グローバル化に未来はあるのか?ダボス会議2022で経営者が議論

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  • 統合を進めるビジネス上の合理性は、分断を促す地政学的な動きの高まりに打ち勝つのでしょうか。

  • 変化する世界の力に適応するための地域・業界別の重要な優先事項と、今後6か月で世界秩序がどう変化するかについて、7人の業界リーダーが見解を語ります。

  • 世界経済フォーラムの新たな報告書『経済のグローバル化の4つの未来:シナリオとその影響』は、議論のきっかけをつくることを目指しています。

パンデミック、ウクライナ戦争、エネルギー・食料価格の上昇、サプライチェーンの混乱、気候危機は、数十年にわたるグローバル化を不安定化させかねない課題です。しかし、これらがどのような展開を見せるかについては、見方が分かれています。

グローバル化は大きな機会を生み、何百万人もの人々を貧困から救い出しましたが、相互依存への不信感が高まっています。情報戦、サイバー戦争、経済戦争など、数多くの脅威が警鐘を鳴らしています。

低・中所得国は、世界市場に統合されることで得られる恩恵を享受したいと考えています。国内需要が不足するなか、国際貿易は現在の危機から立ち直るための重要な手段と見なされています。しかし、企業や政府が将来のショックに備えて強靭なサプライチェーンを築こうとするなか、国内や地域内での製造・調達が増える可能性があります。仮想世界のつながりが極めて強まる一方で、物理的な世界では連携が弱まっています。

重要な問いは、統合を進めるビジネス上の合理性が、分断を促す地政学的な動きの高まりに打ち勝つかどうかです。

世界経済フォーラムの新たな報告書『経済のグローバル化の4つの未来:シナリオとその影響』は、世界経済がたどりうる道筋を示す簡潔な枠組みを提示し、議論のきっかけをつくることを目指しています。

年次総会では、一連のセッションを通じてリーダーたちが集まり、この問題を議論します。

ダボス会議2022での議論に先立ち、変化する世界の力に適応するための地域・業界別の重要な優先事項について、7人の業界リーダーに尋ねました。また、今後6か月で世界秩序がどう変化すると見ているのでしょうか。

「再グローバル化を推進する力は、企業にとって脅威よりも期待をもたらす」

タレク・スルタン・アル・アッサ、アジリティ副会長

私たちは再グローバル化の時代に入りました。これは、企業や経済による、より選択的で戦略的な統合への取り組みを指し、モノ、サービス、金融、データ、人の世界的な流れを再構築するでしょう。現在、世界は新型コロナウイルス感染症によるサプライチェーンの混乱に注目し、ウクライナでの悲惨な紛争にくぎ付けになっています。しかし、再グローバル化を真に推進する力は、2020年より前から働いていました。

その一つは、新興市場のミレニアル世代の購買力を原動力とする、新たな需要地図です。また、気候への懸念を背景に進展し、画期的なイノベーションによって可能になったエネルギー、モビリティ、素材の革命もあります。

さらに、デジタルプラットフォーム、AI、IoT、ブロックチェーン、自動化など、生産・物流コストを引き下げる技術によって特徴づけられる産業のルネサンスが起きています。

最後に地政学では、中国と西側諸国の世界観の隔たりが拡大し、新たな条件のもとで互いに関わろうとしています。サプライチェーンの問題が続いていること、ウクライナ紛争、中国との摩擦については懸念すべきです。しかし、世界的な統合の力学は常に変化しており、それは健全なことだと心に留めておきましょう。再グローバル化を推進する力の大半は、企業と世界にとって脅威よりも期待をもたらします。

経済のグローバル化の4つの未来Image: 世界経済フォーラム

「安全保障と代替的な金融市場の創設に注力する」

ジェーン・フレーザー、シティ最高経営責任者

グローバル化は変化していますが、確実に終わるわけではありません。ウクライナ戦争は、パンデミック中に見られた複数の動きを悪化させました。とりわけ、世界のサプライチェーンの混乱です。新たに見られるのは、安全保障への注目の高まりです。食料からエネルギー、サイバー・防衛から業務の強靭性まで、単一の依存先から脱却し、現地化と冗長性を高める動きが進んでいます。これにより、さらなるインフレ圧力が生じるでしょう。

