仕事の未来をめぐる議論では、「学びほぐし」が見過ごされてきた
従業員は職務内容や従来の働き方を忘れることを学ばなければならない
従来型の、財務だけに焦点を当てたリーダーシップは時代遅れだ
今や、第4次産業革命が今日のビジネス環境を急速に変えていることは周知の事実です。特に、データや機械学習の進歩により、企業にはテクノロジーを活用した新たな機会がもたらされています。
米国の労働者の5人に1人が、自分の専門スキルはもはや最新ではないと答えています。急速に変化する21世紀の職場に向けて労働力を準備するため、さらに取り組む必要があるのは明らかです。
これまで、仕事の未来をめぐる議論の多くはリスキリングに焦点を当ててきました。もちろん、リスキリングは極めて重要です。同じく重要でありながら、これまで十分に取り上げられてこなかったのが「学びほぐし」という考え方です。具体的には、誰もが次の3つの問いを自らに投げかけなければなりません。
何が時代遅れなのか、どうすれば見極められるでしょうか。
時代遅れのやり方を、どうすれば変革できるでしょうか。
より明るい未来への新たな道を切り開くために、従来のビジネス慣行から逸脱するよう、自分たちにどうすれば挑戦できるでしょうか。
「学びほぐし」とは、かつて「最高水準」だったものを忘れること
第4次産業革命の影響を免れる業界はありません。かつて業界を支配していた企業も、「最高水準」とは何かを再考しなければ、失敗する可能性があります。かつて郵送でDVDを届けるサービスだったNetflixは、今やストリーミング市場とハリウッドの賞レースを席巻しています。その最大の競合で、かつてどこにでもあったBlockbusterは姿を消しました。同様に、GlossierやBonobosのような消費者直販型の小売業者が成長する一方、崇拝の対象だったBarney’sはニューヨークの店舗を閉じようとしています。こうした驚くべき変化の理由は、企業が新たなテクノロジーを取り入れる能力だけにあるのではありません。「最高」であることの意味について、従来の考え方を学びほぐす力にもあります。かつて消費者は高級さや品ぞろえを重視したかもしれませんが、今は自分のニーズやライフスタイルに合わせた製品、サービス、体験を企業に求めています。
過去にうまくいったことを手放すには勇気が必要です。とりわけ、それを習得するのに長い時間がかかったとすればなおさらです。アクセンチュアのCEO、Julie Sweet氏が最近述べたように、こうした勇気ある取り組みはCEO主導でなければ、失敗に終わるでしょう。そのような取り組みを主導したCEOの例として、「10年を代表するビジネスパーソン」と称されたJeff Bezos氏が挙げられます。同氏は、Amazonをオンライン書店から小売・エンターテインメントの一大企業へと変革することを推進しました。
「学びほぐし」とは、自分自身の働き方を手放すこと
従来のビジネス慣行が進化するなか、過去を手放して未来を受け入れたいのであれば、私たちもそれに合わせて進化する備えが必要です。現代のAmazonの倉庫作業員が、棚への補充や商品の取り出しをロボットに任せているように、私たちも皆、自らが引き受けた職務内容を忘れる覚悟をしなければなりません。
新たなデジタルの世界でも効率性は重要ですが、最優先されるのは機敏さです。より機敏になるには、私たち一人ひとりが、仕事の進め方や日々の業務に関する従来の手法を学びほぐす必要があります。
こうした変化は、チームの編成や、将来有望な人材の見極め方、さらには階層の設け方にも、間違いなく影響を及ぼします。最近、世界経済フォーラムがインドで開催したリスキリングに関するセッションでは、絶え間ない変化のなかで成功するために、手法やプロセスをどう「学びほぐす」べきかが議論されました。Salesforceのエグゼクティブ・バイスプレジデントであるEric Loeb氏は、同社のリスキリング向けオープンプラットフォームについて説明するなかで、この姿勢を育むにはハードスキルとソフトスキルの組み合わせが必要だと述べました。革新的な思考と創造的な思考の間で重要なバランスを取ることで、人材をどう定義し、育成するかについて、新たな考えを受け入れられるようになると同氏は指摘しました。
「学びほぐし」には、これまでとは異なるリーダーシップが必要だ
サノフィのCEO、Paul Hudson氏は、「輝かしい瞬間」を生み出すことから離れ、業界全体に持続的な変革をもたらすことに注力する必要性をたびたび強調してきました。こうした長期的な影響を実現するには、消費者や従業員の期待の変化に適応できるリーダーが必要です。大ヒット製品を投入したり、好調な財務実績を次々に上げたりするだけでは、もはや十分ではありません。人々は、そうした一般的な成功指標を超えるリーダーを求めています。
今年だけで、1,300人を超える最高経営責任者が退任しました。その多くは、学びほぐし、21世紀のリーダーシップに求められる要件に適応できなかったことが理由です。退任したCEOには、著名な創業者や個性的な人物も多く含まれています。これは、優れた成果に対する期待の水準を、取締役、消費者、従業員が引き上げていることを示唆しています。CEOは、自分の個人ブランドが地位を守ってくれるという思い込みを学びほぐす必要があります。
第4次産業革命に対し、世界経済フォーラムはどのような取り組みを行っているのでしょうか。
フロンティア技術・イノベーションセンターは、科学者、政策立案者、ビジネスリーダーを結集し、新興技術とその現実世界への影響を理解するための取り組みを進めています。
協働と実験を促すことで、同センターはパートナーが研究成果から生まれたイノベーションを、共通の地球規模の課題に取り組む実用的な応用へとつなげる支援をしています。
CEOが実際の顧客と顔を合わせる機会を最小限に抑えても許される時代は終わりました。ある調査によると、CEOが顧客との面会に費やす時間は、その総時間の約3%にすぎません。しかし、顧客の声に耳を傾け、感情的なつながりを築くCEOは、より高い利益を上げています。このことから、親しみやすさや傾聴力は、今やビジネスリーダーに求められる優先的な資質と考えるべきでしょう。
さらに以前は、ビジネスリーダーの多くに、政治的または社会的な見解を公にしないことが求められていました。しかし今日、CEOは、多様性と包摂、気候変動、グローバル化と地域の雇用創出、銃規制、プライバシーなど、幅広い利害関係者にとって重要な多くの課題について責任を問われます。従業員は、果敢に行動し、自らの価値観を体現するリーダーを求めています。エールフランスのCEO、Anne Rafail氏は、自分たちの枠を超える目標を設定する必要があると述べています。内向きで、しばしば自社中心に陥るリーダーシップの考え方から脱却し、外の世界に変化をもたらす存在になる必要があります。
現代のビジネス環境は、これからも変わり続けるでしょう。新たな機会に心を開き、かつては通用しても今は通用しなくなった働き方を手放すことで、今日のビジネスリーダーは、将来何が待ち受けていても対応できるようになります。





