資者、そしてすべてのステークホルダーに、企業が再び解決策の一部なのか、それとも問題の一部なのかを判断できる情報を提供します。管理計画はあるのか、ということです。

そこで、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)と呼ばれるものがあります。これは、企業がその情報を提供することを意味します。従来、企業はそれを行ってきませんでした。取り組みが本格的に始まったのは5年前です。大きな進展を遂げており、その背後には140兆米ドルを超える資本があります。言い換えれば、この情報を求める企業、投資家、銀行などが存在するということです。英国はCOPにおいて、これを優先課題としてきました。これは単に民間セクターに任せることではなく、公共セクターが、これまでの進展を引き継ぎ、この種の開示を主要経済国で義務化することを意味します。そうすることで、投資家は比較ができ、解決策のある分野に投資し、問題が生じる分野のリスクを維持・管理することができます。ですから、これは根本的なことです。大きな進展があります。それは必要であり、しかしまだまだ多くのことが進められる必要があります。

リスクはよく知られているImage: 世界経済フォーラム

現時点で、この取り組みがどの段階にあるのか、概要を教えていただけますか。これらの指標は使用されているのでしょうか。また、特定の法域で義務化が進んでいるのでしょうか。すでに投資家の資金配分にも影響を与えているのでしょうか。

それらすべての答えは「はい」です。まだ進める余地はあります。世界最大級の企業1,200社が、G20諸国にわたってTCFDの指標に基づく報告を行っています。そのため、この種の報告は多く行われていますが、報告の範囲を広げるとともに、質の面でも深める必要があります。これが第一のポイントです。

第二に、投資家はこの情報を活用しています。実際、有用だと考えているため、さらに多くを求めています。より多くの企業からこの情報を入手することを望んでおり、この種の情報をさらに多く必要としています。

第三に、開示を義務化する国について ですが、ニュージーランド、スイス、英国はいずれも義務化を発表しています。欧州連合(EU)は、この種の情報を含む持続可能性開示に関する、より広範なプロセスを有しており、それは法制化され、したがって義務化されることになります。

COPの一環として、私たちが各国に求めているのは、今後数年以内に義務化するための道筋を確立することであり、それにより世界中で一貫した開示が実現されます。

もう一点あります。世界最大の報告機関であり、「IFRS」と呼ばれる独立機関は、財務報告を監督しており、気候関連財務情報、すなわちTCFD型の開示について、140か国を対象とするプロジェクトも開始しています。そのため、多くの進展がある一方で、それらはすべて実施段階にあります。さらに加速させ、確実にゴールまで到達させる必要があります。

大企業が気候排出量や計画を報告する際に、一般市民がそれを信頼する理由はあるとお考えですか。道端の一般の人々は、聞いたことをなぜ信じるべきなのでしょうか。

持続可能性や「グリーン」へのコミットメントに関する耳触りの良い表明や、企業の活動の広い全体像のごく一部しか示さない、非常に選択的な情報開示などがあります。その点については、健全な懐疑心をもって見ることには十分な理由があると考えます。

今まで話してきたことは、まったく別のことです。それは、気候関連リスクのあらゆる側面について包括的に開示し、それを企業の正式な報告書、つまり主要な財務報告書に記載することです。これが最も重要なポイントです。実際にそれを行うと、企業に対して、あらゆるレベルの精査、専門性、そして責任が生じます。

したがって、曖昧な表現から、確かな事実や将来の影響へと移行し、それを法域をまたいで一貫した方法で行うことが、その信頼を確立する理由です。ただし、信頼だけではありません。企業、投資家、銀行など、この情報を必要とし、それに基づいて実際の意思決定を行う人々によっても、非常に厳しく精査されています。そのため、数値が正しく、かつ実行されていることを確かめるための、さらなるレベルの精査がもたらされます。

あなたは「地平線の悲劇」と呼ばれるものについて話されました。これは、短期的な投資判断が多すぎることを意味すると理解しています。それについて説明していただけますか。

環境経済学には二つの大きな課題があります。一つは「共有地の悲劇」です。公海での共同漁業を考えてみてください。誰もそれに対して個人として責任を負わないため、集団としては全員が取りすぎてしまい、最終的には漁業資源を破壊してしまいます。陸上での過放牧も、共有地の悲劇のもう一つの例です。

「地平線の悲劇」とは、通常のビジネスサイクルの地平線が[わずか数]年で測られ、政治サイクルは4年の政治サイクルで測られるということです。規制当局や中央銀行は、多くの場合2〜3年先を見ています。これらの地平線はすべて、今日蓄積されつつある気候変動の真に破滅的な影響が[顕在化する]地平線よりも短いのです。そしてもちろん、その物理的影響が規模と頻度を増すころには、対処するには遅すぎます。したがって、今日行動を起こすためには、未来を現在へと引き寄せる必要があります。それが地平線の悲劇を解決する方法です。

温室効果ガスの排出コストを、個人が購入する製品や、大量に取引される商品の価格に組み込む方法はあるとお考えですか。

方法は複数あります。世界全体を見ると、平均的な炭素価格は1トンあたり約3〜4ドルです。何らかの形で炭素価格が設定されているのは、世界の経済活動のわずか約2%にすぎず、その炭素価格自体の平均は約15ドルです。計算すると、結果として1トンあたり約3ドルになります。

また、1.5度の地平線に私たちを導くための調整を促すインセンティブとして必要とされる水準を示すと、1トンあたり75〜100ドル程度が必要になります。他にも多くの政策、規制、その他の手段が役立ちます。しかし、そこに到達するために必要な炭素価格の水準からは、まだ大きく離れています。

二つ目の方法はやや微妙ですが、ダボスの企業を含む多くの企業が、ネットゼロを目指することを表明しているという点です。つまり、自社の排出量を削減し、自ら ネットゼロにしたいと考えているのです。排出量を見る際、それは直接の活動からの排出だけでなく、本社で使用する電力や、世界中のサプライチェーンにおける生産拠点で使用する電力からの排出も対象にしています。そして多くの企業が[検討しているのは]、いわゆる「スコープ3」排出量です。つまり、サプライヤーや製品を使用する消費者からの排出量はどれくらいか、ということです。

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