ロシアによるウクライナ侵攻のもう一つの重大な帰結は、いわゆる金融サービスの「武器化」です。ロシアの金融システムと経済を西側から切り離すため、西側諸国が協調して前例のない制裁を行ったことで、代替的な金融市場の創設と既存の金融秩序の分裂が、時間とともに加速するでしょう。簡単に言えば、多くの国、機関、個人が、金融資産のすべてを西側のシステムに預けたくなくなるということです。これは一夜にして起きる現象ではなく、多くの国や機関は両方の市場で活動するでしょうが、選択の余地がないところもあるかもしれません。

「今こそ世界のガバナンスを強化するとき」

ベアタ・ヤヴォルチク、欧州復興開発銀行(EBRD)チーフエコノミスト

グローバル化は岐路に立っています。地政学的緊張と、いわゆる「フレンドショアリング」、つまり地政学上の同盟国との取引を推進する動きにより、グローバル化が後退する現実的な危険があります。それは、自由貿易のおかげで新興市場の何百万人もの人々が貧困から抜け出し、世界中の消費者がより安価な製品を手にし、技術や知識が国境を越えて自由に流れ、世界経済の成長を後押しした過去40年間の成果を損なうことになります。

フレンドショアリングは、世界貿易機関(WTO)に体現されている国際貿易ルールを、間違いなく弱体化させるでしょう。それは不確実性を高めます。そして何より重要なのは、WTOの紛争解決メカニズムによって、小規模経済が大きな貿易相手国から威圧されないよう受けている保護も失わせることです。

パンデミックから気候変動に至るまで、世界が前例のない課題に直面する今こそ、世界のガバナンスを弱めるのではなく、強化すべきです。

「世界には、つながりを減らすのではなく、もっと増やす必要がある」

ニコラス・アグジン、香港証券取引所(HKEX)執行役員兼最高経営責任者

世界には、つながりを減らすのではなく、もっと増やす必要があります。今の最優先事項は、対話とつながりを保ち続けることです。東西を結ぶスーパーコネクターとして、取引所であるHKEXの役割は、強靭で適切に規制され、競争力のある資本市場を運営し、地域間で資本、アイデア、機会が双方向に流れるようにすることです。それによってパンデミック後の回復を後押しします。

ビジネスと経済の面での合理性は依然として強固です。中国の投資家は世界のポートフォリオへの投資が大幅に不足しており、世界から中国への投資も著しく不足しています。HKEXは、地域内で資本の双方向の流れを促す金融面のスーパーコネクターとして、独自の役割を果たし続けます。

地政学的な緊張は続くと予想されますが、世界的な課題の重要分野では、前向きな連携や協力が進む兆しが見られます。とりわけ、気候変動や新型コロナウイルス感染症との闘いがそうです。

香港とHKEXは今後1年も重要な役割を担い続けます。企業、国、市場のつながりと相互理解の促進、未来を担う企業への資金供給、イノベーションの推進、持続可能な金融エコシステムの振興、雇用の創出、そして世界の回復を支える地域社会の支援に取り組みます。

「統合を進めるビジネス上の合理性は依然として強固」

エリック・パラド、米州開発銀行(IADB)チーフエコノミスト兼研究局長

世界経済が脱グローバル化の段階に入ったという認識は、近年、世界のバリューチェーン(GVC)が受ける経済的・政治的ショックの頻度と規模が増していることに一部基づいています。ここ5年間だけでも、米中間の大規模な貿易紛争、新型コロナウイルス感染症による世界規模のパンデミック、スエズ運河の封鎖、英国の欧州連合(EU)離脱、ロシアによるウクライナとの戦争が起きました。

