スペインのペドロ・サンチェス首相は、1月17日火曜日、世界経済フォーラム年次総会のダボス会合で全体会合の演説を行う。
世界は、COVID-19パンデミック、ウクライナ戦争、食料危機、エネルギー危機という4つの主な脅威に直面していると述べる。
スペインは15万人を超えるウクライナ難民を受け入れ、欧州のエネルギー安全保障と途上国の食料安全保障を確保するために役割を果たすと述べる。
指導者たちに、民主主義への支援を倍増し、相互につながる持続可能な生産チェーンを構築し、人々の幸福を重視しながら、政治的・社会的に分断された社会を再建するよう呼びかける。
ダボスに戻ってこられたことは、長く待ち望まれていた日常への回帰のしるしです。会場で見える、マスクを外した皆さんの顔もそうです。しかし、今日はまったく普通には感じられませんね。世界は揺れています。わずか3年前には確かだと思われていたことの多くが、今では消え去りました。それに取って代わるはずの新たな確かさも、まだ現れていません。何かが壊れ、世界が暗い道へ向かっていると感じている市民は少なくありません。
この悲惨な遠回りを招いた主犯がプーチンであることに、疑いの余地はありません。世界がひどいパンデミックのさなかにあり、最も苦しい時期を迎えていたとき、彼はルールに基づく国際秩序を攻撃しました。それは、彼自身の弱さを示すだけの残虐な行為です。
しかし、少しの間彼のことは脇に置き、自分たちに問いかけてみてもよいのではないでしょうか。私たちはどうでしょう。私たちも過ちを犯してきたのではないでしょうか。プーチンが弱体化させ、破壊しようとしている、開放性、ルール、協力に基づく国際秩序を守るために、私たちはできることをすべて行っているでしょうか。
確かに、COVID-19とウクライナ侵攻を経て、多くの国際的な同盟関係は強化されました。特に防衛分野でそうです。しかし、人と物の双方に対して国境が一層閉ざされ、多くの多国間機関への支援が薄れているのも事実ではないでしょうか。不平等や社会的不公正と闘い、プーチンのような新たな独裁的指導者の出現を防ぐために、私たちは十分なことをしているでしょうか。同じくらい重要なこととして、気候変動に取り組むためにできることをすべて行っているでしょうか。それとも、この危機を口実に、グリーン移行を遅らせているのでしょうか。
今こそ、そしてここダボスこそ、こうした問いを自分たちに投げかけるべき時と場所だと思います。そして、どれか一つでも答えが「いいえ」なら、目を覚ます必要があると認識すべきです。懸かっているものは非常に大きいからです。次の四半期における経済の実績をはるかに超えるものが懸かっています。
私たちが今闘っているのは、プーチンやエネルギー不足だけではありません。恐怖、不信、利己主義、外国人嫌悪、環境破壊とも闘っています。その結果は、今後何十年にもわたる西側諸国とその先の世界の暮らしを左右するでしょう。
だからこそ、私たちはもっと行動すべきだと思います。この機会を生かし、国際的な枠組みを再構築して強化し、リベラルで民主的な価値観への決意を新たにし、気候変動や不平等といった現代の大きな課題を効果的に克服できる新たなルールとリーダーシップを形づくるべきです。
今でなければ、いつでしょう。私たちでなければ、誰がするのでしょう。
世界が直面する4つの脅威
演説をする私にできるのは、言葉を差し出すことだけです。しかし、言葉は力あるものになり得ます。約束にもなり得ます。私の約束はこうです。 スペインはこの課題に立ち向かいます。私の国、私の政府は、分断や短期主義ではなく、社会的な協力と環境への責任に導かれる世界を目指す国々とともに、最前線に立ちます。
そしてスペインは、世界が現在直面している4つの主な脅威に積極的に取り組むことで、それを実現します。
第一に、パンデミックです。残念ながら、まだ終わっていません。スペインは、COVID-19ワクチンを世界で5番目に多く寄付した国で、寄付量は7,000万回分を超えます。南半球の国々が北半球と同じようにワクチンを入手できるようになるまで、寄付を続けます。
第二に、自由を求めて闘うウクライナへの支援を続けます。昨年、スペインはウクライナ国民のために、史上最大規模の人道支援パッケージを創設し、3億ユーロを超える軍事支援を提供し、15万人を超えるウクライナ難民を受け入れました。プーチンが軍を撤退させ、ウクライナがかつてのような独立し繁栄した国として再び歩み出すまで、この支援を止めることはありません。ゼレンスキー大統領、私たちはあなたを支えます。
