アフリカでは商業主導の臨床開発活動が大幅に軽視されてきた。大陸の人口動態と健康状況の変化を考えれば、この状況を改めなければならない。
アフリカでの臨床試験は、医薬品開発の革新、医療の改善と患者の転帰向上、ひいてはアフリカ全体の発展など、大きな恩恵をもたらす。
アフリカにおける医薬品規制の改善は、医薬品の品質と製造能力の向上につながる。
世界で2番目に人口の多い大陸であるアフリカの人口は12億人を超える一方、満たされていない患者ニーズは非常に大きい。国連の予測によると、2050年には世界人口の25%がアフリカ人となり、その人口は高齢化し、都市部への集中が進む。多くのアフリカ諸国で感染症が甚大な被害をもたらしているが、非感染性疾患は主要な死因になると予測されており、サハラ以南のアフリカでは2030年までに疾病負担が多様化する。
また、この大陸は人類の遺伝的多様性が他のどの地域よりも高く、アフリカの健康課題の病因と疫学には大きな未知の部分がある。これらに対処できるのは、アフリカの集団を対象とする研究とアフリカでの臨床開発だけである。
臨床開発がもたらす幅広い恩恵
疾患を対象とする臨床開発は、治療の改善に直接つながる。たとえば、サハラ以南のアフリカ(SSA)で鎌状赤血球貧血(SCA)の臨床試験を実施することは、革新的な医薬品へのアクセスにとどまらず、患者に恩恵をもたらす。
この地域では100万人を超える子どもがSCAを患い、既知の合併症である虚血性脳卒中を発症する子どもは推定6万人に上る。過去20年間、世界の多くの地域では、子どもを対象に毎年脳卒中リスクを検査することが標準的な医療として定着してきた。経頭蓋ドプラ超音波検査(TCD)と呼ばれる超音波技術を用いてリスクの高い子どもを治療し、脳卒中をより積極的に予防することで、SCAの子どもたちの罹患率を大幅に低下させている。
この人生を変えるTCD検査は、SCAの臨床研究が行われるまでこの地域では利用できなかった。学術機関と産業界が支援する試験を通じ、TCD機器と研修が提供され、これまでよりはるかに広い規模で検査が可能になった。TCD検査の技術と専門知識は現在、この地域の一部の国で標準治療に取り入れられ、多くの子どもと家族に恩恵をもたらしている。
臨床研究は治療慣行を改善できるが、IQVIAがCiteline TrialTroveデータベースを分析したところ、2020/21年にアフリカで開始された臨床試験は世界全体のわずか3.9%だった。この割合は過去10年間でアフリカの試験開始数が倍増したことを示すが、世界の臨床試験全体に占める比率は依然として小さく、人類の16%を占める人々の可能性を十分に反映していない。その結果、21世紀の主要な未充足の健康課題の多くが事実上見過ごされている。何を変える必要があるのだろうか。
成熟しつつある規制環境
アフリカの医薬品規制は歴史的に脆弱で分断されており、臨床開発を促すには強化が必要だ。54カ国のうち32カ国の人口が1,000万人を超えるアフリカでは、魅力的で持続可能な研究環境を整えるため、大陸全体で規制慣行を調和させることが不可欠である。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックを機に、規制当局間の連携が加速した。以前はエボラワクチン候補の臨床試験を調整するプラットフォームだったアフリカワクチン規制フォーラム(AVAREF)は、新型コロナウイルス感染症の臨床試験の促進に重要な役割を果たした。その一例が、ANTICOV試験である。既存薬を転用した新型コロナウイルス感染症の治療法を調べる同試験では、各規制当局が臨床試験の承認を共同審査できるよう調整した。
アフリカ連合のアフリカ医薬品規制調和(AMRH)は、規制能力の強化と、大陸全体で共通の慣行や手順を採用する取り組みを推進している。これが成功すれば、臨床開発に加え、医薬品の製造、品質、入手可能性にも大きな恩恵がもたらされるだろう。
各国独自の取り組みによっても規制は強化されてきた。たとえば南アフリカでは臨床試験の承認が迅速化しており、最近のある試験では、治験施設の立ち上げが米国に次いで最も早かった。

治験施設の選択肢の拡大
IQVIAによるCiteline TrialTroveデータの分析では、アフリカの臨床試験実施施設は現在1,400を超え、11カ国に20施設以上があることも明らかになった。しかし、アフリカで開始される臨床試験のうち、企業がスポンサーを務めるものはわずか35%にとどまる。商業的な試験活動をさらに呼び込むには、成熟した治験施設と研究インフラを引き続き拡充する必要がある。
治験施設が大幅に増加し、さらに増え続けている国々では、次の要因が重要な推進力となっている。
- 医療従事者とその勤務先の医療機関が、学術研究や商業研究への参加に前向きになっている。
- SCAの事例に見られるような医療インフラの継続的な革新と投資、そして優れた治験責任医師となる臨床医の増加。
製薬企業にとって、現在のアフリカの臨床開発環境には、競合する試験が比較的少ないという魅力もある。アフリカの試験活動は主に後期段階の第III相・第IV相試験に重点を置き、初期段階の試験で行う基本的な安全性試験よりも、大規模な患者集団を対象に既存治療と比較した有効性や長期転帰を検証している。さらに、施設や患者をめぐる競争が少ないため、多数の患者を募集しやすい。
アフリカの臨床試験環境はまだ発展途上であり、次の点を引き続き改善する必要がある。
- 治験施設や地域の医療制度における診断機器その他の機器の利用可能性。
- 試験候補者の特定と紹介、患者の追跡調査を支える医療制度のインフラ強化。効果的な地域社会との関与と連携は、患者募集と長期的な試験結果に不可欠である。
- 医薬品や物資の配送と継続的な医療を確実にする、試験向けの成熟した信頼性の高い安全なサプライチェーン。
アフリカの臨床開発の新たな段階
アフリカでは感染症の臨床試験が拡大しており、今後も続くと考えられる。たとえば、世界初のマラリアワクチン「モスキリックス」の臨床試験がある。アフリカでは非感染性疾患の臨床試験も増えているが、感染症の脅威が続くことを踏まえ、バランスを取る必要がある。臨床開発活動の水準と種類が拡大すれば、急速に変化するアフリカの医療ニーズへの対応に多くの恩恵をもたらす。
臨床開発と規制の強化・調和は相互に補完し、一方の進展が他方の発展を促す。規制当局の強化は医薬品の品質を高め、アフリカの医薬品製造能力を育成するうえで極めて重要である。
アフリカで臨床試験が拡大すれば、医療従事者は新しい治療法や機器について技能と経験を深めることができる。そして何より重要なのは、医療の革新をより速くアフリカにもたらし、アフリカ大陸の特有で非常に多様な人々により適した医薬品を開発する機会を開くことで、アフリカの患者に恩恵をもたらす点である。





