ラテンアメリカは、地政学的な重要性を高め、世界的な課題の解決策の一部となる上で好位置にあります。
この地域は、世界が直面する複合的な危機に対処するため、食料、エネルギー、生物多様性を提供することができます。
この地域の指導者は、保護主義と肥大化した政府への逆戻りを避け、マクロ経済の安定を優先しなければなりません。
世界が複数の重なり合う危機に直面するなか、ラテンアメリカは、地政学的な重要性を高め、世界的な課題の解決策の一部となる上で適した立場にあるように思われます。世界が解決すべき問題の一部となるのではなく、再びそうなるのでもなく、です。
世紀に一度とされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックや、今後いつでも危険な新種のウイルスが出現する可能性は、現在の世界的な危機の唯一の例からはほど遠いものです。気候変動に起因する壊滅的な異常気象は、とりわけそれに対応する備えが最も不十分な国々で、今やはるかに頻繁に発生しています。世界は食料不足に直面しています。一年前に始まったエネルギー危機も、収束する兆しを見せていません。
ラテンアメリカには、世界が必要とする食料とエネルギーがあります。気候危機の抑制に不可欠な生物多様性もあります。また、国際的な戦争を始める意図も能力もない、安全で信頼できるパートナーです。これに加え、米国、欧州、アジアとの多数の自由貿易協定があることから、フレンドショアリングの象徴的存在となっています。
民主主義の価値観と原則があらゆる場所で挑戦を受けているなか、ベネズエラを除き、ラテンアメリカは民主主義と民主的自由の砦です。この地域の多くの国々は、最近、右派や中道右派の政権に代わり、左派寄りの指導者を選出しました。ジャイル・ボルソナロの支持者が最近ブラジリアの政府庁舎を占拠しようとしたにもかかわらず、政権移行は円滑に行われました。
エネルギー転換や、欧州その他の地域でエネルギー安全保障を強化する必要性は、ラテンアメリカが過去よりも今日においてより重要である理由を示す好例です。エネルギー転換に必要な重要鉱物の供給源として、中国と競争できる唯一の地域です。国際エネルギー機関によれば、リチウム、コバルト、希土類元素については、上位3か国が世界の生産量の4分の3をはるかに超える割合を握っています(石油の同等の数値は40%未満です)。リチウム精製においては、中国が58%を占める一方、第2位の生産国であるチリが29%を占めています。アルゼンチンとボリビアも多くのリチウム埋蔵量を有しています。
米国で最近成立したインフレ抑制法は、今年から、満額のクリーン自動車税額控除を受けるための二つの調達要件を定めています。税額控除の上限額の半分(車両1台あたり3,750ドル)を受けるには、車両のバッテリーの重要鉱物部品の少なくとも40%が、米国もしくは米国と自由貿易協定を結んでいる国で採掘もしくは加工されるか、北米でリサイクルされている必要があります。この最低基準は、その後の年々引き上げられ、2027年までに80%に達します。税額控除の上限額のもう半分を受けるには、バッテリー部品の少なくとも50%が米国、メキシコ、またはカナダで製造されている必要があります。この法律は、これらの製品における中国の支配力を意図的に低下させようとしており、そうすることで、ラテンアメリカに機会を生み出しています。
エネルギー安全保障の観点では、ブラジルの石油生産量は、2019年の1日あたり250万バレル(bpd)から、今年は330万bpdへと増加しています。同じ期間に、ガイアナの生産量は30万bpd、アルゼンチンの生産量は15万bpd増加しています。つまり、比較的短期間のうちに、この地域は世界の生産量に1日あたり100万バレル以上の石油を追加しているのです。
エネルギー転換や、欧州その他の地域でエネルギー安全保障を強化する必要性は、ラテンアメリカが過去よりも今日においてより重要である理由を示す好例です。エネルギー転換に必要な重要鉱物の供給源として、中国と競争できる唯一の地域です。
マウリシオ・カルデナス、コロンビア大学グローバル・エネルギー政策センター、グローバル上級研究員
しかし、ラテンアメリカの戦略的重要性が高まっても、正しい判断が下されなければ、自動的に繁栄の拡大につながるわけではありません。この地域の最大国の現在の指導者層は、民間部門への不信感を共有し、国家のより大きな役割を望み、政府プログラムについて大きな野心を抱いています。経済面で厳しい時期が近づいており、この地域は今年1%未満の成長にとどまると予想されているなか、新しい指導者層は政府の介入に対する賭けを倍増させる可能性が高いと思われます。穏健な時期が訪れることも、政治的中道へ転じることもないでしょう。経済状況がより緊迫するなか、政策はより急進的になる可能性が高いと見られます。
真のリスクは、この極めて重要な局面でイデオロギーや教条主義が主導権を握ることです。市場がより良い仕事をできる、あるいは実際にしている分野に国家を再び関与させるような誤った改革や、保護主義の復活は、いずれもこの大きな機会を頓挫させかねません。さらに悪いことに、政府がマクロ経済の安定を優先しなければ、つまり、それに伴う予算の引き締めや金利上昇への許容が必要になるにもかかわらず、外国投資家が手を引く可能性があります。そうなれば、この地域は世界が緊急に必要とする処方箋を提供する立場ではなく、再び患者の立場に置かれることになるでしょう。