第三に、スペインが取り組みを続ける国際的な脅威、エネルギー危機です。昨年、私の国は電力消費を歴史的平均と比べて7.5%、天然ガス消費を23%自主的に削減しました。また、能力の限界までEU向けの電力とガスの輸出を増やし、欧州の安定供給に貢献しました。海外からの天然ガス輸入を倍増させて実現したものです。さらに、太陽光発電量を前年より33%増加させました。その結果、スペインは風力発電量で世界第5位、再生可能エネルギー発電量で第8位となっています。
これからも欧州の同盟国を支援します。相互接続性を高め、公正な規制とクリーンエネルギーを促進することで、この危機を遅延ではなくグリーン移行の加速につなげます。
2023年には、再生可能エネルギーの生産能力を大幅に拡大し続け、地中海初のグリーン水素パイプラインの建設を進めます。また、最大8万5,000人の雇用を生み、世界最大の海運会社の将来の船舶の燃料となる、グリーンメタノールの大規模プラント2基の建設に着手します。
スペインには、こうしたエネルギーの開発に非常に恵まれた条件があります。そのため、世界中のグリーン水素プロジェクトの20%がすでにスペインで進められています。
最後に、食料安全保障への取り組みも強化します。ご存じのように、世界は前例のない規模の飢餓危機に直面しています。わずか2年で、飢餓に苦しむ人、またはその瀬戸際にいる人の数は、53か国の1億3,500万人から、82か国の3億4,500万人に増えました。多くの途上国では、供給不足により人々が飢餓に瀕しています。多くの先進国でも、価格高騰のため、食卓に十分な食べ物を並べるのに苦労する人が増えています。行動が必要です。
国土の規模にかかわらず、スペインは世界有数の食料生産国であり、EU最大の有機農産物生産国です。そのため、食料供給網への支援を続けます。環境の持続可能性との均衡を保ちながら農業生産を拡大し、官民のさまざまな協力プロジェクトを通じて、途上国における近代農業の発展を促進します。
しかし、私たちにできることはまだあります。
民主主義への支援を倍増する
冷戦終結以来、国際秩序を支えてきたリベラルなルールと原則を破壊しようとするプーチンとその同盟者の企てを確実に阻止する最善の方法は、まさにそのルールと原則への支援を倍増することです。言葉だけでなく、行動で示すのです。
だからこそ、スペインは多国間主義への支援を拡大してきましたし、これからも拡大し続けます。今私たちが経験しているような不確実で困難な時期には、各国は自らを閉ざし、壁を築き、世界の他の国々とのつながりを断ち、孤立すれば身を守れると期待しがちです。しかし、孤立が身を守ることはありません。国を弱めるだけです。スペインとスペイン国民を守る最善の方法は、世界の他の人々を守ることだと確信しています。世界の問題は、世界規模の対応によってのみ解決できるのです。
このため、私が首相に就任して以来、スペインの開発援助は年間22億ユーロから44億ユーロへと倍増しました。今後も増額を続けます。途上国と多国間機関は今、かつてないほど必要とされているため、スペインはこれまで以上の力と決意をもって支援を続けます。これは私の政府だけが望んでいることではありません。スペイン国民が求めていることです。最新の世論調査によれば、スペイン国民は国家間の連帯に最も熱心な欧州の市民です。
持続可能な生産チェーン
同じ理由から、開かれた相互接続型の経済も引き続き提唱します。 世界貿易とサプライチェーンを再考する必要があることは明らかです。最近の出来事により、生産チェーンの立地を決める際に考慮すべき基準は、生産コストだけではないと改めて認識しました。安全保障や環境の持続可能性など、ほかにも基準があります。
世界経済フォーラムは、持続可能なグローバル市場をどのように実現しているのでしょうか。
欧州は、本来失うべきではなかった一定の戦略的能力を取り戻さなければならないと思います。防衛、医療、エネルギー、食料など、主要産業における能力です。そのため、今年後半に行われるスペインの欧州連合理事会議長国としての任期において、これを主要な優先事項の一つとします。
しかしスペインにとって、欧州の戦略的自律性を確保することは、再び自給自足主義、ナショナリズム、経済的分断に向かうことを意味しません。むしろ逆です。スペインは世界第16位の貿易国であり、訪問者数では第2位です。私たちの国は、開かれることで繁栄してきました。今後もそうあり続けるとともに、世界、特にラテンアメリカの友人たちとのつながりを一層深めるEUを提唱していきます。
私たちが今闘っているのは、プーチンやエネルギー不足だけではありません。恐怖、不信、利己主義、外国人嫌悪、環境破壊とも闘っています。その結果は、今後何十年にもわたる西側諸国とその先の世界の暮らしを左右するでしょう。
スペイン首相ペドロ・サンチェス
