新たなテクノロジーやバリューチェーンの再編を背景とする産業変革の時代を迎え、世界の労働市場は影響を受けている。
世界経済フォーラムは、リーダーが新たな雇用を創出するための重要な投資経路を見いだせるよう、「雇用創出の未来に関するグローバル・フューチャー・カウンシル」を発足させた。
エネルギー、テクノロジー、ケアの各分野は、多くの国で大規模な雇用創出を実現する可能性が最も高い。
新たな報告書によると、COVID-19パンデミックの経済的影響と近年の地政学的危機は、労働市場にそれぞれ大きく異なる影響を及ぼしてきた。
多くの先進国では、失業率が数十年ぶりの低水準となり、人手不足が広がっている。経済協力開発機構(OECD)の加盟国では、2022年末時点の平均失業率は4.9%だった。
しかし、他の地域では状況が大きく異なる。低所得国と低中所得国では、失業率がパンデミック前の水準を上回ったままだ。とりわけ低中所得国では、最も高い失業率が続いている。
こうした背景から、世界経済フォーラムは「雇用創出の未来に関するグローバル・フューチャー・カウンシル」を発足させる。リーダーが新たな雇用を生み出すための重要な投資経路を見いだし、行動に移せるよう支援するためだ。同カウンシルの準備として、新たな報告書では、世界的な雇用創出の必要性と、リーダーが検討すべき4つの投資経路の可能性を示している。
雇用創出に影響する要因
人口動態も、世界の雇用情勢が一様でないことに大きな影響を及ぼしている。豊かな国々では、労働年齢人口の減少により、人手不足がさらに深刻化する可能性がある。
失業率が最も高いアフリカでは、2035年までに人口が4億5,000万人増えると予測されている、と報告書は指摘する。しかし世界銀行のデータによると、今後、政策改革が行われなければ、同年までにアフリカ大陸で新たに得られる雇用は1億件にとどまる可能性がある。
女性もパンデミック中に、より大きな雇用喪失を経験した。世界経済フォーラムの『グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2022』によると、労働力におけるジェンダー平等の達成率は62.9%だった。これは同指数で記録された過去最低の水準である。
若者もまた、失業率が高まっている人口層だ。就業も、職業訓練も、教育も受けていない15~24歳の割合は23.3%に上昇したと、国際労働機関(ILO)のデータは示している。
未来の雇用を生み出す
報告書の執筆者によると、厳しいマクロ経済環境に加え、世界各地の労働市場は産業変革の時代によって揺さぶられている。テクノロジーの導入拡大、グリーンエネルギーへの移行、バリューチェーンの再編も、雇用創出に影響を及ぼしている。
同カウンシルは、地域および世界規模で新たな雇用を創出するための重要な投資経路をリーダーが見いだせるよう支援する。「雇用創出の可能性が高い産業とは、投資によって直接雇用と間接雇用が大きく増える産業である。直接雇用は、新規事業の創出と既存事業の成長によって生み出される」としている。
報告書が、現在および将来にわたって大規模な雇用創出を促す可能性が最も高いとする産業分野は、次の3つだ。
1. エネルギーと素材
世界のほとんどの国・地域は、気候危機に対処するため、排出量の削減を約束している。国内の再生可能エネルギー供給能力が拡大すれば、エネルギー転換によって雇用が大幅に増える可能性がある。
この分野で現在、世界をリードしているのは中国で、世界の再生可能エネルギー分野の雇用の42%を占める。ブリーフィングペーパーは、中国が「洋上設備への投資、ポリシリコンなどの重要素材の生産、専用工業団地の整備などにより、主導的な役割を確立した」と指摘している。
米国では、インフレ抑制法(IRA)の成立以降、クリーンエネルギー分野で推定10万人の雇用が生まれた。バイデン政権は、米国のグリーンエネルギーへの移行を大きく加速させるため、3,700億ドルの投資と税制優遇措置を実施している。
2. ITとデジタル通信
テクノロジーとデジタル化は、世界の直接的な雇用増加を促す重要な要因であると同時に、他の分野の成長を促す大きな要因でもある。
欧州の雇用増加に関する研究は、これを裏付ける実証的な証拠を示している。
「雇用乗数を組み込んだ標準的な経済成長モデルを用いて、著者らは、テクノロジー分野の雇用が1件増えるごとに、欧州の他の産業で約5件の雇用が生まれると推定している」と報告書は述べている。
3. ケア、パーソナルサービス、ウェルビーイング
ケアへの投資は、ILOによると、2035年までに世界で約3億件の雇用を生み出す可能性がある。内訳は、保育分野の直接雇用が9,600万件、長期ケア分野が1億3,600万件、ケア以外の分野における間接雇用が6,700万件と推計されている。
純雇用創出全体のうち、2035年までに女性が新たな雇用の78%を占める見込みだ。必要な投資を行えば、「経済的・社会的に重要な恩恵がもたらされる」と報告書は述べている。
ただし、新たな雇用は「すべての人に公正な賃金、保護、平等な機会」を提供しなければならない。報告書は、現在、世界で2億1,400万人の労働者が極度の貧困状態にあり、さらにインフォーマル経済で働く労働者の60%は社会的保護を受けられていないと、ILOのデータを基に指摘している。
仕事の未来を形作る
世界経済フォーラムの「グロース・サミット」は2023年5月2~3日にジュネーブで開催され、すべての人に雇用と将来の機会を確保する方法を探る。主なテーマは、レジリエントな成長の実現、人的資本の育成、経済的公平性の加速だ。
「過去1年で不平等の拡大や分断の深刻化が加速し、テクノロジーが雇用にもたらす脅威と機会が浮き彫りになるなか、世界経済は重大な局面を迎えています」と、世界経済フォーラムのマネージング・ディレクター、サーディア・ザヒディは述べる。
「グロース・サミットでは、リーダーが集まり、包摂的な成長に向けた新たなビジョンを形作るとともに、将来に役立つ知識やスキルを人々が身につけられるようにする取り組みを前進させます。すべての人に恩恵をもたらす回復と未来の経済を築かなければなりません。」





