新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、柔軟な働き方を求める従業員が増えましたが、多くの経営幹部はハイブリッドワークの導入に依然として懐疑的です。
多様な人材を惹きつけるうえで、ハイブリッド勤務モデルは不可欠です。特に、働く親、さまざまな健康上のニーズを抱える人々、職場近くの生活費高騰の影響を受ける人々という3つのグループにとって重要です。
職場戦略にハイブリッドワークを取り入れることで、仕事と生活の調和を改善し、エンゲージメントと生産性を高め、多様で公平な労働力を実現できます。それがイノベーションと成長を促します。
不動産は経営幹部の議題の最重要項目に躍り出ました。オフィスに戻る従業員が増えるなか、企業は職場戦略全体の見直しを迫られています。CEOやCFOは、物理的な職場にかかるコストと、従業員が一か所に集まることの利点とのバランスを取っています。調査によれば、職場環境が優れているほど、従業員はそこで過ごす時間を増やしたいと考えることが明らかです。適切な場所に、適切な種類のスペースを設けることが、人材の獲得と定着の鍵となります。
ハイブリッドワークモデルの有効性
雇用主はチームにオフィスで再び一緒に働いてほしいと考え、従業員も同じように望んでいますが、毎日ではありません。かつての「平日、9時から5時までオフィスで働く」という形は、過去の遺物になりつつあるようです。今では多くの従業員がハイブリッド勤務を好み、週の少なくとも一部をリモートで働ける柔軟性を求めています。また、ハイブリッド勤務は、従業員エンゲージメントの向上と離職率の低下を通じて、組織の業績改善に寄与することを示す証拠もあります。
一方、多くの経営幹部はハイブリッドワークの有効性に依然として懐疑的です。かなりの割合の人々が、従業員にフルタイムでの出社を求めると述べています。この議論の焦点は、突き詰めれば「従業員の生活の質か、企業の生産性か」です。しかし、この見方は、労働力の力と可能性を引き出すうえで欠かせない点を見落としています。ハイブリッドワークは、職場における多様性、公平性、包摂性(DE&I)を実現する重要な手段となり得るのです。
DE&Iは譲れないと考える私たちにとって、多様な人材を惹きつけることは最優先事項です。ここでハイブリッドワークモデルが本領を発揮します。これは単に好みやパフォーマンスの問題ではありません。適切に実施すれば、特定の対象グループから人材を採用できるようになります。主な例を3つ挙げます。
1)主に家族のケアを担う女性
家族に関する責任を負う女性の採用と定着は、常に大きな課題でした。新型コロナウイルス感染症の危機によって、状況はさらに悪化しました。数百万人の女性が2020年、米国の労働力から離れました。その理由は、学校や保育施設の閉鎖によって生じた子育ての難しさでした。
多くの女性は、柔軟な勤務形態を特に強く望んでいます。保育のスケジュールと通勤を両立させるという固有の課題に対処するためです。高齢の親や障害のある家族など、追加の介護責任を負う人々にとっては、課題がさらに重なります。
ハイブリッドモデルは、働く女性それぞれのライフスタイル上のニーズに応えます。そうでなければキャリアや生活の質を妨げる課題を取り除き、軽減することで、職場を実質的に公平なものにします。
2)身体的または精神的な健康上の問題を抱える人々
通勤は、何らかの障害のある数百万人の多くにとって、大きな、そして文字どおりの障壁となっています。リモートワークによって、組織に溶け込み、より容易に貢献できるようになります。特に、自宅がニーズに合わせて改修されている人にとって有効です。これは公共交通機関や職場設計に関する継続的な課題への対処が不要になるという意味ではありませんが、日々そうした課題に直面している人々の助けになります。
障害は身体的なものだけではないことも忘れてはなりません。米国の人口の18%は、不安障害と診断されています。その多くは、週5日オフィスに通うことに苦労しています。通勤時間が長い、複雑である、または混雑した公共交通機関に頼らなければならない場合は特にそうです。現代の職場設計ではニューロダイバーシティに配慮し、必要に応じて個室や静かな場所を簡単に利用できるようになっていますが、感覚が過敏な人々にとって、依然として利用しにくい空間も多くあります。
