気候変動は誰もの健康に影響を及ぼす可能性があります。地球の気温が1℃上昇するごとに、世界の健康に壊滅的な影響が及ぶおそれがあります。
研究によると、温暖化や降雨などの気候ハザードは、確認されている人間の感染症の半数以上を悪化させています。
気候に左右される感染症の増加を追跡し、その拡大に対応するためにデジタル技術へ投資できます。これにより、世界各地の地域社会の健康を守ることができます。
ここ数年、気候変動が世界中の誰もの健康に深刻な影響を及ぼす可能性があることが、ますます明らかになってきました。私たちの時代における最大の課題の一つは、この深刻化する脅威への理解を深め、人々の健康を守ることに役立てることです。
ランセット・カウントダウン報告書は、ウェルカムの支援を受けて毎年発行されており、今年、気候変動によって食料不安、感染症、暑さに関連する疾患のリスクが高まっていると報告しました。また、暑さに関連する死亡者数は過去20年間で3分の2増加したとしています。極端な暑さによる健康への影響には、心血管疾患や呼吸器疾患などの悪化、熱中症、そしてメンタルヘルスへの悪影響が含まれることが明らかになりました。
2022年、世界各地で気温の記録が更新されました。英国では7月に40℃に達し、欧州の一部、パキスタン、中国でも最高気温を更新しました。パキスタンの洪水、 カリフォルニア州の山火事、アフリカの角地域の干ばつなど、極端な気象現象も発生しています。
こうした極端な気温により、かつては抽象的または理論上のものに思えた気候変動が、多くの人にとって身近な問題となり、その深刻さが鮮明になりました。世界の気温が1℃上昇するごとに、健康に壊滅的な影響が及ぶ可能性があります。
一例として、極端な高温環境で働く女性の胎児に、熱ストレスが及ぼす影響があります。先月発表された研究では、ガンビアの農家92人を調査し、農作業中に母親が高温にさらされると、気温の上昇に伴って胎児の心拍数が懸念されるほど増加し、胎盤への血流が減少することが分かりました。ウェルカムの資金提供を受けたロンドン衛生熱帯医学大学院(LSHTM)の研究では、極端な暑さによる熱ストレスが1℃強まるごとに、胎児への負担が17%増加することが示されました。
私たちのビジョンは、人々の健康が豊かに育まれる形で、壊滅的な気候崩壊を回避できる世界です。気候変動が人々の健康に及ぼす影響についての研究を支援することで、その知見を活用して革新的な製品や解決策が必要な領域を特定し、変化を促すことができます。その一環として、私たちは2月に助成金公募を開始し、地域および国レベルで気候変動が健康に及ぼす影響を示すエビデンスを生み出す研究を支援します。
世界経済フォーラムは気候変動にどう取り組んでいるのでしょうか?
気候に左右される感染症の影響を追跡する
近年のエビデンスは、温暖化や降雨などの気候ハザードが、確認されている人間の感染症の半数以上を悪化させていることを示しています。
気温の上昇により、病気を媒介する生物にとって新たな環境がより適したものになっています。マラリア、デング熱、ジカ熱を媒介する蚊や、ライム病を媒介するマダニなどがその例です。排出量が現在の水準で増え続ければ、今世紀末には最大84億人がデング熱やマラリアのリスクにさらされる可能性があります。
これまで発生が確認されていなかったアフリカ、アジア、ラテンアメリカの高地でも、マラリアやデング熱の発生が報告されています。
20年前には想像もできなかったことですが、現在では欧州でもデング熱の地域内感染が確認されています。
気候に左右される感染症への対策にデジタル技術を活用する
こうした新たな脅威への対応において、デジタル技術は重要な役割を果たします。
気候に左右される感染症の早期警戒システムは、エビデンスに基づく公衆衛生上の意思決定に役立ちます。感染症の流行がいつ、どこで起きるかを予測する能力を高めることは、地域社会を守り、影響を抑え、さらには流行そのものを防いで命を救う最善の方法です。
こうした新たな脅威に対応し、感染症をより正確かつ効率的にモデル化できるデジタルツールは、地域、国、国際レベルの政策立案に役立つ可能性があります。
報告書が昨年2月に発表され、気候に左右される感染症への世界的な備えを損なう課題が明らかになりました。これらの分野に対応するモデル化ツールはほとんどなく、存在するものもマラリアなどの媒介生物由来感染症に重点を置き、呼吸器感染症、食品媒介感染症、水系感染症に対応するツールは不足していました。また、代表性と多様な地理的知見の取り入れも課題として指摘されました。現在のツールの多くは北米や欧州の機関が作成していますが、対象となる風土病の流行地域は主に熱帯・亜熱帯に集中しています。
報告書は、気候に左右される感染症の影響を最も強く受ける地域社会の代表性を高めるには、能力構築とメンタリングが鍵となると指摘しました。テクノロジーだけでは不十分であり、現地の意思決定者との協力や地域のインフラへの投資が必要です。
ウェルカムは、こうした新たな脅威に対応するツールの開発を支援しています。気候に左右される感染症のモデル化をより正確かつ効率的に行い、最も必要とされる地域社会に大きな効果をもたらすことを目指しています。
たとえば、レイチェル・ロウ博士とそのチームは、バルセロナ・スーパーコンピューティング・センターの研究者として、ブラジルとペルーの研究者と協力し、感染症の拡大に影響する可能性のある環境要因の変化をドローンで監視しています。これには、意図せず蚊の新たな繁殖地を生み出す可能性のある貯水も含まれます。チームは、アマゾン熱帯雨林や都市化が進む成長都市などで、ドローンと気象観測所を展開する予定です。データは、感染症の早期警戒システムに役立つ人工知能アルゴリズムの開発に使用されます。
世界経済フォーラムは、医療の現状をどのように改善しているのでしょうか?
ヘルス・アンド・ヘルスケア・センターは、アクセス、公平性、レジリエンス、備えなど、世界各地の医療制度が直面する課題への理解を深めるため、リーダーたちをつなぎます。
信頼に基づく対話と官民連携を通じて、センターはパートナーが共通の優先事項に沿って連携し、健康状態の改善に向けて集団的な取り組みを進められるようにします。
変化する世界
気候変動の影響は、私たちの周囲ではっきりと見て取れます。しかし、悪化を防ぎ、最もリスクの高い地域社会を守るため、緊急の対策を講じる力は私たち一人ひとりにあります。
私たちは、地域社会も各国政府も、気候と健康に関わる複合的な緊急事態に対処するための十分な備えを整えた、より健康で持続可能な世界を目指します。
ウェルカムの気候・健康プログラムでは、気候変動が健康に及ぼす影響に関するエビデンスの創出と活用を変革し、健康を守るため現場で実施できる解決策を特定することを目指しています。その一環として、実用的で手頃な解決策の開発に向けて、気候と健康に関するデータの収集と共有を支援しています。
急速に変化する世界では、協力、連携、スキルの共有が不可欠です。あらゆる分野のデータやテクノロジーの専門家が、命を救ううえで重要な役割を果たせます。
ウェルカムの気候と健康に関する取り組みについて詳しくは、こちらをご覧ください:https://wellcome.org/what-we-do/climate-and-health





