外部からの圧力やショックによって、国際サプライチェーンの脆弱性が明らかになりました。
将来の衝撃波に対処し、世界貿易を守るため、今すぐサプライチェーンを再構築することが不可欠です。
物流ネットワークをリスクから守るための投資を行い、デジタル化を拡大するとともに、世界貿易がすべての人の利益となるようなインセンティブを設けなければなりません。
現代世界が経済回復を必要とする時があるとすれば、それは今です。壊滅的なパンデミックが2年以上続き、欧州での戦争再発が世界経済に衝撃波をもたらした結果、世界経済の成長見通しは再び不透明になっています。国際通貨基金(IMF)は、世界の成長率は2021年の推定6.1%から、今年と来年には3.6%へと大幅に鈍化すると予測しています。
世界貿易の混乱
世界各地のサプライチェーンで混乱が続いていることも、状況を悪化させています。多くの復旧作業が進められていた一方で、戦争や制裁、中国での新たな新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるロックダウンが、さらなる打撃をもたらしました。その結果は、新車や家電の納車を長く待たされるという不便さにとどまりません。経済の後退が、最も脆弱な社会に引き続き最大の影響を及ぼすという現実的な可能性に直面しています。
パンデミックに直面しても各国経済が底堅さを示し、世界で貿易と企業活動への楽観的な見方が高まっていたことを考えると、この展開はとりわけ残念です。私たちの「貿易の移行」レポートは、エコノミスト・インパクトとの共同制作で、2020年から2021年にかけて、企業リーダーの3分の2以上が輸出の最大50%の増加を実感したことを示しています。

世界の貧困が劇的に減少した主な原動力が世界貿易だったことを考えると、このデータは非常に心強いものでした。世界銀行によると、貿易によって、極度の貧困から脱した人は約10億人に上ります。この30年間だけでのことです。しかし、パンデミックによって、何百万人もの人々が再び極度の貧困に陥る瀬戸際に追い込まれました。だからこそ、貿易の恩恵に最も頼る人々を苦しめる新たな経済ショックを、受け入れることはできませんし、受け入れてはなりません。
官民のリーダーや組織は、世界経済と世界の最貧困層を守るため、貿易を保護すべく緊急に協力しなければなりません。その第一歩は、世界の脆弱なサプライチェーンに影響を与え続ける構造的な問題の解決です。
コンテナ船を例にとると、現在、その5分の1が港湾の混雑で足止めされています。ロックダウンが続く一方、新たな輸送能力はまだ整備されておらず、複数の分野で需給の不均衡も生じています。
幸い、サプライチェーンのレジリエンスを高めるために必要な解決策やツールの多くは、すでにあります。官民が緊密に連携すれば、これらを実行に移せます。
サプライチェーン管理における従来の手法を再評価し、設計段階からレジリエンスを備えるよう、既存のネットワークを再設計しなければなりません。コストだけに偏った現在の考え方では、貿易の流れを維持するために必要なレジリエンスと機動性が優先されません。
世界貿易を立て直す
次の3つの分野に注力すれば、世界貿易を立て直せると私は考えます。
1. リスクをより的確に予測する
ここ数年の出来事は、かつては起こりそうにないと考えられていた事象が、世界のサプライチェーンに甚大な混乱をもたらし得ることを痛感させます。スエズ運河での事故のような局地的な出来事でさえ、私たちが知る世界貿易を混乱させました。しかし、分野横断的な専門知識を生かせば、こうしたリスクを予測し、軽減できます。
データを共有し、リスクのある領域を明らかにするための協力を優先しなければなりません。大きな危機がいつ発生し、どのように展開するかを、より正確に予測できるとしたらどうでしょうか。業界全体で専門知識を生かし、リスクのシナリオや解決策を検討すれば、より幅広いリスクに備えられます。
2. デジタル化を推進する
世界のサプライチェーンを立て直すには、信頼と透明性が必要です。デジタル技術やプラットフォームを活用すれば、リアルタイムのデータを共有できるだけでなく、その機会も得られます。情報セキュリティを高めるブロックチェーンのソリューションから、貨物の可視性を高めるデジタルポータルまで、サプライチェーンの透明性を向上させ、その仕組みをより明確に把握できる技術が次々と登場しています。
企業は、プロセスを効率化し、サプライチェーン全体の可視性を高めるテクノロジーの機会を活用しなければなりません。
3. 誰もが貿易に参加できるようにする
貿易の拡大は、人々を貧困から救い出す最も有力な手段の一つです。「貿易の移行」レポートが示すように、ウクライナでの戦争が始まる前から、パンデミック後の経済回復にはばらつきがありました。「世界物流パスポート」のような取り組みは、輸出業者や輸入業者が国際貿易の恩恵を得やすくすることで、各国政府の貿易分野での緊密な協力や経済の再始動を後押しできます。共通の目標に向けて国境を越えて協力すれば、政府と企業は、機動性とレジリエンスを備えた、より強固な世界貿易コミュニティを築けます。
今こそ、物流ネットワークをリスクから守るために投資し、デジタル化を拡大し、世界貿易がすべての人の利益となるようなインセンティブを設ける時です。こうした取り組みを合わせて進めれば、ショックにただ反応するのではなく、効果的に乗り越えるための備えを整えられます。
ダボスで開催される世界経済フォーラムの2022年年次総会を控え、世界貿易を持続的に強化する機会が訪れています。この年次総会を、世界が最初のロックダウンに入る前から必要とされていた変革を促す場として活用すべきです。
次の経済ショックを待つ余裕は世界にありません。すでに脆弱なサプライチェーンは機能不全に陥り、経済や企業、消費者は苦境に立たされ、世界の最貧困層への影響は誰も想像したくないほど深刻になるでしょう。
だからこそ、今行動しなければなりません。だからこそ、共に貿易を変革しなければなりません。





