脱炭素化には支援的な政策が不可欠であり、産業の動向に歩調を合わせなければなりません。しかし、ネットゼロの達成に必要な仕組みを動かす主役は民間セクターです。
許認可の遅れを解消し、輸送など脱炭素化が困難なセクター間の協働を強化する必要があります。
協働を通じて、グリーン水素と風力エネルギーのインフラを活用し、輸送の脱炭素化を進めることができます。
カーボンニュートラルな未来へと続く道は一つではありません。脱炭素化をめぐる世界的な議論は、たいてい政策を中心に展開します。主に気候政策やエネルギー政策であり、2022年に学んだように、安全保障政策も含まれます。気候危機に関する最近の議論では、COP27がより野心的な気候公約を打ち出せなかったことが嘆かれています。公約は計画に十分な速さで結びついておらず、計画がある場合も、ゼロカーボンのエネルギー事業が十分に実現していません。
世界の炭素排出量を削減する取り組みには、支援的な政策が不可欠です。エネルギー転換において、再生可能エネルギーの拡大は、しばしば許認可の遅れによって妨げられています。例えば欧州では、建設中の設備容量に比べて、許認可手続きの滞りで足止めされている再生可能エネルギーの設備容量は4倍に上ります。この問題を解決するには、政策立案者がより注力するしかありません。
しかし、脱炭素化は規模がものをいう取り組みであり、支援的な政策だけですべてが解決するわけではありません。炭素問題の解決に必要な技術の多くはすでに存在します。規制の壁に阻まれている風力発電計画と同じように、その多くは規模の経済が実現する段階へ進むのを待っています。
脱炭素化を動かす仕組みを担うのは民間セクターです。内燃機関、輸送網、生産施設を考えてみてください。これらは民間セクターが最も直接的に動かす要素であり、気候公約が実行される主要な場でもあります。したがって、持続可能な技術を拡大できる環境を築くには、セクターを越えた協働がさらに必要です。より環境に優しい未来は、官民双方が目指す共通の目標として急速に定着しましたが、まだ切り開かれていない道は数多くあります。
世界経済フォーラムは、気候危機にどのように取り組んでいるのでしょうか?
化石燃料依存の輸送から、環境に優しい輸送へ
化石燃料への依存度が最も高い産業セクターである輸送は、大きな変革の途上にあります。ディーゼル車から電動輸送ソリューションへの明らかな技術転換だけでなく、行動様式の転換、人材の能力構築、業務の改革、さらには意識の変革も問われています。こうした取り組みは並行して進め、同じ速度で加速させる必要があります。
輸送のように脱炭素化が困難なセクターは、脱炭素化への道のりにおける重要な最前線です。解決に向けては、二つの面から取り組む必要があります。第一に、許認可の遅れを解消し、政治的意思を強化して、再生可能エネルギーの設備容量を拡大すること。第二に、脱炭素化が困難なセクターと再生可能エネルギー技術の提供者が緊密に協働することです。
脱炭素化は規模がものをいう取り組みであり、支援的な政策だけですべてが解決するわけではありません。
世界有数の規模を誇る輸送事業を手がけるボルボ・グループは、2040年までのカーボンニュートラル達成など、野心的な気候目標とさらに意欲的な実行アプローチを掲げ、この課題に正面から取り組んでいます。トラック、バス、船舶、建設機械を手がける同社は、こうした輸送分野すべての持続可能な未来を築くには、単独で取り組むだけでは十分な速さを実現できないと早くから認識していました。
ボルボ・グループの転換の中核を担うのは、バッテリー式電気自動車(EV)、燃料電池EV、バイオ燃料などの技術です。これらを真に持続可能な動力源とするには、グリーン電力と再生可能エネルギーのインフラを利用できることが必要です。ソリューションの構築は重要な第一歩でしたが、それらを迅速に市場投入するため、より環境に配慮した電力源を確保するには、従来の発想を超える考え方が求められました。単独では進展が遅れる道のりも、自社の事業領域を越えた支援があれば大幅に加速できる可能性がありました。
世界経済フォーラムは、持続可能で包摂的なモビリティシステムをどのように推進しているのでしょうか?
