都市変革の分野では、建築環境がもたらす社会的価値に焦点を当てる必要があります。
官民連携は、都市部の再生に伴う課題の克服に役立ちます。
プロジェクトが地域社会にもたらす幅広い便益を特定するには、明確な報告指標が必要です。
COVID-19パンデミック後、多くの町や都市が、格差と都市の衰退という前例のない課題に直面しています。明るい兆しとして、民間セクターの姿勢にも大きな変化が見られ、こうした問題への取り組みに貢献し、変革をもたらす都市再生を推進する役割を担おうとしています。
パンデミックによって、多くの都市近隣地域が抱える困難が深刻化しました。オンラインショッピングの拡大、柔軟な働き方の増加、手頃な価格の住宅不足、犯罪の増加、インフレの打撃が、いずれも影響を及ぼしています。格差も拡大しました。COVID-19の制限措置で最も大きな打撃を受けた社会の多くの層は、経済の弱体化からも特に大きな影響を受けているためです。
以前から苦境にあった地域社会では、課題がさらに大きくなっています。不動産セクターは通常、投資の商業的・財務的根拠が明確な再開発機会には迅速に対応しますが、問題が根深い場合にそうなることはほとんどありません。
高まる社会的価値への注目
変化しているのは、気候変動対策への長年待ち望まれてきた注目に加え、民間セクターが環境・社会・ガバナンス(ESG)課題全体に実質的に取り組むようになったことです。企業の意思決定において社会的価値への配慮がますます重視され、都市再生プロジェクトの実現可能性を左右する要因が変わりつつあります。
完成した建物の「アウトプット」だけに注目するのではなく、成功したプロジェクトが実現し得る社会的価値の「成果」を生み出すことに関心が寄せられています。地方自治体の財政への圧力が高まり、資金調達費用や建設費の上昇によって資本プロジェクトが危機にさらされるなか、これは時宜を得た動きです。
Nuveen Real Estateは最近、2026年までに不動産運用資産残高(AUM)を150億ドルとすることを目指す、グローバルなインパクト投資プログラムの設立を発表しました。英国では、Schroders Capitalが最近、社会的困窮と格差への対応に加え、財務的リターンの実現を明確な目標とする、地域に根差したインパクト投資戦略を開始しました。投資対象は、手頃な価格の住宅、職場、多目的利用を通じた中心市街地の再活性化プロジェクトです。
同様に、金融サービス・グループのLegal & Generalは、2031年までに英国のウェスト・ミッドランズ地域で都市再生と住宅開発に40億ポンドを投資します。こうした発表は、インパクト投資の世界的な拡大という広範な傾向の一部です。この市場は2020年以降だけで60%超成長し、2022年までにAUMが1兆2,000億ドルに達しました。
持続可能な都市開発を促進するため、世界経済フォーラムは何をしているのでしょうか?
都市は世界の温室効果ガス排出量の75%を占め、世界人口の半数以上が暮らしています。この割合は2050年までに3分の2に達する見込みです。よりクリーンなエネルギーを優先すれば、都市は地球温暖化を2℃未満に抑えるために必要な排出削減の半分以上に貢献できる可能性があり、これはパリ協定に沿うものです。
2050年までにネットゼロで自然にプラスの影響をもたらす都市と地域社会を実現するため、世界経済フォーラムは官民のステークホルダーと連携し、地域の行動を通じて世界的な取り組みを推進するイニシアチブに取り組んでいます。ここではその一部をご紹介します。
ダボス・バウクルトゥール・アライアンス:気候レジリエンス、持続可能性、建築環境におけるサーキュラリティの原則に基づき、建物、インフラ、公共空間の質の高い計画、建設、管理を推進します。詳しくはこちら。
グローバル新モビリティ連合:渋滞と排出を削減し、EVインフラを強化し、都市の移動と配送を変革する新たな解決策を探ります。詳しくはこちら。
都市イノベーション連盟:イノベーターや起業家を新たな市場や機会と結び付け、生活の質と地域経済を再構想し、形づくります。詳しくはこちら。
