利益を再定義する:ESG報告が示す「社会契約」見直しへの動き

Six people around a laptop -- Companies can help drive positive change across the world through ESG reporting.
Companies can help drive positive change across the world through ESG reporting.Image: Unsplash: Windows
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  • 新型コロナウイルス感染症とそれに続く世界的な景気後退は、社会の根深い格差を悪化させ、さらに何百万人もの人々を貧困に追い込みました。

  • しかし、パンデミックは、政府と企業が社会の利益のために協力できることも浮き彫りにしました。

  • 環境・社会・ガバナンス(ESG)報告は、官民協力に基づく新たな「社会契約」への移行を後押しできます。

影響力のある経済学者、ミルトン・フリードマンは、よく知られた言葉でこう述べました。「企業に唯一求められる責任は、資源を活用し、利益を増やすために設計された活動に取り組むことである。」

新型コロナウイルス感染症からの回復を目指し、戦争、気候変動、生態系の破壊、人権問題に取り組む世界において、利益だけを企業の唯一の目標とすることはできません。

新型コロナウイルス感染症が浮き彫りにした社会的格差

世界的な景気後退がもたらした深刻な影響から立ち直ったばかりのところで、パンデミックはすでに深刻だった格差を悪化させ、何百万人もの人々を貧困に追い込みました。女性、貧困層、高齢者、障害のある人々、先住民、移民などの脆弱な立場にある人々が最も大きな打撃を受け、食料、医療、住居へのアクセスをめぐる不安が高まりました。

一方で、富裕層はさらに豊かになり、世界で最も裕福な8人の資産は、最も貧しい人々の半数全体に匹敵するまでになりました。これは約36億人に相当します。

パンデミックの最中、健康、貧困、孤立をめぐる差し迫った危機に直面し、多くの政府はより大きな役割を担うようになりました。過剰な市場行動(2008年の景気後退を招いた無責任な融資など)を抑える規制当局として、あるいはロックダウン中に深刻な経済的困窮に陥った人々に金融支援を提供する主体として、その役割を強化しました。

実際、新型コロナウイルス感染症への対応は、企業の存在意義と官民協力の手本となりました。企業による地域社会への支援から、ワクチンの開発・展開への政府の参加まで、さまざまな取り組みが見られました。

オックスファムによると、2022年には2億6300万人が極度の貧困に直面する可能性がある。
オックスファムによると、2022年には2億6300万人が極度の貧困に直面する可能性がある。
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しかし、消費者、投資家、従業員の間では、これを一時的な対応にとどめず、民間企業がより公正な社会の構築に引き続き大きな役割を果たすべきだという思いが高まっています。目指すのは、単に金銭を得ることを超えた社会です。

また、デジタル時代において、企業は24時間365日の監視にさらされているため、責任から逃れることはできません。たとえば、ロシアによるウクライナ侵攻から数分以内に、企業とロシアとのつながりに関する情報がソーシャルメディアで公開されました。戦争が続くなか、イェール大学のある教授は、ロシアで事業を継続する大手企業の一覧まで公表し、撤退を促す圧力をかけました。

環境・社会・ガバナンス(ESG)の全領域にわたり、企業の二酸化炭素排出量、汚染、廃棄物、多様性の欠如、現代の奴隷労働が明るみに出ています。

新たな「社会契約」を築くためのESG報告の活用

企業は何のために存在するのかという問いは新しい議論ではありませんが、近年、その存在意義がいっそう重要になっています。

3世紀前、哲学者ジャン=ジャック・ルソーは、「社会契約」という概念を示しました。それは、社会全体の利益のために、人々が自らを統治する規則や法律について合意することです。

さらに近年、デジタル革命と「ギグエコノミー」における不安定な労働条件を受け、研究者のミヌーシュ・シャフィクは、企業、政府、労働者の間の新たな社会契約を提唱しています。

彼女は、雇用の安定を高め、経済的ショックや自動化への適応を支援し、資本と人々に対する課税をより公平にすることが急務だと考えています。

これは、トマ・ピケティらによる格差に関する高い評価を得た著作に続くもので、経済的自由主義を退け、企業と国家の一層の協力を促し、労働組合や累進課税などの手段を活用して、強力な規制のもとで持続可能かつ公平な発展という「より高い目標」を掲げるものです。

こうした考えは、利益に反対するものではありません。格差や不安をより適切に解消し、経済成長の恩恵をより公平に分かち合い、将来の世代のために地球を守るために、利益をどのように生み出すかを問うものです。

ESG報告による社会的影響の測定

企業が事業活動の非財務的影響を開示し、より明確な目的に基づいて利益を生み出していることを示し始めるなか、ESG報告の考え方が広がりつつあります。

第一に、組織内およびサプライチェーン全体における二酸化炭素排出量、エネルギー効率、汚染、人権、多様性と包摂を記録することで、ESG目標や価値観への取り組みを示す証拠となります。

ESG報告の要件は、任意から義務へと急速に移行しています。企業には、人々の暮らしをどう改善し、格差にどう取り組み、生活賃金をどう支払い、環境にどう貢献しているかを示すことに加え、負の影響をどう軽減しているかを記録することも求められています。

第二に、経営陣が気候変動への曝露、不適切な企業行動、希少資源の非効率な利用に伴うリスクを理解し、事業のレジリエンス向上に取り組んでいることをステークホルダーに示します。特に資産運用会社は、持続可能な事業戦略の証拠をますます強く求めており、投資判断の際にESG指標を重視しています。

第三に、二酸化炭素排出、汚染、水の使用、森林破壊、生物多様性の損失、労働者の不適切な処遇、地域社会への混乱といった投入・産出の真のコストを認識し、それらを利益、人々、地球から成る「トリプル・ボトムライン」に組み込みます。

こうした「外部性」を、原材料、労働力、仕掛品、売上高など従来の指標と組み合わせることで、企業は自らがもたらす価値をより現実的に算定できます。

持続可能であることは、追加コストを考慮するだけではありません。隠れた価値を引き出すことにもつながります。水を含む天然資源を保全し、廃棄物を減らし、再利用やリサイクルを促進し、生物多様性に貢献する循環型のビジネスモデルを採用できます。

社会に価値を生み出す方法には、雇用の創出、市民生活の改善、税収の確保、インフラ、医療、教育への貢献などもあり、そのすべてを金額で表すことができます。

政府と企業に共通する目的

民間部門とは異なり、政府は従来、健康、教育、住宅、雇用、貧困など、より広範な国民の状況に基づいて効果を測定してきました。企業が金銭的利益の先を見据え、社会的な視点から自らの存在意義を捉えるにつれ、政府と企業の目標はより緊密に一致していくはずです。

もちろん、企業は引き続き起業家精神に突き動かされ、民間資本を原動力としています。しかし、存在意義への関心の高まりと、労働条件、持続可能性、社会的影響に関する政府規制の強化が相まって、政府と企業が共通の目標のもとに結集し、より良く、より平等で、より環境に配慮した社会を実現できる可能性があります。

世界最大の企業は、その規模と影響力により、前向きな変化をもたらす大きな力を持っています。

気候変動という課題の大きさに加え、格差を縮小し、社会不安の高まりを抑える必要性を踏まえると、ESG報告によって実現するこのような「社会契約」は、最終的に、繁栄を生み出しながら人々と地球により優しい資本主義の新時代を告げるかもしれません。

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