世界経済フォーラムのモビリティの未来を形作るプラットフォームは、航空宇宙・ドローン、自動車・新しいモビリティ、航空・旅行・観光、サプライチェーン・輸送の4つの産業分野で活動しています。モビリティの未来が安全で、クリーンかつ包摂的なものになることを目指しています。
「明日のクリーンな空のための連合」を通じて、100社を超える企業が協力し、2030年までに世界の航空を持続可能な航空燃料10%で支えることに取り組んでいます。
フォーラムはユニセフと連携し、海運、航空、物流の主要企業とともに憲章を策定しました。これにより、COVAXが世界各地の脆弱な立場にある地域社会へ新型コロナウイルス感染症ワクチン10億回分超を届ける取り組みを支援しています。
「ロード・フレイト・ゼロ・プロジェクト」と「P4G・ゼロへの移行連合」は、ゼロエミッション貨物輸送への移行を加速する根拠、費用、機会を示す成果をもたらしました。
「Medicine from the Sky」イニシアチブは、ドローンを使ったワクチンの配送と医薬品の配送をインドの遠隔地で実施し、300回を超える試験を成功させています。
フォーラムのターゲット・トゥルー・ゼロイニシアチブは、電動飛行技術と水素飛行技術を活用し、ゼロエミッション航空の導入と拡大を加速する取り組みを進めています。
フォーラムはロサンゼルス市、連邦航空局、NASAと連携し、世界各地の都市で都市型航空モビリティの導入を促すための「都市の空の原則」を策定しました。
フォーラムは宇宙持続可能性評価の策定を主導し、軌道上の宇宙ミッション管理とデブリ低減において、より安全で持続可能なアプローチを促進しています。
サーキュラー・カーズ・イニシアチブは、自動車のサーキュラーエコノミーに関する政策課題の形成に貢献しています。同イニシアチブは、欧州委員会およびゼロエミッション車移行評議会参加国の支持を受け、現在は中国の政策ロードマップを支援するよう招かれています。
「Moving Indiaネットワークは政策立案者と協力し、電気自動車の製造政策を推進し、ゼロエミッションの道路貨物車両の普及を促し、移行に必要な資金を調達しています。
「都市モビリティ・スコアカード・イニシアチブ」は、フォーラムのグローバル・ニュー・モビリティ連合が主導し、モビリティ事業者と都市を結びつけ、持続可能な都市モビリティシステムへの移行状況を比較評価しています。
お問い合わせいただければ、参加方法について詳しくご案内します。
セクターを越えた連携の道を築く
市民の支持を追い風に、イノベーションの加速とともに、風力エネルギーは、補助金に大きく依存するニッチな代替エネルギー源から、化石燃料価格の変動に対する最も有力な選択肢の一つへと成長しました。規模の経済を急速に成熟させる先頭に立ってきたヴェスタスは、ボルボ・グループに脱炭素化の取り組みで新たな領域を切り開く機会をもたらしました。水素充填ステーションや生産施設向けのグリーン電力利用で協力し、さらなる検討にも開かれた合意を結んだこのパートナーシップは、グリーン水素と風力エネルギーのインフラがもたらす利点を示しています。
専門知識の共有、技術へのアクセス、リスクの分散以上に重要なのは、このパートナーシップが、発展途上にある持続可能な技術の拡大を加速させることかもしれません。ヴェスタスが知見を、ボルボ・グループが事業基盤を持ち寄ることで、政策の枠組みでは実現が難しい速度でイノベーションを成熟させる実験の場が生まれます。変動の激しい時期にはイノベーションが後回しにされがちですが、この連携は困難な事業環境におけるリーダーシップの価値を示しています。
こうしたイノベーションは、脱炭素化をさらに速める道筋、すなわち事業成長への第一歩です。多くの輸送関連顧客がそれぞれのカーボンニュートラル目標に向けて取り組むなか、充実したサステナビリティの提案は、もはやニッチな選択肢ではなく、購入の条件になっています。民間セクター全体でグリーン電力の需要が高まるにつれ、風力エネルギーはその需要を満たす最もコスト競争力の高い技術となりました。補助金の時代が完全に過ぎたいま、政策立案者は許認可のボトルネックをできるだけ早く取り除くことで、この成長の仕組みを後押しできます。
パリ協定に沿って炭素排出量を抑え、瀬戸際にある1.5度目標を再び実現可能にするには、民間セクターが成長し、脱炭素化を動かすエンジンとなる必要があります。もちろん、そのエンジンを動かすのはグリーン電力です。風力エネルギーを大幅に拡大することは、この道のりに不可欠です。そして、今もっとも緊急に必要なのは、すべてに火をつける点火役、すなわち許認可です。政策立案者がグリーンエネルギーの豊富な供給への道を開けば、セクター横断の協働がその可能性を引き出し、産業がカーボンフットプリントを生まずに発展できる未来へと近づけます。