こうした出来事にもかかわらず、統合を進めるビジネス上の合理性は依然として強固です。今日の世界のバリューチェーン構造は、数千億ドルの投資と、サプライヤーや顧客との長期的な関係を伴い、何年もかけて形成されてきました。そのため、現代のGVCに伴う大きな規模の経済により、企業は深刻でも一時的なショックを受けて、それらを解体することに慎重になる可能性があります。同時に、GVCは柔軟性も示しており、とりわけ、より永続的と見なされる出来事に直面した際にその力を発揮しています。

不確実性が高まるこの環境で、今後世界秩序がどう進展するかを見極めるのは容易ではありません。しかし、ラテンアメリカとカリブ海地域の優先事項は、GVCにより深く組み込まれるよう適応することです。海外投資の再配置を呼び込み、北米や欧州に輸出する域内企業が使用する中間投入財の地域内貿易を促進しなければなりません。

「次の10年には、前例のないイノベーションを促す必要がある」

ボブ・スターンフェルズ、マッキンゼー・アンド・カンパニー グローバル・マネージング・パートナー

「グローバル化の次に来るものは何でしょうか」。謙虚に言えば、本当のところは分かりません。しかし、今日の最も難しい課題を解決するため、相互のつながりを重視する新たなモデルが必要なのは明らかです。

数十年前、世界展開とは、専門化と規模の利益を引き出し、新興市場を発展させ、多国籍企業を成長させることを意味しました。世界貿易はGDPの2倍の速さで成長しました。しかし今日、世界は分断されつつあります。多極化が進み、強靭性の価値が高まっています。

私たちが解決すべき課題、すなわち持続可能性、パンデミック、インフレ、不平等は国境で止まりません。解決に必要なアイデアも同じです。次の10年には、統合され強靭な社会と市場に支えられ、経済的公平性と信頼に基づくパートナーシップを伴う、前例のないイノベーションを促す必要があります。

これを実現するには、地理的な制約を超えて、最も優れた思想家や実践者が協力する必要があります。そうすれば、地球を守り、すべての人々の生活水準を向上させる経済成長を実現できます。組織や社会がこの持続可能で包摂的な成長を加速できるよう支援することは、マッキンゼーの中核的な目標の一つです。

前進への道は容易でも明白でもありません。しかし、かかっているものの大きさを考えれば、勇気と信念をもって歩み始めるべき道です。

「多様性や他の文化・市場へのアクセスがなければ、企業は機会を逃す」

ジム・ハーゲマン・スナーベ、シーメンス会長

現在の世界の地政学的状況を受け、グローバル化の成功や、現在および将来の武力紛争や戦争を背景に、経済の相互接続性を高めることが賢明な長期戦略なのかどうかに疑問を呈する人もいます。

しかし、国際秩序への違反を理由にグローバル化をさらに後退させるべきではありません。むしろ正反対のことをすべきです。人々、アイデア、モノ、文化の国際的な移動を強化すべきです。そこには多くの大きな恩恵があるからです。人々を貧困から救い出し、生活水準を高め、異文化への好奇心を呼び起こし、社会の進歩を促すことなどがその恩恵です。グローバル化の強化は協力によってのみ実現できます。気候変動や新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックなど、現代の他の大きな課題に取り組む鍵が世界的な協力であるのと同じです。

世界の分断を許せば、さらに大きなものが危険にさらされます。ここ数十年のグローバル化から分かるのは、アイデアや視点の世界的な交流が、今日私たちが享受する進歩やイノベーションにつながり、より良く豊かな世界を生み出したということです。多様性や他の文化・市場へのアクセスがなければ、企業は価値ある機会を逃します。企業は弱体化し、強靭性も損なわれます。その結果、持続可能な未来に向けた解決策を、必要な速さで生み出せなくなるでしょう。

ここ数年の経験が示すことがあるとすれば、強靭性、適応力、協力、そして何より信頼が、私たちの最も貴重な資産だということです。企業、政府、市民社会のそれぞれが、互いに離れるのではなく、より近づいていけるようにする責任を担っています。

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