不動産は組織の成功を支える重要な要素となっており、とりわけ人材の獲得と定着において重要です。
エネルギー利用からハイブリッド勤務の拡大まで、不動産ポートフォリオが従業員のニーズを満たしているかを評価することで、財務、技術、従業員の各面でレジリエンスを高められます。
多様で柔軟なポートフォリオを構築すれば、組織は不動産を将来の変化に備えたものとし、大きな混乱にも対応できます。
私たちは絶え間ない変革の時代に生きています。世界各地の組織は、地政学的・経済的不確実性のなかで、複雑かつ絶えず変化する状況に直面しています。
こうした課題に直面すると、企業は柔軟性を求めがちですが、実際には適応力が欠かせません。予期せぬ事態に対処するには、必要に応じて方向転換し、進路を変える姿勢が求められます。そのためには、経営陣と従業員の双方にレジリエンスと革新的な考え方を育む必要があります。
ここで不動産は大きな役割を果たします。不動産は人件費に次ぐ貸借対照表上の最大のコストだとよく言われます。一方で、企業が業務を遂行するうえで中核的な役割も担い、企業文化に影響を与え、コラボレーションを促進し、健康とウェルビーイングを推進します。
建物が組織の成功を支える重要な要素となっていることを、私たちは目の当たりにしてきました。とりわけ人材の獲得と定着において重要です。最近の調査では、オフィス勤務者の50%がパンデミック開始以降に仕事を辞めたことが分かりました。週に3~4日リモート勤務する人は最も離職しやすく、過去2年半で74%が仕事を辞め、79%が今後数か月以内に辞める可能性があると答えています。
従業員が非常に重要であることは言うまでもありませんが、不動産は次の3つの方法でビジネスのレジリエンスを高めることができます。
1. 財務面のレジリエンス
ハイブリッド勤務によって、オフィス空間の使い方は変化しました。不動産ポートフォリオと賃貸借契約を評価し、適切な場所に、適切なサービスや設備を備えた空間が確保されているかを確認することで、業務上の非効率を特定し、運営コストを削減できます。
多くの顧客について見ると、これは必ずしも総床面積を減らすことを意味しません。むしろ、空間の使い方を変え、質を高めることを意味します。調査対象となった企業不動産(CRE)の意思決定者1,000人のうち、77%が、総床面積を拡大するよりも質への投資を優先すると答えました。
賃貸借契約の再交渉やセール・アンド・リースバック戦略は、ポートフォリオの多様化と柔軟性の向上に役立ちます。場合によっては、主にコワーキングやフレキシブルスペースの提供事業者を通じた短期賃貸借契約が、短期的な経済ショックに適応し、耐えるために必要な機動力をもたらします。
現在、エネルギー料金も大きな課題です。既存および新たなデータソースと建築環境に関する知見を組み合わせることで、不要なエネルギー使用を抑えられます。カリフォルニア州では、NOME Capital Partnersが人工知能(AI)とアルゴリズムを活用し、暖房、換気、空調(HVAC)をより効率的に運転することで、複数のテナントが入居するビルのエネルギー使用量を45%削減しました。企業の46%が、今後3年間に施設をよりカーボン効率の高い方法で運営するための投資を前倒しする計画であり、さらに41%は投資水準を維持する予定であることも分かっています。
2. 技術面のレジリエンス
パンデミックは、職場の内外で技術インフラに大きく依存していること、そして技術が期待どおりに機能しなければ事業継続がいかに脆弱になり得るかを示しました。
適切な指標を設定し、建物のデータ項目を測定する技術を組み込むことは、新しい働き方の時代に機動的な意思決定を行ううえで不可欠です。しかし、私たちの調査によると、現在、リアルタイム分析を事業上の意思決定に活用している組織はわずか13%です。一方、企業の56%は、業績と資産のライフサイクル全体を改善するため、近い将来に予測型施設管理の技術を導入する計画です。

こうした技術の導入は、大きな効果をもたらす可能性があります。 Forrester Consultingが実施した総合経済効果調査では、インテリジェンスを活用した施設管理プラットフォームが、運営、資産および作業指示管理、保守、分析を統合し、よりスマートな施設管理を実現することで、238%の投資収益率(ROI)をもたらすことが示されています。
空間の使い方がより動的になり、ポートフォリオの構成が複雑化するなか、企業はコスト削減、ポートフォリオに関する意思決定の最適化、場所を問わない働き方の実現に向け、データとAIを活用しています。例を挙げます。
従業員管理から従業員の能力発揮支援へと移行する企業を、従業員向けテクノロジーが支援します。
勤怠重視から成果重視へと移行する企業を、業務テクノロジーが支援します。
職場テクノロジーは、CRE運営者が健康的で、変化に富み、働く意欲を高める職場環境を、エネルギー効率の向上と自動化を図りながら整備するのに役立ちます。
ポートフォリオ管理テクノロジーは、新たなデータソースを活用して職場を設計し、最適化します。
テクノロジーとデータへの継続的な投資がなければ、企業は業績とレジリエンスの目標達成がより難しくなります。テクノロジー導入はまだ初期段階ですが、CRE分野では2025年までにインテリジェント技術への投資を大幅に強化する必要があります。
3. 従業員のレジリエンス
以前の働き方に戻ることはありません。私たちの調査によると、オフィス勤務者の60%が「ハイブリッド型」の働き方を望み、55%がすでにそうしています。企業は従業員の満足度と生産性を保ちながら、定着を促す戦略を整える必要があります。
JLLの調査によると、生活の質が従業員にとって最優先事項となり、健康とウェルビーイングが僅差で続いています。実際、従業員の59%は、人々の健康を大切にする企業で働くことを期待しています。
安全で支援的な環境を整えることで、従業員は困難な状況により適切に対応し、意欲を保ち、高い成果を維持できます。さらに、身体と心の健康およびウェルビーイングを高めて従業員のレジリエンスを向上させることは、今から2025年までの不動産部門における最優先の戦略課題です。世界規模の「仕事の未来」調査では、意思決定者のほぼ半数が、これを支援する投資を前倒しする計画だと回答しました。
要するに、ビジネスのレジリエンスは、レジリエンスの高い従業員と堅牢な物理的インフラ、そして強固な技術基盤の組み合わせ、すなわち人、場所、技術の融合に支えられています。また、絶え間ない変化を背景に生まれる柔軟な働き方をうまく取り入れることも意味します。言うは易く行うは難しいものですが、変化を受け入れれば、新しいやり方が見つかります。
多様で柔軟なポートフォリオを構築すれば、組織は不動産を将来の変化に備えたものとし、大きな混乱にも対応できます。今求められているのは、何とか生き延びる段階から脱し、レジリエンスをよりよく支えられるよう建物を適応・変革させる方法を見つけることです。現在も将来も、どのような事態にも対応できるようにするためです。





