パンデミックにより、デジタルヘルスケア・ソリューションの導入が加速した。
このデジタル化への移行は、健康格差の是正に向けた強力な推進力となり得る。
そのためには、医療提供の基本を見直す必要がある。
デジタル革命はCOVID-19以前から十分に進んでいたが、破壊的技術が社会に定着するには、広く導入される必要がある。しかし、パンデミックとその後に実施されたロックダウンは、デジタル・エコシステムへの移行を後押しした。
マッキンゼー・グローバル調査によると、企業は顧客とのやり取り、サプライチェーンとの連携、社内業務のデジタル化を3~4年前倒しで進めた。一方、グローバルデータの調査では、製薬業界の専門家の35%が、COVID-19によって同業界のデジタル変革が5年以上前進したと考えていることが分かった。
デジタル化は、世界経済全体における供給と需要の維持に不可欠であり、取り返しのつかないショックを防いだ。医療分野でも、パンデミックはデジタル化の導入を加速させ、短期間で医療提供に大きな変革をもたらした。
健康格差の是正に向けたデジタルヘルスケアの導入
デジタル化と遠隔医療サービスの導入は、医療サービス提供における公平性を明らかに向上させてきた。デジタル技術によって、医療は事後対応型から予防・先回り型へと変化している。また、従来十分な医療を受けられなかったり、周縁化されたりしてきた地域社会でも、質の高い医療を利用しやすくなっている。
こうした利点に加え、デジタルヘルスケアは、これまでアクセスが困難だった地域社会にも、高度な医療施設と同水準・同品質のサービスを届けられる。デジタルヘルスがもたらす大きな効果は、年齢、ジェンダー、人種を超えた包摂を促し、プライマリ・ヘルスケアの格差を埋めることにある。また、医師を反復作業から解放して診療に集中し、患者と過ごす時間を増やせるため、生産性の向上にもつながる。さらに、個別化医療への移行を後押しする。
デジタル化は連携も促し、それによってデジタルヘルス研究の最前線が広がる。今後、価値を重視したケアを提供し、意味のある成果を通じて健康状態を改善するうえで、デジタルヘルスケアが重要な役割を果たす。ユニバーサル・ヘルスケアの実現への道を開く可能性さえある。
基本を見直す
真の健康格差の是正を実現するには、従来の医療提供モデルを単にデジタル化するだけでなく、統合された医療とテクノロジーの基本を見直す必要がある。十分に代表されていない人々のニーズを評価・理解し、差し迫った問題に対処する、的確で焦点を絞った医療介入を実現する個別設計のデジタル・ソリューションを生み出さなければならない。一つの方法は、特定の集団に共通するニーズを評価し、デジタルツールを用いて課題に対処するソリューションを組み立て、ケアの有効性と効率性を高めることだ。
格差への配慮を忘れない
同時に、デジタル機器・サービスへのアクセスやデジタルリテラシーの障壁が、健康格差の是正を妨げる可能性にも留意する必要がある。世界では2021年、過去最多となる49億人がインターネットを利用した一方、約37%、つまり29億人は依然としてオフラインのままだ。インドも同様の状況で、2021年には61%がインターネットを利用した。2017年にオンラインになった21%から大幅に増えたものの、人口14億人の大国で、なお39%が取り残されている。
健康格差を悪化させるテクノロジーへのアクセス障壁を乗り越えるには、社会的、文化的、経済的な実情が相互にどう関わるかを深く理解する必要がある。格差を埋め、持続可能で包括的な医療ソリューションを築くため、適切な投資、革新的で包摂的なソリューション、政策支援を通じて、接続環境、利用しやすさ、アクセシビリティに取り組む必要がある。
ワクチンの公平性の重要性
世界がパンデミックから抜け出しつつあるなか、新たな変異株は感染の抑制と世界の正常化に引き続き課題をもたらしている。ワクチン接種率を高め、公平性を確保することが急務である。先進国の大半では人口の過半数が接種を済ませているが、多くの発展途上国や低所得国ではそうなっていない。
たとえば、アフリカでは、完全接種を終えた人はわずか7.5%強にとどまる。一方、英国人の55%超がワクチンを3回接種している。ワクチンへの公平なアクセスは、接種を受けた人が100万人増えるごとに、世界のGDPを79億3,000万ドル押し上げ、経済回復も促進する。進展を妨げている要因には、供給や接種能力、物流の問題、ワクチン忌避がある。出荷は増えているものの、供給を最適に配分し、正確に測定・監視するには、依然としてテクノロジーが必要だ。
ワクチン配布を支えるデジタル技術
物流面の課題には、ワクチンの有効性を保つための適切なコールドチェーンの維持、国境を越える出荷の円滑化、広範な人々への適時接種に向けた効率的なスケジュール管理と監視が含まれる。関係者は多岐にわたり、それぞれ縦割りで活動している。デジタル技術は、全員が同じ「仮想」のページを共有できるようにし、サプライチェーンをよく整備された機械のように円滑に動かすソリューションを提供する。
デジタル・サプライチェーン管理システムは、サプライチェーンのあらゆる段階で関係者に状況を可視化し、どのような事態にも迅速かつ柔軟に対応できるようにする。提供されるワクチンの真正性を確保するとともに、ワクチン接種計画に関する一貫性のある、エビデンスに基づいた情報発信を行うことが不可欠だ。そうすることで、COVID-19ワクチン接種を公平かつ100%追跡・把握できる質の高い介入とし、ウイルスの拡散との闘いに役立てられる。
デジタルヘルスケアを推進する次のステップ
インドの人々へのワクチン接種で公平性を実現したように、テクノロジーは健康格差の是正にも役立つ。16億回分のワクチンが接種され、QRコードで検証できるダウンロード可能なデジタル接種証明書も発行されている。今後、健康格差の是正に向けてデジタル技術を活用するには、あらゆる人々のニーズを満たすソリューションを設計するとともに、デジタルリテラシーを向上させる必要がある。その実現には、医療従事者が臨床と技術の両方のスキルを身につけなければならない。デジタル技術は、設計思考に基づく技術を各段階に組み込み、価値を重視した、迅速で透明性の高いケアを推進することで、サプライチェーン全体を変革する可能性を秘めている。
EDISONアライアンスは最近、白書を発表し、デジタルヘルスケア分野のパートナーシップを導く指針を示した。プロジェクトの立ち上げ段階から包摂性を問うこと、デジタル技術を活用した医療の可能性を最大限に生かすこと、そしてコネクテッドケアにおける責任ある包摂的なイノベーションの道筋を描くことを目指している。デジタルヘルス・ソリューションがデジタルヘルスへのアクセスを確保し、健康格差の是正を真に前進させるのは、そのような取り組みがあってこそだ。





