農業データは複雑で断片化しており、そのためデジタル技術が農業分野に貢献する可能性が制限されています。
新興技術の力を活用するには、このデータを標準化する必要があります。
世界経済フォーラムは、農業データ交換の共通フォーマットの開発に向け、業界の連携を推進することを目指しています。
食料・栄養安全保障、農家所得の偏った分配、自然災害、気候変動は、世界各地の農業システムの持続可能性に深刻な影響を及ぼしています。こうした歪みを是正するには政策改革が必要ですが、人工知能、機械学習、分散型台帳技術、センサー、ドローンなどの革新的な新興技術も大きな変化をもたらし得ます。
新興技術にはデータが必要です。それも、適切な目的のために適切なタイミングで使う、適切なデータでなければなりません。そうすることで最大の効果を発揮できます。農業バリューチェーンは、利害関係者と活動から成る複雑なシステムです。農業データは規模が大きく複雑であるうえ、断片化しているため、その潜在的な経済価値(インドだけで推定650億ドル)を引き出すうえで大きな課題となっています。
農業データの課題
1. 断片化
農業データは、土地、土壌、種子、作物、天候、害虫、適正農業規範、品質、市場、物流など広範囲に及びます。携帯電話、センサー、衛星などのツールにより、農業データの収集はより集中的かつ広範に行われるようになりました。しかし、こうしたデータセットの大半は依然として個別に管理され、管理システム間の相互運用性もありません。データ共有は限られています。
2. 標準の欠如
デジタル農業の分野には、データの作成、共有、分析、統合に関して広く受け入れられた標準がありません。共通語彙の欠如や、データ収集に異なるフォーマットが用いられていることなどが、データ共有を妨げています。
3. 農業データ交換の制約
農業データの大半は動的です。作物の健康状態を監視し、最適な農学的手法を取り入れ、害虫や病気、自然災害の状況を予測・緩和し、資源利用を最適化し、生産性の停滞を打開し、消費者の品質に関する懸念に対応し、変動の激しい市場環境に応じるには、リアルタイムのデータが必要です。
農業分野のデジタル変革の可能性を実現するうえで大きな課題の一つは、農業に関する過去のデータ、リアルタイムデータ、予測データを、簡便かつ効率的に作成、管理、交換、活用できるようにすることです。
データ交換の共通フォーマットの必要性
農業分野がデータ問題、とりわけデータ交換の問題を解決できれば、大きな経済的・社会的機会が開かれます。天候、土壌の健全性、作物の健康状態など多様なデータを活用することで、農業関連企業は予測モデルを開発し、特定の作物の栽培方法や肥料・農薬の使用量について、適切なタイミングで効率よく個々の農家に助言できる可能性があります。また、簡単なデジタルインターフェースを通じて、生産性の向上や効率的な市場との連携にも役立つでしょう。新たな協業形態や、デジタルサービスを提供するための新しいビジネスモデルにつながる可能性もあります。
そのため、標準に基づく相互運用性を促進する必要があります。これにより、複数のデジタルシステムが、人手をほとんど介さずに農業データを自動で交換できるようになります。分野や技術をまたいで、データを容易かつ迅速に交換できれば、革新的なソリューションの開発が促され、農場や市場で、エビデンスに基づく予測型の意思決定が可能になります。
データの相互運用性を促進するフォーマットに向けた業界連携の推進
農業データ標準の開発に向けた現在の取り組みの大半は、個別に、また地域ごとに行われています。AGROVOCは、国連食糧農業機関(FAO)の取り組みであり、農業用語の包括的な語彙を作成することで、データ問題の一部に対処しています。農業データを自動で交換するためのオープンデータフォーマットも必要です。業界が連携して取り組むことは、そのようなフォーマットを開発するための有力なアプローチです。
広く使われているデータ保存・転送用のテキストフォーマットであるJSON(JavaScript Object Notation)や、地理空間データに特化したオープン標準フォーマットであるGeoJSONなど、確立された仕様を活用して開発できます。農業データに特化したフォーマットを開発し、幅広いアプリやソリューションに対応させることが、農家や農業バリューチェーンのあらゆる関係者に利益をもたらすうえで有効です。
世界経済フォーラムは、世界の食料安全保障の確保に向けてどのような取り組みを行っているのでしょうか。
この仕様では、特定の技術に依存せず、機械が読み取れる形でデータを表現できるようにする必要があります。農業データの対象には、農家、土地、土壌、天候、作物、害虫、収量、市場、同意などがあります。時間の経過と普及に伴い、新しい農業データフォーマットの適用範囲を、第一次産業全体のデータニーズに対応するよう拡大することもできます。作物、種子、所在地、土壌、天候、品質の分類に関する既存のデータ標準を提案フォーマットに組み込めば、その導入が容易になります。
調和されたフォーマットにより、農業分野全体でデータが同じように理解・解釈されるようになります。国内外を問わず、農業バリューチェーン全体における連携、信頼、ガバナンスが強化されます。例えば、イノベーターは、同意に基づいてさまざまな情報源からデータにアクセスし、それらを組み合わせて処理することで、責任ある形で農家に新たな価値をもたらせるようになるでしょう。農業バリューチェーンのデジタル化とスマート農業ソリューションの普及も加速します。農業におけるデジタル経済の可能性を引き出し、食料安全保障を改善するとともに、農家の所得向上につなげることができます。
データ連携をめぐる官民の関係者による議論は、1月17日の2023年年次総会でも続き、一般向けにライブ配信されます。こちらのリンクからご参加ください。






