世界的な金融の不安定化を背景に、中央銀行デジタル通貨(CBDC)は中央銀行にとって最優先課題として浮上しています。
2022年は、CBDCの研究開発(R&D)における主要な節目の年であり、関連する大規模なハッカソンが数多く開催されました。
次の課題は、CBDCの相互運用性に関する未解決の問題と、この技術が金融システム全体にどのように組み込まれるかを解明することです。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)は、脆弱な市場を支える手段となり得るか。2022年には、伝統的な金融市場が不安定化し、暗号資産市場では極端な価格変動が生じました。CBDCは、100か国以上で検討されており、この技術革新を、マクロ経済および社会に最大限の効果をもたらす形で実装する機会となっています。
世界のマクロ経済環境は、高インフレ、低成長、高水準の債務といった課題に直面し、厳しい状況が続いています。2022年には、米国のインフレ率が40年ぶりの高水準に達し、ピュー・リサーチ・センターによるインフレ分析によれば、先進国44か国の大多数で、パンデミック前の水準と比べて消費者物価が大幅に上昇しました。
ビットコインの価格は2021年11月にピークを付けて以降、暗号資産は2022年に波乱の一年を迎え、2兆ドル以上の価値を失いました。テラ・ルナの暴落、レンディング企業セルシウスおよびヘッジファンドのスリー・アローズ・キャピタル(3AC)の破綻、そしてFTXの経営破綻は、この分野における極端な価格変動をさらに激化させ、暗号資産業界の不確実性を一段と高めました。
こうした市場の不安定化は、中央銀行デジタル通貨の必要性を裏付けるものなのか、それとも損なうものなのか。
CBDCの研究開発にとっての主要な節目の年
G20テックスプリントは、G20議長国および国際決済銀行(BIS)が共催する年次イベントであり、世界規模の長期型ハッカソンシリーズの形式をとっています。テックスプリントの目的は、世界の規制当局および中央銀行コミュニティが直面する課題の解決につながり得る新技術のイノベーションを促進することです。
市場の不安定化と変動が続いた一年において、CBDCは主要な技術革新の課題として選ばれました。具体的な解決策を提示し、CBDCの研究開発を加速させるとともに、いまだ解決すべき課題を探究するよう行動が呼びかけられました。その課題には次のものが含まれます。
堅牢なエンドツーエンドのCBDCソリューション
オフラインCBDC機能
接続性と相互運用性
このほか、この分野への関心の高まりを受け、複数の機関がCBDCの検討を前倒しで進めています。例えば、バークレイズおよび暗号資産ソリューション提供企業リップルは、いずれもCBDCソリューションのハッカソンを主催しています。
上記に加え、CBDCに関する研究、実証実験、パイロットプロジェクトを立ち上げる中央銀行も増加の一途をたどっています。中央銀行の数は2022年に飛躍的に増加しました。

不安定な時代におけるイノベーション
現在の市場環境への対応であれ、この技術の可能性に対する信頼の高まりであれ、あるいはこの革新的な取り組みから取り残されたくないという思いであれ、中央銀行がCBDCを最優先課題としていることは明らかです。
マクロ経済の脆弱性が高まる局面では、景気改善に向けた中央銀行への圧力も強まります。しかし、この激動の時期においても、CBDCの検討に対する中央銀行の揺るぎない姿勢は変わっていません。その理由は、この時期に得られる潜在的なメリットにあります。
現在の経済の脆弱性から、CBDCの導入判断や最適なCBDCの設計に資する教訓として、どのようなものが得られるでしょうか。
現在の市場および金融政策の状況に対処するための示唆を与える、これまでのCBDC研究開発から得られた知見は何でしょうか。
CBDCは、将来的に金融政策の実施を改善し得る障壁(高額な取引手数料やアクセスの欠如など)を低減できるでしょうか。
これらは、中央銀行が厳しい局面に直面する中で、CBDCに関連して検討され得る問いの一部にすぎません。金融の安定性を高めるという負担は大きいものの、中央銀行が学ぶべき教訓は数多く、より強靭で回復力のある金融の未来につながる可能性があります。
グローバルな協調の機会
現在、研究または開発段階にあるCBDCは100以上ありますが、各国の導入動機はそれぞれ異なり、地政学的な脆弱性や金融の不安定化によって、その違いは一層顕著になっています。主権デジタル通貨を発行する動きが強まる中、新たに導入されるシステムや通貨が相互運用可能であり、世界の金融インフラを向上させるものとすることが明らかに求められています。分断が進む世界において、金融市場インフラのイノベーションを協調の精神に基づいて生み出すにはどうすればよいでしょうか。世界を揺るがす近年の国際的な危機を踏まえ、これらのデジタル通貨は国境を越えた効率性をどのように高めることができるでしょうか。
世界経済フォーラムのブロックチェーンおよびデジタル資産プラットフォームは現在、中央銀行デジタル通貨の地域円卓会議シリーズという枠組みで、これらの問いを検討しています。2022年4月に開始された地域円卓会議は、世界経済フォーラム年次総会2023でのCBDCに関するセッションを含め、2023年夏まで続きます。
これらの円卓会議の目的は、複数の地域やセクターの関係者を集め、CBDCの検討から得られた教訓を議論し、地域的に相互運用可能な設計をCBDCの意思決定プロセスにどのように組み込めるかを検討することです。本シリーズの成果は「地域相互運用性原則」に関する報告書として取りまとめられる予定です。


