人権・環境デューデリジェンスの義務化が持続可能な未来を築く方法

Mandatory human rights and environmental due diligence is a means for companies to ensure sustainable business performance.Image: Unsplash
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  • 国家が労働者、地域社会、そして自然環境を守る責任を果たせない場合や地域においても、企業には人権を尊重する責務がある。

  • 欧州委員会が起草した、持続可能なコーポレートガバナンスに関する基準設定法案は、企業の説明責任を大きく変える契機となり得る。

  • 人権・環境デューデリジェンスの義務化は、企業が優れたコーポレートガバナンスと持続可能な未来への取り組みを示す重要な節目となる。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックが3年目を迎え、欧州に戦争の脅威が迫るなか、人々と地球を守ることは、あれば望ましいというものではなく、必須である。企業には、国家が労働者、地域社会、そして自然環境を守る責任を果たせない場合や地域においても、人権を尊重する責務があるという認識が広がっている。

来週、欧州委員会は、EUに拠点を置く企業のバリューチェーン全体で人権と環境が尊重されるようにする、持続可能なコーポレートガバナンスに関する基準設定法案を公表すると見込まれている。度重なる延期にもかかわらず、EUが2年前に掲げた高い目標を達成すれば、これは企業の説明責任を大きく変える契機となり得る。EU司法担当委員ディディエ・レインデルスが2020年4月に述べたように、今こそ「責任ある企業行動と持続可能なサプライチェーンを標準にする」時である。

包摂を実践する

企業とその取締役会に対し、バリューチェーンにおける課題を特定し、対処するよう求める圧力が高まっている。投資家からのものも含め、企業活動の影響を受ける地域社会とより直接的に関わる必要性にも及んでいる。企業には、包摂を実践する重要な機会がある。積極的な行動を推進するには、企業のトップ層が率先しなければならない。私の勤務先であるロシュは、すべての人が積極的に包摂され、公平かつ敬意をもって扱われ、機会や資源に平等にアクセスでき、自分らしくありながら組織の成功に十分貢献できる環境を築くことの利点を認識してきた。これを実現できるのは、企業とビジネスパートナーの参加があってこそであり、同じアプローチをバリューチェーンに沿った地域社会の尊重にも広げることができる。

幅広い企業、投資家、事業イニシアチブはすでに、効果的な人権・環境デューデリジェンスの義務化が、企業に基準を引き上げさせ、長期的な安定と持続可能な事業成果を確保する手段になると認識している。

過去10年間、企業のデューデリジェンスの取り組みは、次の文書が定める自主的な枠組みに導かれてきた。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」およびOECD「多国籍企業行動指針」である。リスク軽減策として、デューデリジェンスは、企業が自社のリスクを「把握し、示した」うえで、それに対応するための枠組みをつくる。しかし、広く実施されているとはいえない。英国国際比較法研究所による2020年の調査によると、現在、人権・環境デューデリジェンスを実施している企業はわずか37%にとどまる。企業活動によって人々と自然が危険にさらされ続け、実態が見えにくいところでは権利侵害が続いている。自然環境がさらに劣化するにつれ、脆弱な立場にある労働者や人々が直面するリスクは高まる一方だ。

企業をより良い方向へ変革するには、企業活動が自然資本、社会関係資本、人的資本、製造資本のあらゆる形態にどのような影響を及ぼし、またそれらにどのように依存しているかを理解しなければならない。経営システムは企業の業績の基盤だが、この変革には取締役会が不可欠であり、デューデリジェンスとその結果について説明責任を負わなければならない。コーポレートガバナンスは、投資家やステークホルダーの要請に応えていく必要がある。

企業コンプライアンスを担う取締役として数十年働くなかで、企業責任は、今日でもあまりに多く見られるような、チェック項目を埋めるだけの作業であってはならないと学んだ。デューデリジェンスを企業文化や実務に根付かせることは、人権と環境の尊重を守るだけでなく、事業の安定と包摂的な経済成長の好循環を生み出すビジネス機会にもなる。事業を適切に運営することは、従業員、影響を受ける地域社会、そして自然界を責任をもって守ることと両立できるし、そうあるべきだ。

人権・環境への影響に対処する基準を引き上げる

デューデリジェンスは、企業が自らの影響を理解し、それに対応するための重要な一歩である。デューデリジェンスによって、方針、実務、投資を目的に沿わせることができる。あらゆる資本を測定し、そこに投資することは、持続可能な事業成果への道であり、欧州グリーンディールと国連の持続可能な開発目標を達成する現実的な機会をもたらす。インパクト・マネジメントは、企業の機動力を高める新たなビジネス機会を生み出し、善をもたらす力としての企業という理念に新たな意味を与えることができるし、実際に与えるだろう。企業とその取締役会は、リスク管理プロセスと既存のコーポレートガバナンス手続きに、サステナビリティを組み込まなければならない。

フランス、ドイツ、ノルウェーを含む欧州の複数の国では、人権・環境デューデリジェンスの義務化に向け、国内基準の策定がすでに始まっている。オランダとベルギーも計画を進めている。こうした取り組みをEUを通じて調整・統合し、欧州を、こうした慣行を法的拘束力をもって義務付ける世界初の地域とすることには意義がある。これにより欧州企業は、世界各地で人権・環境への影響に対処する基準を大幅に引き上げるとともに、地域間やステークホルダー間の競争条件を平等にできる。こうした取り組みを大規模に進めるには、最終的に国際的な一貫性が必要となる。

EUが行動を起こすべき時であり、大胆に踏み出すべき時だ。今後の法制化により、EUは企業とその取締役会の進むべき方向を示すことになる。ビジネスリーダーにとって、人権・環境デューデリジェンスの義務化は、優れたコーポレートガバナンスと持続可能な未来の双方への取り組みを示す重要な節目となる。

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