G20グローバル・スマートシティ・アライアンス:気候レジリエンスを構築し、人々のウェルビーイングを高め、都市や地域社会が直面する最も差し迫った課題に取り組むため、実用的で知見に基づく解決策を加速させます。詳しくはこちら。
旅行・観光の未来:文化遺産を保全し、自然の生態系を守りながら、包摂的で持続可能な経済成長を推進します。詳しくはこちら。。
より持続可能で暮らしやすい都市や地域社会をつくる取り組みに、どのように参加できるかをご覧ください。お問い合わせはこちらこちら。
社会に貢献する投資資金の動員
地域に根差した官民連携、すなわち「PPP」への民間セクターの関心は、公的機関の関与なしには実現できない大規模な開発・投資プロジェクトを可能にする力に支えられています。こうした連携は、民間セクターに公共事業への資金拠出を促すだけのものだと見られることもありますが、その見方では政府の関与がもたらすものを見落としています。
公共セクターは土地やその他の資産を連携に拠出することが多く、利用可能な資金を増やすため、場合によっては有利な金利で借り入れることもできます。資金調達に貢献するだけでなく、公的機関の関与はプロジェクトのリスクを低減し、主要な開発パートナー以外の資金源から追加の民間投資を呼び込む可能性があります。
都市変革に立ちはだかる3つの主要課題
プロジェクトの財務的便益だけでなく社会的便益も考慮することで、公共セクターと民間セクターの隔たりを埋めることができます。しかし、双方で協力への意欲が高まっているとはいえ、依然として3つの主要課題が残っています。
1. 都市再生プロジェクトの実現に要する時間
絶えず変化する政治情勢や定期的な選挙により、プロジェクトの進行中に政府の支援が弱まるリスクがあります。公共機関は、ビジネスパートナーの失敗によって、地域社会に目に見える便益をもたらさないまま、投じた資産を失うのではないかと懸念しています。望ましい成果を実現するには、長期的なビジョン、リーダーシップ、双方の強い関与が必要ですが、これらを法的拘束力のある契約に盛り込むのは困難です。
2. 参加者間でのリスクとリターンの共有
幅広い社会的便益がプロジェクト全体の「収支評価」に含まれるとしても、連携を成り立たせるには民間企業に商業的リターンが必要です。双方が負うリスクと得るリターンを特定して文書化すること、期待どおりの結果が得られなかった場合の対応や紛争解決方法を定めることは、しばしば大きな難題となります。
3. プロジェクトがもたらす非財務的な社会的価値の便益を特定し、実現すること
インフラの例を挙げると、新たな道路計画を実施するための連携では、民間セクターの建設費を賄う一方、契約上の利益を交通事故や死亡者数の減少に連動させることができます。こうすれば、請負業者の利潤追求を、地方自治体が望む社会的成果と一致させられます。
しかし、地域社会全体の健康と生活水準、雇用機会、社会的包摂の向上を目指す長期プロジェクトでは、これを実現するのははるかに困難です。都市変革プロジェクトのこうした基本目標を効果的にモニタリングし、達成を評価する方法を整え、指標を連携協定に盛り込むことが、より幅広い民間投資の可能性を切り開く鍵です。
今後の展望
これらの課題には解決策がありますが、あらゆる状況に当てはまる簡単な答えはありません。再生プロジェクトは一つひとつ異なるため、どのような協定にすべきかを一律に定めることはできません。明るい兆しとして、多様化する連携の枠組みが都市再生プロジェクトに潤沢な投資資金を呼び込み、将来の成功につながる新たなモデルを生み出しています。
Avison Youngは、これらの課題に取り組むタスクフォースの設立に向け、世界経済フォーラムと協力できることを誇りに思います。特に、地方自治体が民間セクターとの連携を成功させるため、自らと再生プロジェクトをどのように位置付けるのが最善かを明らかにしたいと考えています。フォーラムには、必要なさまざまなステークホルダーを結集するのに最適な立場があります。町や都市、地域社会が直面する課題への取り組みに欠かせない社会的価値の成果を実現するこの重要なプロジェクトに、ぜひご参加ください。





