パンデミック後の世界的な再開が繰り返し先送りされているため、何らかの形でのバーチャル勤務が長期化する可能性が高い。
メタバースは、刺激的な3D環境での協働を可能にし、企業と従業員の双方に恩恵をもたらし得る。
その可能性を実現するには、メタバースは当初から包摂的でなければならず、草の根の担い手や主要産業の経験を活用する必要がある。
パンデミック後に世界中で大規模な再開が期待されていたが、新たな新型コロナウイルス変異株によって、多くの国でその計画は事実上保留となった。そして今では、私たちの大半が何らかの形でのバーチャル勤務が定着することを受け入れている。
600万人を超えるユーザーの職場環境を管理してきた経験から、DXC Technologyは、多くの従業員がリモートワークの自由と柔軟性と、同僚や顧客と再びつながりたいという思いとの間で揺れていることを知っている。3月に発表されたMicrosoftの「Work Trend Index」調査は、この二面性を浮き彫りにしている。従業員の70%超が柔軟なリモートワークの選択肢の継続を望む一方、65%超はチームと対面で過ごす時間をもっと求めている。没入型バーチャル技術の進化により、組織は従業員に両方の利点を提供できるようになる可能性がある。
Second Lifeなど、初期の仮想世界は気晴らしや目新しいものに見えたかもしれない。しかし、すでに何百万人もの従業員が、Microsoft、Meta、Virbelaなどが提供するバーチャル空間で同僚と会っている。パンデミックを追い風に、テクノロジー企業は今、バーチャルな職場を、刺激的な3D環境で交流やビジネスを行う「メタバース」へと変えようとしている。協働における公平性を高める可能性は大きい。
責任あるメタバースの構築
こうした仮想世界を構築するにあたり、私たちは包摂性を優先し、草の根のイノベーションから学び、協働を推進するという3つのことに取り組まなければならない。

1. 最初から包摂性を重視する
メタバースでは、包摂性を後回しにするのではなく、出発点に据えなければならない。すべての答えがそろっているわけではないが、DXC Technologyでは、70カ国で働く13万人超の従業員を対象に「バーチャル・ファースト」モデルへ移行する決定を踏まえ、仮想世界の技術を積極的に活用している。この明快でシンプルな方針により、現在、世界中の従業員の99%が場所を問わず働ける環境にあり、必要に応じて目的に合わせて設計されたオフィスも利用できる。従業員のニーズに最も合う形を選べるのだ。バーチャル・ファーストのモデルは環境にとって良いだけでなく、何よりもそれを利用する人々にとって良いと私たちは考えている。私たちの経験によると、バーチャル・ファーストを採用する組織の従業員は、特にメタバースで協働する機会を得られる場合、生産性と意欲が高まり、地域社会にも新たな形で参加できる。
包摂性の向上は、仮想環境が本来備える利点でもある。そこでは、人の居住地、性別、身体的特徴、個人的な事情よりも、アイデアや仕事の質が重視される。その結果、組織はこれまで十分に代表されてこなかった人々を含む、多様な新たな人材層の恩恵を受けられる。乳児に授乳する母親から、身体的または心理的な課題を抱える人まで、誰もバーチャルな職場から排除される必要はない。
しかし、仮想環境を真に包摂的にするには、テクノロジー企業が、誰もが参加し、自分が受け入れられていると感じるために必要なツールや技術を提供しなければならない。必要なのは、ノートパソコンを渡したり、多様な外見のアバターを作ったりすることだけではない。従来型のキーボードを使えない人に操作インターフェースを提供するなど、身体的な課題にも対応する必要がある。メタバースの基盤を築く今、こうした問題に取り組まなければならない。
2. 草の根の取り組みを推進する
仮想環境に利用者の姿を十分に反映させる方法の一つは、現場からイノベーションを推進する人々がすでに進めている取り組みを生かすことだ。こうした草の根の活動は、メタバースの拡大に伴って周縁化されるリスクのある人々のニーズを明らかにし、重要な示唆を与えてくれる。
例えば、ピーター・スコット=モーガン博士は、仮想環境へのアクセシビリティを確保するプロジェクトを主導している。2017年に筋萎縮性側索硬化症(ALS)、すなわち運動ニューロン病(MND)という神経変性疾患を知って以来、この英国系アメリカ人の科学者・発明家はテクノロジーで病に立ち向かい、「世界初の人間サイボーグ」になることを自ら志願した。
この取り組みの中核には、リアルなAIを搭載し、視線で操作するアバターを本人そっくりに作り、社会で積極的な役割を果たし続けられるようにするプロジェクトがある。スコット=モーガン博士は、自身の「ピーター2.0」アバターや、本人とチームが開発中のその他の先駆的な技術ソリューションが、重度の障害や生活に大きな支障をもたらすその他の状態にある世界中の人々に希望を届けることを願っている。DXC Technologyは、実現に向けて博士の慈善財団と協力できることを誇りに思う。
3. 協働してメタバースを構築する
一つの企業、一つの国、一つの文化だけで、公平で包摂的なメタバースを構築することはできない。だからこそ、世界のITコミュニティは、自らが支援する地域社会と連携し、オープンで安全、かつ信頼できる仮想環境を開発すべきだ。
今こそ、私たちが望むメタバースの姿を考え、築く機会がある。そのために、ゲーム業界を含む幅広い分野の経験を生かせる。ゲーム業界は長年、人々が現実世界で直面し得る制約から解放される力を与えてきた。
テクノロジーは、社会における公平な機会の実現に貢献してきた優れた実績があり、メタバースはその次の章となる。適切に開発されれば、未来に必要な世界的な包摂性とアイデアの交換を促進できる。





