交通安全の向上が気候変動対策にどう役立つか

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  • アクティブモビリティの促進は、都市交通の脱炭素化の中核をなします。

  • しかし、歩行者や自転車利用者が増えるなか、交通安全を向上させる必要があります。

  • ゼロエミッションの交通と交通死亡事故ゼロには、明確なつながりがあります。

交通事故は、人類が知る最悪の死因の一つです。交通事故では毎年、ダラス、プラハ、タンジールの人口に相当する、130万人を超える人々が命を落としています。低所得国では、結核やHIV/エイズより多くの人々が亡くなっています。

気候変動もまた、人命への脅威として十分に認識されていません。科学者たちは、「高い確信度」で予測しています。その影響により「健康状態の悪化や早死にが大幅に増加する」と。世界保健機関は、2030年から2050年の間に、気候変動に関連する健康影響によって約500万人が命を落とすと推計しています。この数字には、地球温暖化による洪水、山火事、暴風雨などの影響で将来命を落とす人々さえ含まれていません。

人為起源の炭素排出量の約25%は輸送部門によるものです。その4分の3は、自動車、バン、トラック、バス、つまり道路交通から排出されています。自動車の普及には歯止めがかからず、2017年には自動車登録台数が10億台を超えました。予測によっては、2030年までに道路を走る自動車が20億台に達すると見込まれています。中国だけでも、昨年は2,600万台が販売されました。2002年の200万台から大幅な増加です。電気自動車(EV)の売れ行きは好調ですが、燃費の悪いSUVも同様に売れており、EVによる排出削減効果をすべて相殺しています。

パリは4年以内に100%自転車都市を目指す
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道路車両からの排出削減

交通を脱炭素化しなければ、地球温暖化を1.5℃未満に抑えることはできません。道路車両からの排出削減は、排出ゼロのモビリティを実現するための最重要課題です。自動車は非常に柔軟な移動手段であり、多くの用途や利用者にとって、今後も長く欠かせない存在であり続けるでしょう。しかし私たちは自動車に過度に依存するようになり、自動車による個人移動がもたらす負のコスト、すなわち何百万人もの交通事故死者や、交通が気候変動に与える影響に十分向き合ってきませんでした。

都市は、炭素集約度の低い移動を実現するための試金石です。「15分都市」のような考え方が広がっています。仕事、学校、店、診療所など、日々のニーズや機会に徒歩や自転車でアクセスできるようにし、自動車での移動を避けるというものです。

都市の高密度化は、移動の回数と距離を減らすため、脱炭素化に役立ちます。しかし、人口密度が高いと、歩行者や自転車利用者にとって生活がより危険になることもあります。ITFの「Safer City Streets」ネットワークに参加する、1平方キロメートル当たりの住民が1万人を超える6都市では、2010~2019年の交通事故死者の81%が歩行者、自転車利用者、オートバイ利用者など、交通弱者でした。

世界経済フォーラムは、持続可能で包摂的なモビリティシステムをどのように推進しているのでしょうか。

世界経済フォーラムの「モビリティの未来を形作るプラットフォーム」は、航空宇宙・ドローン、自動車・新たなモビリティ、航空旅行・観光、サプライチェーン・輸送の4業界にまたがって活動しています。モビリティの未来を安全でクリーン、かつ包摂的なものにすることを目指しています。

  • 「Clean Skies for Tomorrow Coalition」を通じて、100社を超える企業が協力し、世界の航空業界で持続可能な航空燃料の利用率を10%にすることを目指しています。

  • 世界経済フォーラムはユニセフと協力し、大手海運会社、航空会社、物流企業とともに憲章を策定しました。COVAXによる世界各地の脆弱な立場にある地域への新型コロナワクチン10億回分超の供給を支援するものです。

  • Road Freight Zero ProjectとP4G-Getting to Zero Coalitionは、成果を生み出し、貨物輸送のゼロエミッション化を加速する理由やコスト、機会を明らかにしてきました。

  • 「Medicine from the Sky」イニシアチブは、ドローンでワクチンを配送し、インドの遠隔地に医薬品も届けています。これまでに300回を超える実証試験に成功しました。

  • 世界経済フォーラムのTarget True Zeroイニシアチブは、電動飛行技術と水素飛行技術を活用し、航空分野におけるゼロエミッション技術の導入と普及の加速に取り組んでいます。

  • 世界経済フォーラムは、ロサンゼルス市、連邦航空局、NASAと協力して、「Principles of the Urban Sky」を策定し、世界各地の都市で都市型航空モビリティの導入を支援しています。

  • 世界経済フォーラムは、「Space Sustainability Rating」の策定を主導し、宇宙ミッションの管理と軌道上のデブリ対策について、より安全で持続可能な取り組みを促進しています。

