急速に変化する世界では、人口動態の変化、急速な都市化、気候変動が、経済を形づくる主な要因となっています。
資本市場は、経済を形づくる企業に資金を配分するうえで欠かせない役割を担っています。
企業の上場を支援するだけでなく、発行体に力を与え、パンデミック後の復興を後押しすることも重要です。
私たちは、COVID-19パンデミックによって変化が加速した、世界的な変革の時代を生きています。地政学的な情勢変化が世界をますます特徴づけるなか、人口動態の変化、急速な都市化、気候変動という3つの強力な長期的要因が、新たな世界経済を形づくっています。
この変革の一環として、私たちは、かつてない速さで新たな企業や法人、アイデアが生まれ、暮らし方を変え、すべての人に新たな機会をもたらす様子も目の当たりにしています。
世界経済を変革する3つの要因
世界の65歳以上の人口は、国連の推計によると、2020年から2050年の間に8億2,000万人増加する見込みです。つまり、世界の高齢者人口は15億5,000万人に達することになります。
この変化だけでも広範な影響がありますが、とりわけ世界の公衆衛生制度に大きな意味を持ち、あらゆる医療、医療資源、治療、医薬品への需要を高めます。
高齢化に加え、国連によると、2050年までにさらに25億人が都市部へ移住すると予想されています。そのため、都市計画担当者は、より効率的で拡張性の高い都市を実現するため、リアルタイムの公共交通情報、高度な監視システム、デジタル公共サービスなど、スマートシティ技術の導入をますます求められています。
さらに、世界の都市化が進むにつれ、電子商取引の機会は大きく広がります。現代の通信を支える基盤である5Gネットワークにも同様の可能性があります。世界のスマートシティ市場は、2021年の4,600億ドルから2026年には8,700億ドルに拡大すると予想されています。
気候変動の現実は、現代世界を形づくる変化のなかでも、おそらく最も緊急かつ切迫したものです。それは、企業や経済のあり方を見直し、再調整することを私たちに迫り、クリーンエネルギーや再生可能エネルギーなどの新技術の導入を促し、社会の行動、優先事項、文化を塗り替えています。
ここでは、企業がESGへの配慮を最優先課題に据える動きが見られます。HKEXも、2050年までにネットゼロを達成するという独自の目標を掲げ、他の企業にも同様の取り組みを促したいと考えています。必要な変化を実現できるのは、環境への影響を積極的に追跡、検証、管理することによってのみです。
世界各地で、刺激的なイノベーションが次々と生まれ、支持を広げ、既存技術を変革し始めています。電気自動車(EV)はその好例の一つです。あらゆる輸送形態におけるEVの総数は、2020年の110万台から、2030年までに世界全体で約1億4,500万台に増加すると予想されています。
明日の企業が台頭する
適応し、繁栄するうえでイノベーションが重要であることは広く理解されていますが、その重要性はパンデミック中に鮮明になりました。日常生活の長期にわたる混乱によって、各国と企業は従来のやり方を見直し、新たな技術やツール、働き方を取り入れて、ステークホルダーや従業員の体験のデジタル化を加速させました。変化の必要性が強い推進力となりましたが、変化、とりわけ急速な変化が可能であり、多くの場合有益であることを、私たち全員が改めて認識する契機とすべきです。
世界の資本市場の中心に身を置く私たちは、意欲的な既存組織の発展であれ、現代の課題に取り組む斬新で革新的なアイデアを持つ新興企業であれ、明日を担う企業が台頭する姿を目にしています。
こうした組織は、新たな技術や世界を変えるイノベーションを生み出し、先駆けています。人々の生活の質を高め、寿命を延ばす医薬品の開発、現代のつながる都市に欠かせない高度なインフラの提供、クリーンエネルギーへの重要な転換の支援などがその例です。私たちは、こうした企業が未来を共に変える担い手になると考えています。
資本市場は世界を変えるイノベーションを後押しできる
明日を担う企業は、意欲的な計画を実現するため、事業の早い段階で公的資金を調達する必要があることが少なくありません。同様に、投資家も高い成長が見込まれる企業に早期から投資する機会を探しています。
この二つが組み合わさることで、市場運営者に独自の機会が生まれます。新たな世界経済が形づくられるなか、機能的で厚みがあり活力に満ちた資本市場は、有望な企業への資本配分、起業家の支援、イノベーションの促進、世界を変える技術や製品の後押し、投資家への機会創出を担う重要な経路として、欠かせない役割を果たします。
香港は明日を担う企業の市場
そのためには、資本市場自体が変化を受け入れ、常に進化し、自らを刷新して、時代に即した存在であり続けなければなりません。
HKEXでは、資本市場の魅力を保つため、さまざまな改革やイノベーションを実施してきました。新経済企業を含むあらゆる発行体にとっての上場先として、また取引やリスク管理、将来に向けた投資を行う場として、市場の魅力を維持するためです。
具体的には、2018年の上場制度改革でバイオテクノロジー企業専用の新たな章を設け、売上高がない段階でも香港で上場できるようにしました。これにより、公開市場で透明性と適切な規制を備えた企業として成長資金を調達し、研究開発を進めることが可能になりました。
改革が市場のDNAを変え、ゲームチェンジをもたらすアイデアを後押し
こうした改革によって資本市場のDNAが変わり、パンデミックの始まり以降、新経済企業の上場が急増しました。
新経済企業は、特定の業界や市場に限られません。この言葉は一般に、起業家精神、技術の進歩、新たなビジネスモデルを通じて急成長し、イノベーションを重視することで事業領域や提供内容を拡大している企業を指します。
こうした企業は明日を担う存在であり、一般にバイオテクノロジー、インターネットサービス、フィンテック、電気自動車、新しいメディアやエンターテインメント、グリーンテック、クリーンテックなどの分野に属します。
HKEXにおける新経済企業の上場による調達資金総額は、2021年に2億9,000万香港ドルに達し、2019年の調達額のほぼ2倍となりました。一方、2021年の調達資金総額の87%を新経済企業が占めました。
こうした企業は、国際的な知名度を高められる、適切な規制の整った信頼性の高い市場を求め、香港に進出する動きを強めています。同時に、中国の巨大な投資家層にアクセスし、厚みと活力があり流動性の高い香港市場を活用して、次の成長段階に向けた資金を調達しています。
未来の市場
私たちは未来の市場を築くことを目指しています。パンデミック後の復興を推進し、これからの世代の暮らしを形づくる、ゲームチェンジをもたらすアイデアや機会と資本を結びつける重要な役割を、今後も果たしていきます。
その実現に向けて、私たち自身も明日を担う企業に根付く革新的な精神を受け入れ、資本市場の魅力を高める方法を常に探る必要があると認識しています。
2018年の上場制度改革を基盤として、最近では特別買収目的会社(SPAC)に特化した新たな上場制度を導入し、海外企業が香港で上場するための手続きを簡素化しました。
明日を担う企業を支援することは、上場を目指す企業を支えるだけではありません。非公開から公開へ、スタートアップから事業拡大へ、上場企業から追加発行へと進む企業のライフサイクル全体を通じて、発行体に力を与えることも意味します。香港には、この支援を支える豊かな商品と専門家のエコシステムがあり、資金調達先として選ばれる一流の中心地という地位を確立しています。
市場と市場が支えるコミュニティをつなぎ、発展を促し、前進させることで、すべての人の繁栄に貢献するという私たちの目的は明確です。世界が変化するなか、資本市場自体も変化を受け入れ、あらゆる起業家、家族経営企業、そしてあらゆる斬新なアイデアの志や夢を形づくる一助となっています。






