インド血清研究所(SII)の最高経営責任者アダール・プーナワラ氏は、ダボスで開催された世界経済フォーラムの2023年年次総会で、ワクチンの公平性について語りました。
パンデミックの間、「世界最大のワクチンメーカー」を率いた同氏は、将来のアウトブレイクに対処するための多国間組織間の協力に、今も期待を寄せています。
年次総会では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が引き続き議題となり、登壇者らは警戒を怠らないよう呼びかけています。
「私たちは 人々への啓発を続け、ワクチンへのためらいを払拭する必要があります」と、インド血清研究所(SII)の最高経営責任者アダール・プーナワラ氏は、スイスのダボスで世界経済フォーラムに語りました。
同氏は保健分野の主要な関係者と会合を重ね、ワクチンの公平性を前進させ、規制基準の世界的な調和を推進しています。それによって、同氏のようなワクチンメーカーが、より適時に効果を発揮できるようになります。
「現在はWHOの承認プロセスを経ています。各国がそれぞれ独自の手続きや臨床試験を求めることは望ましくありません」と同氏は述べます。「共通の基準を受け入れられるようにしなければなりません。」
プーナワラ氏は、パンデミック協定の「ゼロ草案」が、世界保健機関(WHO)加盟国による策定作業を経て、ワクチン証明書や承認済み臨床試験手順など、重大な局面で遅れを招きかねない課題について国際合意につながることを期待しています。
「例えば、欧州でワクチンが承認されたなら、米国でも承認されるべきです」と同氏は述べます。「世界にはできるだけ多くの選択肢があり、製造技術にも幅広くアクセスできるべきです。」
「世界で利用できる多くのイノベーションにアクセスできるのに、なぜワクチンを1つか2つに限るのでしょうか。」
「ウイルスはまだ私たちを去っていない」
年次総会では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘いが引き続き議題となり、登壇者らは警戒を怠らないよう呼びかけています。
「世界の一部では『COVID-19はもう終わった』と言われています。もちろん、ウイルスはまだ私たちを去っていません。政策立案者に、新たな変異株が今も確認されていることを理解してもらう必要があります」と、ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院の学部長ミシェル・ウィリアムズ氏は、「パンデミックの現状」と題したセッションで聴衆に語りました。
「これまで、非常に重症化するものや、既存の免疫を回避できるものが現れなかったのは幸運でした。」

現在、新たなサブ変異株が出現していることについて、感染力が高まり、一部の抗体を回避する能力があるため、懸念が広がっています。
プーナワラ氏は、発症を防ぎ感染伝播を最小限に抑える第2世代ワクチンが近い将来開発されるとは考えていません。「鼻腔ワクチンの中には、感染伝播を防ぎ、病原体が体内に入るのを阻止できるものが出てくると期待されています。しかし、それを示す有力なデータは、どのワクチンについてもまだ見たことがありません」と同氏は述べます。
プーナワラ氏は、新型コロナウイルス感染症は最終的にインフルエンザのような病気になると予想しており、「こうした変異株に対処するために追加接種を受けること」が最善策だと述べています。
「今は備えができています」
「検査や診断の面で 今は備えができています。そのため、かつてのように世界の舞台や経済を再び混乱させることはないと思います」と同氏は述べます。
「パンデミックの間、各国の保健システムには多額の投資が行われました。今後、別のアウトブレイクが起きた場合にも、確実に十分な備えとなるでしょう。」
同氏はオックスフォード大学のエボラワクチンを例に挙げます。このワクチンについて、SIIはわずか60日間で4万回分を超える量を製造し、ウガンダに出荷しました。「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)と連携し、3カ月足らずでワクチンを製造しました。」
「今では多国間組織と足並みをそろえて、アウトブレイクに対処し、後手に回るのではなく先手を打てるよう取り組んでいます。今後の展開をとても楽観視しています。」
「世界は常にインドに依存する」
パンデミックの間、プーナワラ氏はインド西部プネーにある同社の広大な製造拠点の生産能力を拡大してきました。こうした取り組みが、インドの「世界の薬局」としての評価を強めたと同氏は述べます。
「インドでは現在、さまざまなワクチンメーカーを合わせて100億回分相当のワクチン生産能力があり、インド血清研究所は約40億回分を担っています。」
「インドから米国へワクチンを出荷したのは初めてでした。ノババックスのヌバキソビッドです。品質と生産規模、そして何より効率性を実証し、その効率性を費用対効果として提供しています。それによってアクセスが大きく広がります。
「だから、形はどうあれ、世界はこれからもインドに依存し、インドを頼りにすることになると思います。」
女性の子宮頸がんを予防するHPVワクチンの発売
プーナワラ氏は現在、SIIの製品を拡充し、世界に届けるために取り組んでいます。
「6年から7年ほどの開発を経て、女性の子宮頸がんを予防するHPVワクチンを発売できることを、とても楽しみにしています」と同氏は述べます。インド初の子宮頸がんワクチンとみられ、近く市場に投入される予定だと、ロイター通信は昨年末に報じました。
プーナワラ氏によると、このワクチンは手頃な価格で提供され、市場の既存の供給不足を解消するため、大規模に展開される予定です。
「世界が待ち望んでいた、アフリカ大陸向けの高い有効性を持つマラリアワクチンもあります。現在もワクチンはありますが、私たちが話しているのはオックスフォード大学と共同開発しているワクチンです」と同氏は述べます。
「有効率は77%を超え、優れた結果が確認されています。まもなく公表される予定です。」
世界経済フォーラムは、医療の現状をどのように改善しているのでしょうか。
ヘルスケアセンターは、アクセス、公平性、レジリエンス、備えなど、世界各地の保健システムが直面する課題への理解を深めるため、リーダーたちをつないでいます。
信頼に基づく対話と官民連携を通じて、同センターはパートナーが共通の優先課題に取り組み、健康上の成果を高めるための協調行動を進められるよう支援しています。
では、今年のダボス会議に対する同氏の期待は何でしょうか。「ダボスでは協力を通じて多くの素晴らしい成果が生まれました。例えば、GAVIは20年前にダボスで誕生しました。
「確かに、意思決定者は今ここにいます。あとは行動に移すだけです。それが実現することを願っています。」




