異なる集団間の健康状態の格差である健康格差は、今なお世界の健康を特徴づけています。
私たちの前進を妨げる格差に取り組まなければ、より健康な未来を築くことはできません。
世界経済フォーラムは、健康の公平性を推進するため、グローバル・ヘルス・エクイティ・ネットワークを通じて、公民連携の連合体構築に取り組んでいます。
多くの点で、世界はかつてないほど健康になっています。極度の貧困率は低下し、生活水準は向上し、平均寿命も大幅に延びました。しかし、この進歩がすべてを物語っているわけではありません。異なる集団間の健康状態の格差である健康格差は、長年にわたり世界の健康を特徴づけてきました。こうした格差が続いていることは、健康に関する前進を脅かす格差を解消する必要性が差し迫っていることを示しています。
私たちの前進を妨げる格差に取り組まなければ、より健康な未来を築くことはできません。適切な戦略、パートナーシップ、資源があれば、健康格差ゼロを実現できると私たちは考えています。ここでいうのは、誰もが長く健康に生きることから排除されず、すべての人に成長し、力を発揮する機会があり、生まれた場所の運に左右されて、より不健康な生活を余儀なくされる人がいない世界です。
健康格差はなぜ存在するのか
その実現に向けて、まず問うべきなのは、健康格差はなぜ存在するのかということです。根本的に、健康における格差は資源の格差を反映しています。健康は、食料、住居、安全な地域、清浄な空気と水、所得、個人の資産など、物質的な資産によって支えられています。こうした資源が豊富にあれば、健康が育まれる環境が整います。不足すれば、健康は損なわれます。
では、健康を支える物質的な条件へのアクセスを生み出すうえで、最も重要な要因は何でしょうか。もちろん、公共セクターは重要な役割を果たします。教育、環境保護、公衆衛生、安全な地域などの基盤は、いずれも強固な公共セクターのインフラに支えられています。市民社会や学術界も、より健康な世界の構築に向けて集団的な行動を促し、そうした取り組みを支える知識基盤を生み出すことで、貴重な貢献を果たせます。しかし、それがすべてではありません。
健康を支える資源は、民間セクターによっても形作られます。食料や衣服から住居に至るまで、健康に必要な多くの製品を生み出しているのは民間セクターです。また、多くの人々にとって、民間セクターは給与や経済成長をもたらし、健康に暮らす力の基盤となる所得を生み出しています。
公衆衛生には民間セクターとの連携が必要
民間セクターと連携せずに公衆衛生だけで取り組んでも、こうした資源へのアクセス拡大を十分に前進させることはできません。企業の影響力が健康の公平性の利益に沿えば、世界の健康を促進する能力を大幅に高められます。公共政策の及ぶ範囲は国境や国内政治の複雑さによって制約されることがありますが、企業の方針は機動的に動き、その場で革新を進め、健康の公平性を追求する新たな手法を取り入れることができます。
ファストフードチェーンがより健康的な食材を採用すると約束したり、広告会社が不健康な製品を販売する企業とは仕事をしないと誓約したり、多国籍銀行が所得の少ない世帯に対してより公平な融資方針を採用すると表明したりすれば、そうした選択は、現在の公衆衛生では届かない領域にまで及び、市場の中心に公平性を据えることになります。
健康の公平性への投資は、根本的に道徳上の要請ですが、賢明な事業判断でもあります。近年、民間セクターの意思決定にステークホルダー資本主義の指標を取り入れる動きが強まっています。こうしたデータは、企業方針がもたらす広範な外部性と、それが健康を形作る社会的条件とどのように交差するかを示しています。
企業方針が健康に及ぼす影響への理解が深まるにつれ、民間セクターは今後も、健康の公平性を支える方針を採用するよう、投資家、消費者、規制当局から圧力を受けるでしょう。民間セクターがこの需要に応えるほど、利益を共通善の支援に結びつけ、すべての人にとってより健康な世界の構築へとつなげることができます。
健康は医療だけではない
健康は需要に限りのない価値です。歴史的に市場は、医薬品や医療技術を提供することでこの需要に応えてきました。しかし、健康は医療だけではありません。健康格差への取り組みは、私たちが共有する健康へのニーズを満たすために民間セクターが提供できる商品やサービスの幅を広げ、その発想を豊かにする助けとなります。
例えば、住居の不安定さは長年、多くの人々の健康を損なってきましたが、持続可能な住宅への新たな投資によって対処できる可能性があります。製品設計に健康の公平性を取り入れることで、これまで利用できなかった人々にも商品を届けられるかもしれません。健康格差の影響を最も受けている人々も消費者であることを忘れてはなりません。健康格差を解消すれば、民間セクターにとって新たな市場が開かれる可能性があります。
健康の公平性を追求することは、企業の長期的な持続可能性にも寄与します。健康格差の解消に全社を挙げて取り組むことで、使命に基づく方針を掲げる組織の一員となる機会への需要が生まれ、人材の獲得につながる可能性があります。健康格差の緩和は、より効果的な労働力の実現にも役立ちます。より健康な世界では、誰もが自分自身と家族、地域社会を支えるために、生産的に働くことができます。そうした世界の実現に貢献することで、民間セクターは、ますます多くの人々がやりがいのある仕事で能力を十分に発揮できる未来を築けます。健康の公平性に取り組むことは士気を高め、より多様な労働力の形成にも寄与し、企業の機動力と活動範囲を強化します。
「健康格差ゼロ」誓約
ここ数年、私たちは世界経済フォーラムのグローバル・ヘルス・エクイティ・ネットワークの一員として、健康の公平性を推進するための公民連携の連合体構築に取り組んできました。この目標に向け、市民社会、学術界、ビジネス界の関係者と協議し、「健康格差ゼロ」誓約を策定しました。署名者は、健康の公平性を実践する主要な領域において、その実現への影響を最大化することを約束します。具体的には、民間セクターの組織全体、提供する商品やサービス、より広範な地域・国内・世界のコミュニティ、そして周辺のエコシステムが対象です。私たちはこの誓約を、健康の公平性の追求への参加というビジョンに導かれる民間セクターに向けた、正しい方向への一歩と捉えています。世界経済フォーラムは、健康の公平性を推進することを約束することで、健全な民間セクターと健全な公共セクターを支援しています。





