昨年は、文章やコードを生成するChatGPTなどのAIツールが大きな進歩を遂げました。
こうした進歩を受け、AIをどのように活用し、普及させるかについて議論が広がっています。
より多くの業界がこのテクノロジーを取り入れるなか、システムの包摂性と倫理性を確保する必要があります。
2022年には、人工知能(AI)において目を見張るような進展がいくつもありました。こうした進歩によって、現在のAI(特化型AI)の限界が押し広げられ、人間の思考力や問題解決能力をより速く、より正確に模倣できる機械である汎用人工知能(AGI)という究極の目標に近づいていると考える人もいます。
2022年の数多くの進展のうち、注目すべき4つの飛躍的進歩があります。これらは2023年以降、責任ある設計・開発やAIの活用をめぐる議論においても、社会にもたらす変革の力においても重要な意味を持つでしょう。
2022年の主なAIの進展とは何だったのでしょうか。
まず登場したのは、言葉による指示から画像を生成できるAI、DALL-Eです。このツールを使って楽しみ、新しい方法でデザインできる可能性を喜んだ人は多くいました。一方で、AIが人間の創造性に取って代わるのではないかと懸念する人もいました。さらに、DALL-Eはウェブ上の写真を取り込むため、オンラインでの存在感が乏しい文化がモデルから取り残され、世界での認知がさらに低下するのではないかという懸念もあります。
次に登場したのが、DALL-Eの「文章とコードを扱う兄弟」ともいえるChatGPTです。前者が新しい画像を生成する一方、後者は文章やコードを生成します。生成される文章には、新聞記事、学生のエッセイ、スピーチ、科学論文などがあります。ChatGPTも、ユーザーが入力した文章による指示に基づいて生成します。DALL-Eをめぐる懸念はChatGPTにも当てはまります。ChatGPTは「ブラックボックス」であり、どのように動作するのか私たちには分かりません。しかし、ChatGPTが効率を高め、適切に使われるなら、非常に重要なツールになることは間違いありません。
さらに、AI開発企業のDeepMindは、非常に優れたコーディング能力を持つアルゴリズムを開発しました。AlphaCodeというシステムは、平均的な難易度の競技会で人間のコーダーの72%を上回ることができ、最近では人間が参加する非常に難度の高いコーディング大会で、出題された問題の約30%を解きました。この数字は低く見えるかもしれませんが、このアルゴリズムは指数関数的に学習していくでしょう。今やあらゆる人間の囲碁棋士に勝てるAlphaGoを思い浮かべてください。AIがプログラミングを完全に引き継ぐ可能性は低いものの、コーディングに必要な人間の数は大幅に減るでしょう。
これまでの進展がどれも並外れたものであるのは確かですが、Gatoの登場はまさに締めくくりを飾るものです。Gatoは、開発元のDeepMindが「汎用エージェント」と表現するものであり、重要な進展です。現在の強力なアルゴリズムは、1つか2つのことを非常に優れた水準でこなしますが、Gatoは多くのことができます。アタリのゲーム、画像へのタイトル付け、ユーザーとの会話、ロボットアームを使ったブロックの積み上げなどが可能です。この進展により、1つのタスクに特化したAIから、複数のタスクをこなせるAIの領域へと移行します。
2022年のAIの進展は、2023年の大きな前進と改良の基盤を築きました。とりわけ、AIをどのように活用し、普及させるのが最善かについて、議論を始める土台となりました。
これまでのところ、政府が規制を整備するのを民間部門が待つなか、企業による導入は予想を下回っています。EU AI法や、米国のAI権利章典、中国の規制などの規制枠組みが施行されれば、この状況は変わる可能性があります。
2023年には、どのようなAIの進歩が見られるでしょうか。
2023年には、テクノロジー業界に限らず、いくつもの業界がこのテクノロジーをさらに取り入れると予想されます。たとえば、高齢者介護や医療の分野では、多くの前向きな進歩が見られるでしょう。X線画像の読影などを通じたケアの向上や、管理システムの改善などが含まれ、コストの削減や定期的な治療の確保をはじめ、さまざまな効果が期待されます。製造業、製薬、モビリティ、人事などの分野でもAIの進展が見られるでしょう。
しかし、グローバルサウスの多くの企業は中小企業であり、AIを導入するための資金、コンピューターで処理できるデータ、スキルを持ち合わせていません。南北格差をさらに拡大させないよう、注意が必要です。
今年は、社会でAIをどのように活用するのが最善かについて、対話がさらに広がることも期待されます。分野によっては、難しい議論が必要になります。たとえば、法執行機関はAI搭載の顔認識システムの利用を増やしており、プライバシーや監視をめぐる広範な懸念を招いています。AI搭載兵器も民間の場で配備されています。たとえばサンフランシスコ市は、致死性のAIロボットの使用をめぐる議論について、法執行当局から圧力を受けました。ほどなく大きな反発が起き、市当局は提案を撤回しましたが、この問題は今も議論の対象であり、すべての市民が意見を述べるべき事柄です。
したがって、国連地域間犯罪・司法研究所とINTERPOLイノベーションセンターが実施している調査のような取り組みは、一般市民が議論に参加するためのよい第一歩です。この調査では、警察によるAIの利用について、市民の意見を尋ねています。寄せられた意見は、法執行機関がこの複雑な課題に慎重に取り組むための革新的かつ実用的なガイド、「法執行における責任あるAIイノベーションのためのツールキット」の開発に活用されます。
何よりも、2023年における根本的な問いは、AIシステムが正確で効率的かどうかではなく、どのように、そしてどの程度活用すべきかということです。





