世界は、経済、社会、地政学の各分野で長期化する混乱に直面しています。
ビジネスリーダーには、今日の予測困難な環境で効果的に事業を運営する方法を学ぶ以外に選択肢はありません。
不確実な世界に正面から立ち向かうには、企業は大局的に考え、明確な目的を持ち、短期的な利益だけでなく長期的な価値創造に重点を置いた成長戦略を策定する必要があります。
過去3年間、COVID-19のパンデミックから急激なインフレ、ウクライナでの戦争勃発に至るまで、相次ぐショックによって世界経済は様変わりしました。気候変動の進行も加速し続けており、人命を奪い、甚大な経済的損害をもたらす異常気象が発生しています。
世界は、経済、社会、地政学の各分野で長期化する混乱に直面し、不確実性と変動性はここ数十年で最も高い水準に達しています。ビジネスリーダーは、次々と現れる新たな課題に絶えず向き合わなければなりません。
不確実性に正面から向き合うビジネスリーダー
一つ明らかなのは、かつての「正常な状態」には戻らないということです。ビジネスリーダーには、今日の予測困難な環境で効果的に事業を運営する方法を学ぶ以外に選択肢はありません。
成功するビジネスリーダーは、企業には地球最大の課題の解決に積極的な役割を果たす、これまで以上に大きな責任があると認識しています。そのためには、不確実な世界に向き合い、レジリエンスを確保し、大局的に考え、短期的な利益だけでなく長期的な価値創造に重点を置いた、明確な目的を持つ成長戦略を策定する必要があります。
ビジネスリーダーが将来に備えるため、今すぐ取れる行動にはどのようなものがあるでしょうか。
1. ステークホルダーとの信頼を築く
信頼があってこそ、企業は事業を営むことができます。人々が、商品を購入する企業、働く企業、投資する企業を信頼したいと考えるのは自然なことです。企業は、信頼を得るうえで重要なのは正しい行動を取ることだと認識すべきです。エデルマンの「2020年信頼度調査」によると、80%の人々がブランドに「社会の問題を解決する」ことを期待しています。
信頼の構築に成功するには、企業はこの課題に対して何をしているのかを正確に伝える必要があります。そこで重要になるのが企業報告です。財務・非財務の両指標に関する報告は、目標の設定、進捗の把握、従業員、知的資産、技術的ツールなど、企業の価値を生み出す要因への理解を深めるうえで大きな助けとなります。最終的に、報告によって欠かせない透明性が確保され、ステークホルダーの信頼と、企業およびその戦略への賛同が築かれます。
2. 価値を重視したサステナビリティを組み込む
サステナビリティは、今日存在する最大の企業成長機会と言っても過言ではありません。とりわけ、低炭素経済への移行は、企業にとって次のような分野で収益を生み出す魅力的な機会となります。グリーンイノベーション、クリーンテック、再生可能エネルギーです。
EYが最近、500社を対象に実施した調査によると、約70%の企業が、気候変動対策から予想を上回る財務リターンを得ていました。環境分野をリードすることは魅力的な機会をもたらします。企業はサステナビリティをコストではなく価値の源泉と捉え、そのビジネス上の合理性を受け入れる必要があります。
3. 貿易とサプライチェーンを見直す
COVID-19のパンデミックが始まって以来、サプライチェーンの混乱はビジネス環境における恒常的な問題となっています。さらに最近では、ウクライナでの戦争により、サプライチェーンが寸断され、食品、繊維、自動車部品、半導体など、さまざまな製品の供給に支障が生じています。レジリエンスを高めるには、企業はサプライモデルの基本原則を抜本的に見直す必要があります。つまり、単一の供給地域への依存を減らし、可能な限りプロセスを自動化し、クラウド技術を活用してサプライチェーン全体の簡素化と可視性向上を図ることです。
消費者が商品やサービスの原産地について、より高い透明性を求めるなか、個々のサプライヤーのサステナビリティに関する実績を事前に評価し、継続的に監視することも不可欠です。
4. テクノロジーへの投資を止めない
世界的なパンデミックが示したように、テクノロジーは機敏性と危機へのレジリエンスを支える重要な要素です。テクノロジーのおかげで、何百万人もの人々が自宅で安全に働き、外出せずに商品やサービスを購入できました。今後、人工知能、データ分析、モノのインターネット、仮想現実などの新興技術は、企業の存続に不可欠となるでしょう。こうした技術により、企業は新たなビジネスモデルを構築し、より有益な知見を得て、コストをより効果的に管理し、変化する顧客の期待に迅速に対応できます。
5. 事業の中心に人を据える
人材は、ほぼすべての企業にとって、成長を促す重要な原動力であり、好況時も不況時もその重要性は変わりません。現在の人材獲得競争は、企業にとって人材がいかに重要かを示しています。そのためリーダーは、多様性、公平性、包摂性、人材のスキル向上、労働力計画、人材の採用と定着、業績管理と報酬などの課題に焦点を当て、事業戦略の中心に人を据えなければなりません。
機敏性とイノベーションは、企業が変化に適応する力となります。そのためリーダーは、従業員の起業家精神を育むことも目指すべきです。従業員が計算されたリスクを取れるよう支援し、失敗をいとわない姿勢が成功に欠かせない要素となる環境をつくることが必要です。
今後は?
次の危機がいつ起きるのか、誰がどのような影響を受けるのかを正確に知る人はいません。確かなのは、いずれ危機が訪れるということです。企業は、絶え間ない不確実性と変動性のなかで、備えを整えるためにできる限りのことをしなければなりません。
成功の定義は変わり始めています。成長は持続可能でなければならず、従業員、株主、そして社会全体を含むすべてのステークホルダーに利益をもたらす価値を生み出さなければなりません。こうした状況のなかで、CEOをはじめとするリーダーは立ち止まり、一歩引いて、事業の意義と目的を再評価する必要があります。その目的は、より広い世界にプラスの影響をもたらすものでなければなりません。
目的の力を生かし、長期的な価値創造を重視する、より持続可能な未来に向けて戦略を整えることで、企業は最も困難で激動する時代を通じても成長への道筋を描くことができます。