スペインから学ぶ、レジリエンス構築の教訓
2023年は世界経済にとって良い年にはならないようです。不確実性、高インフレ、そして主要国の一部の停滞が特徴となるでしょう。スペインもこの状況の影響を避けられませんが、同時に、見事な回復力と強さを示しています。現在、スペインの雇用水準は史上最高で、ユーロ圏平均を上回る成長を続け、EUで最も低いインフレ率を記録しています。
実際、すべての国際機関が、スペインはこの不確実性と景気減速の時期を西側諸国の中で最もうまく乗り切る国の一つになると見ています。また、過去30年間に歩んできた収れんと進歩の道を進み、成長を続けると予測しています。
スペインには、次のような強みがあります。
一流の物理・デジタルインフラ網
十分な訓練を受け、高い教育を受けた労働力
活力があり、最先端を行く民間部門
制度の安定性
構造改革計画が進行中であり、Next Generation EUの資金からすでに430億ユーロを超える投資を行っています。
世界経済は今、かつてないほど、信頼できる確かなパートナーを必要としています。スペインはその一つになります。
反動勢力に立ち向かう
経済の開放性と多国間主義を支えることは、プーチンが破壊しようとしている世界秩序を守るうえで極めて重要です。しかし、もう一つ欠かせないことがあります。プーチンが私たち自身の国々にまいた腐敗の種と闘わなければなりません。
世界を分断し、時計の針を戻そうとする反動的な野望を抱いているのは、ロシアの専制主義者だけではないことを忘れてはなりません。欧州には多くの同盟者がいます。今、彼らはプーチンへの共感やつながりを隠していますが、ほんの1年前には彼を訪問し、そのやり方を称賛していました。こうした政治勢力が機関に入り込み、EUを内部から破壊するのを防がなければなりません。
脅威は現実のものです。特に、主流の保守政党が極右勢力を支援し、政府への扉を開いている国々では深刻です。私たちは彼らに立ち向かいます。ウクライナの人々がロシア軍と闘っているのと同じ決意で、ただし武器は異なります。民主主義、透明性、そして効果的な政策です。
そして私にとって、最後のこの点は極めて重要です。今こそ、成果を出す時です。
分断された社会を再建する
ほとんどの西側諸国で不平等が拡大し、社会的流動性が停滞しています。市民の購買力は低下しています。まともな仕事を見つけ、適切な家を買い、子どもに良い教育を受けさせるのに苦労しています。多くの人にとって、十分な休暇のために貯蓄することさえ難しく、ましてや安定した老後や民間医療保険を確保することはできません。その一方で、億万長者の数は増え続け、大手多国籍企業は、他者を犠牲にしてでも利益を増やし続けています。
一部の大企業が、タックスヘイブンや、私たちが放置している国際規制の抜け穴を利用して税金を一切払っていないのに、どうして市民に、もう少しだけインフレに耐えるよう求められるでしょうか。世界のエリートの皆さん、この状況を変えるために力を貸してください。
100年前、世界が古い貴族階級に支配されていた頃なら、そう求めるのは世間知らずで無意味だったでしょう。しかし、状況は変わりました。今日、皆さんの多くは労働者階級や中流階級の出身です。市民に民主的に選ばれた指導者であり、懸命に働いて自らの財を築いた実業家です。だからこそ、制度が公正ではないと分かっているはずです。そこには不正義と不平等が満ちています。
人々に焦点を当てる
制度を正す時です。経済と政治が、本当に大切なもの、すなわち人々の幸福に再び焦点を当てるべき時です。それを実現できないのなら、制度を守る意味は何でしょうか。
私の政府はこの目標に取り組んでいます。過去10か月間、インフレの波とエネルギー危機に対処する市民や企業を支援するため、450億ユーロを超える公的資金を充てました。税の引き下げ、公共交通機関の無料化、中小企業や世帯への直接支援、電力市場と住宅市場への措置を通じて、人々を守るために国のあらゆる財政的・法的資源を動員しました。
こうした措置により、5か月でインフレ率を5ポイント引き下げ、多くの人にとって危機の負担を少し軽くすることができました。物価が落ち着き、再び人々が人間らしい暮らしを無理なく送れるようになるまで、措置を維持し、拡充していきます。
世界は重大な危機に直面しています。その脅威は、ロシア産ガスの供給やウクライナの行方を超えるものです。私たちは皆、自らの能力の限り行動しなければなりません。その限界を決めるのは、GDPの規模や、私たちが一度も承認していない古いルールであってはなりません。市民のニーズと権利によって定めるべきです。市民の幸福こそ、私たちの成功を測る基準であるべきです。さあ、成果を出しましょう。





