世界の指導者たちは国連に集まり、経済的、社会的、環境的に持続可能な、すべての人のための開発をどう実現するかを議論している。議題は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」と、その17の持続可能な開発目標(SDGs)だ。
開発への長い道のり
世界は過去50年間、開発の面で大きな成果を上げてきた。1990年以降だけでも、10億人を超える人々が極度の貧困から抜け出した。人類の歴史上、これほどの規模の進歩を目の当たりにしたことはない。これは、開発途上地域の大半で力強い経済成長をもたらした重要な経済改革と、2000年に合意されたミレニアム開発目標の達成に向けて各国を支援する国際社会の協調した取り組みが組み合わさった成果だ。
インドネシアの女性2人を見てみよう。祖母のスリと、孫娘のトゥティだ。スリの年間所得は1,500米ドルだった。出産時に亡くならなかったとしても、7人の子どものうち1人は1歳になる前に失っていたに違いない。一方、トゥティの年間所得は11,200米ドルで、出産時に命を落とす危険も、子どもを失う危険もほとんどない。
インドネシアは開発の道を歩み続けている。インドネシア政府は、税収の増加によって教育、保健、インフラ分野の開発ニーズに資金を充てる計画を着実に進めている。5年間でGDP比5パーセントポイントの税収増を実現すれば、2030年までにSDGsを達成する軌道に乗ることができる。
しかし、後れを取る国々もある。世界のあまりにも多くの地域で、貧困が経済発展を阻む根本的な障壁となっている。ベナンを例に挙げよう。今日ベナンで生まれる女の子の平均余命は、40年前に生まれたインドネシア人女性と同じだ。当時のインドネシアとベナンの1人当たり所得もほぼ同じである。ベナンがインドネシアの急速な進歩を再現できたとしても、ベナンの女の子たちが2030年のインドネシアの女の子たちと同水準の開発を享受できるようになるのは、2050年になる。
低所得国は、教育、保健、水と衛生、道路、電力への支出を増やす必要がある。
大きな課題
これでは不十分だ。SDGsは、どこで生まれた子どもにも2030年までに公平な機会を確実に与えることを目指している。
IMFは、分析を行い、ベナンのような低所得の開発途上国がSDGsを達成するには何が必要かを検討した。持続可能で包摂的な成長に不可欠な5つの分野、すなわち教育、保健、水と衛生、道路、電力を調べた。
各国がSDGs達成の軌道に乗るには、これらの分野への支出をどれだけ増やす必要があるのだろうか。低所得の開発途上国では、平均してGDP比14パーセントポイントの追加支出が毎年必要だと推計している。低所得の開発途上国49か国全体では、追加支出の必要額は年間約5,200億米ドルに上る。他の機関の推計と同程度の額だ。大幅な新規支出が必要であることは明らかだ。
SDGs達成に必要な支出への対応
では、何世代もの人々の幸福に不可欠なこの大きな課題に、どう取り組めばよいのだろうか。
各国、とりわけ各国政府が主導し、国際機関、政府系援助機関や慈善活動家、民間部門、市民社会も加わって、私たち全員が協調して取り組む必要がある。
まず必要な第一歩として、低所得の開発途上国はSDGs達成に向けた責任を自ら担わなければならない。各国の取り組みでは、マクロ経済運営の強化、税収確保能力の向上、非効率な支出への対処、包摂的成長を損なう腐敗への対応、民間部門が発展できるビジネス環境の整備に重点を置くべきだ。これらの分野での行動は、SDGsの進展に不可欠な成長を支える。IMFは加盟国と緊密に連携し、この改革課題を積極的に後押しする。
第二に、各国には税収を増やす大きな余地がある。多くの国にとって、GDP比で税収を5パーセントポイント引き上げることは、意欲的でありながら妥当な目標だ。その実現には行政面と政策面で強力な改革が必要であり、IMFや他の開発パートナーは重要な支援を担うことができる。
この規模の税収増は、インドネシアのような新興市場国がSDGsを達成する可能性を高めるには十分かもしれない。しかし、ベナンを含む大半の低所得開発途上国の資金需要を満たすには不十分だ。
低所得国には、既存の資源をより有効に活用することに加え、二国間援助国、国際金融機関、慈善活動家、そして民間投資家からの資金支援が必要となる。必要な改革を実施してビジネス環境を改善すれば、こうした投資家はインフラやクリーンエネルギーなどの分野で重要な貢献ができる。各国の開発を支える民間投資の促進こそ、「アフリカとのコンパクト」のような取り組みの目的である。
国際金融市場や貸し手から追加資金を得ることもできる。一般に、資金が高い収益を生む事業に使われなければ、商業条件での借り入れは両刃の剣となる。IMFが近年強調してきたように、債務負担は増大している。現在、低所得の開発途上国の40%が、債務危機の高いリスクにある、またはすでに債務危機に陥っているとIMFと世界銀行は評価している。債務危機は、SDGs達成の進展が依存する経済活動と雇用の拡大を大きく損なうおそれがある。
できれば無償資金協力の形で行われる対外援助は、より貧しい国々の開発努力を支えるうえで、引き続き極めて重要だ。先進国は、援助額を国民総所得の0.7%に近づけるなど、さらなる取り組みができる。また、援助を最も必要としている国々を支援できるよう、援助予算の配分をより的確にすることもできる。多くの先進国で財政状況は厳しいが、的を絞った援助がもたらす経済的な見返りは非常に大きい。貧困削減、雇用創出、安全と安定の向上につながるからだ。
支出拡大を超えて
しかし、課題は開発支出の拡大にとどまらない。
インドネシアの例は、開発と経済成長が互いを強め合うことを示している。より広い課題の重要な側面は、各国が安定した成長を生み出し、持続させようとする環境にある。そのためには、地政学的安定、開かれた貿易、気候変動対策など、さまざまな地球規模の公共財に加え、良好なガバナンスが必要だ。ガバナンスの実現には、腐敗を支える側と求める側の双方への対処が欠かせない。こうした開発の重要な基盤は、SDGsの実現に向けたすべての関係者による協調行動の必要性を示している。
最近亡くなり、今なお悼まれているコフィー・アナンは、かつてこう語った。「政治的意思さえ見いだせれば、私たちには問題に対処する手段も能力もある。」これはSDGsの全課題に当てはまる。すべての子どもに機会を与えるため、その政治的意思を結集しよう。