  • Circular Cars Initiativeは、自動車のサーキュラリティに関する政策課題の形成に寄与しています。欧州委員会およびゼロエミッション車移行評議会参加国から支持を得たことを受け、現在は中国の政策ロードマップの支援も要請されています。

  • Moving Indiaネットワークは政策立案者と協力し、電気自動車の製造政策を推進するとともに、ゼロエミッションの道路貨物車両の普及を促し、移行に必要な資金を確保しています。

  • 「Urban Mobility Scorecards」イニシアチブは、世界経済フォーラムのGlobal New Mobility Coalitionが主導し、モビリティ事業者と都市を結び付け、持続可能な都市型モビリティシステムへの移行状況を比較・評価しています。

お問い合わせいただければ、参加方法について詳しくご案内します。

行動の変化はリスクと結び付いている

新型コロナウイルス感染症のパンデミックが引き起こした、巨大で望まぬモビリティの実験は、都市住民が徒歩や自転車での移動を促され得ることを示しました。しかし、人々は安全を優先します。通学路が歩きにくかったり危険だったりすれば、親は子どもを車で送ります。通勤路に危険があり、神経をすり減らすようなら、通勤者は自転車を使いません。同様に、2020~2021年に多くの人が歩道や臨時の自転車レーンを利用した主な理由は、ウイルスを避けて健康を守ることでした。

これは政策立案者にとって重要な教訓です。安全でストレスのない移動体験を整えれば、移動手段を自家用車からアクティブモビリティ(徒歩や自転車)へと移行させられます。

しかし、統計は現状がそうなっていないことを明確に示しています。近年、交通安全が向上した地域では、その恩恵は車の乗員に偏っていました。国際交通フォーラム(ITF)がデータを検証済みの34か国では、2010~2019年の10年間に、車内での事故死者数が平均19%減少しました。歩行者の死亡者数はわずか3%、自転車利用者の事故死者数はわずか1%の減少にとどまりました。

脱炭素のモビリティと安全なモビリティは両立する

輸送の炭素依存からの脱却は、低炭素またはゼロ炭素の移動手段を利用する人々のために、安全な空間をつくることと並行して進める必要があります。朗報は、脱炭素のモビリティと安全なモビリティは両立するということです。

ITFが開発した新たな交通安全指標は、さまざまな交通政策のもとで交通弱者の事故リスクがどう変化するかを評価します。この指標は、意欲的な脱炭素化の取り組みが交通安全の向上にもつながることを示唆しています。道路を走る車が減り、制限速度が下がり、公共交通機関が充実し、アクティブモビリティのためのインフラが改善されるためです。したがって、例えば2030年や2040年の道路は、現行政策が続いた場合よりもはるかに安全になります。グラフに示された2つの傾向の大きな差が、それを物語っています。

さまざまな脱炭素化政策が交通事故リスクに与える影響。出典:ITF

ただし、この指標は、「ITF Transport Outlook 2023」で初めて公表される予定ですが、ゼロカーボン交通への取り組みを強化しても、衝突事故のリスクは上昇し続けることも示しています。人口がますます増える都市では、道路空間をめぐる競合が絶えず激しくなるためです。世界全体で見ると、事故リスクにさらされる度合いは2030年までに現在より平均60%高まり、2040年までに2倍になります。

より安全で持続可能なモビリティ

輸送部門全体の気候変動対策では、持続可能なモビリティを今日より安全にする必要があります。安全性を高める方法を示す優れた事例があります。ブラジルの都市フォルタレザでは、「Lively Sidewalk(にぎわいのある歩道)」プログラムにより、塗料、ベンチ、車止め、プランターなど、安価で一般的な資材を使って、歩道さえなかった場所に歩行者空間を整備しました。その結果、車道を歩く人は92%減少しました。

ポーランドの首都ワルシャワは、2020年までの10年間で交通事故死者数を半減させました。国と自治体による政策を戦略的に組み合わせ、国連が掲げた目標を達成しました。また、ヘルシンキとオスロは、それぞれ独自の政策を組み合わせ、2019年に歩行者または自転車利用者の交通事故死者数をゼロにしました。これは、交通事故死をなくすという目標、すなわち「ビジョン・ゼロ」が夢物語ではなく、実現可能な目標であることを示しています。

気候変動も、世界の道路で続く惨事も、食い止めるのは容易ではありません。それでも私は、排出ゼロのモビリティと交通死亡事故ゼロという二つのビジョンが実現することを願っています。両者が一体の課題だと理解し、今すぐ行動すれば、より早く実現できるでしょう。

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