ハイブリッドワークモデル、特に用途の変化に対応できるよう設計された物理的なオフィスを含むモデルは、直面する課題にかかわらず、すべての専門職が意欲を持って働き、生産性を高め、職場コミュニティの一員として受け入れられていると感じられるようにします。
3)経済的な理由で住居に制約のある人々
パンデミック以前から通勤時間は着実に長くなっており、オフィス周辺地域の生活費の問題から、片道90分を超えて通勤する長距離通勤者が増えていました。
オフィスから無理なく通勤できる距離に住む余裕がないというだけで、多くの従業員が雇用機会から事実上排除されています。その結果、居住地が暗黙の採用条件となり、さまざまな人口集団、とりわけ社会的に疎外された人々やマイノリティの採用に障壁が生じます。
ここでもハイブリッドワークモデルは、両方の利点をもたらします。週に一定の日数は自宅で働くためのテクノロジーやツールを活用し、オフィスには、協働やチーム会議のために頻度を抑えて(その分、負担も軽くして)通勤できます。
世界経済フォーラムは、職場の平等をどのように推進しているのでしょうか?
『未来の仕事レポート』2023年版によると、調査対象企業の75%が、今後5年間にAI、ビッグデータ、クラウド技術を導入すると見込んでいます。
新経済・社会センターは、リーダーが新しいテクノロジーの導入と有効性、そしてそれを活用する労働力の準備状況について知見を共有する場を提供しています。私たちは、成長、雇用、スキル、公平性、リスクに関する知見や対話の形成にも取り組んでいます。
私たちの取り組みについて詳しくはこちら:
ジェンダー平等:2006年以降、私たちは毎年101の経済圏におけるジェンダー平等の現状と推移を測定し、ジェンダー格差を解消する最も効果的な政策を意思決定者が特定できるよう支援しています。チリでは、ジェンダー平等を加速する取り組みの設立を支援し、72万8,000人の女性に恩恵をもたらしました。参加企業ではジェンダー格差が37%縮小しました。
リスキリング革命:パートナーとともに、350を超える組織と連携し、世界の労働力が将来に備えてキャリアを築けるよう、10億人に、2030年までにより良い教育、スキル、経済機会を提供する取り組みを進めています。
障害者の包摂:Valuable500と連携し、障害者の包摂における格差の解消に取り組む、世界最大のCEOネットワークと協力しています。参加企業は、デジタルアクセシビリティのベストプラクティスをより広く導入し、多様性、公平性、包摂性の戦略に障害者を含めることで、前進しています。
人種的公正:私たちは、55の組織から成る世界的な連合と協力しています。13の業界にまたがるこれらの組織は、過少代表の人種的・民族的アイデンティティを持つ専門職のために、公平で公正な職場を築くことを目指しています。
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在宅勤務を含む柔軟な働き方は、長年選択肢の一つでしたが、近年のパンデミックによって大きく後押しされました。「自宅で仕事をさぼる」という懐疑や、従来と異なる勤務形態に付きまといがちだった偏見は、ほぼ消え去りました。管理職は、リモートチームを効果的に率い、調整する方法を身につけました。テクノロジーは進歩し、普及も進んだため、柔軟な働き方を支えるハードウェアやソフトウェアのソリューションが標準になりました。
企業は今、こうした変化を受け入れ、DE&I戦略を前進させる機会を活用する方法に注力する必要があります。適切な職場と職場戦略を組み合わせれば、従業員が求める仕事と生活の調和、CEOが求める高いエンゲージメントと生産性、そして真の競争優位の鍵となるイノベーションと成長をもたらす多様で公平な労働力を実現できます。適切に導入すれば、ハイブリッドワークはすべてのステークホルダーにとって真の三方よしとなり得ます。





