さまざまな分野におけるAIの爆発的な普及により、コンピューティング能力とエネルギーへの需要はさらに加速するでしょう。
その答えは、持続可能なコンピューティングの実践を開発することにあり、それには5つの要素があります。
これらのステップはそれぞれ、持続可能なコンピューティングの課題への取り組み方は異なりますが、これらすべてを統合することによる影響は大きいものとなるでしょう。
コンピューティング技術は、科学研究、工学的なブレークスルー、新たなデジタルサービスを推進することで、イノベーションの未来を支えながら、目覚ましいペースで進歩し続けています。
イノベーションと商取引を推進する上でコンピューティングが果たす大きな役割には、同じく重大なカーボンフットプリントが伴います。例えばUptime Instituteは、サーバーの消費電力が2017年以降266%増加したと報告しています。また、データセンターは現在、世界の電力消費量の3%を占めており、2030年までに4%に達する可能性があります。
さまざまな分野における人工知能(AI)の爆発的な普及により、コンピューティング能力とエネルギーへの需要はさらに加速するでしょう。AI革命がもたらす経済成長の恩恵を受けつつ、コンピューティングのカーボンフットプリントを増大させないためにはどうすればよいでしょうか。
その答えは、持続可能なコンピューティングの実践を開発することにあり、それには5つの要素があります。すなわち、クラウドコンピューティングによる稼働率の向上、ドメイン固有アーキテクチャの開発、ワークロードのポータビリティの実現、パフォーマンス最適化の自動化、そして持続可能なエネルギー源の利用です。これらのステップはそれぞれ、持続可能なコンピューティングの課題への取り組み方が大きく異なりますが、これらすべてを統合することによる影響は大きいものとなるでしょう。
クラウドコンピューティングによりサーバーの稼働率を向上させる
コンピューティングサーバーが、企業やクラウドプロバイダーのデータセンターからAIワークロードを実行している場合でも、稼働率が高いほど稼働させるサーバーの数が減り、したがって消費電力も少なくなります。稼働率の推定値はさまさまですが、一般的に企業のデータセンターは低い稼働率で運用されていることが多く、稼働率は10~50%です。一方、クラウドプロバイダーは50~80%の稼働率を維持していることで知られています。クラウドプロバイダーがこれを実現できるのは、より広範な規模で需要を集約し、ハイパースケールの効率化を図ることができるためです。
しかし、ワークロードをクラウドに移行することは複雑な作業になる場合があります。正しく実施するには、時間、費用、専門知識が必要です。自動化により、より多くの組織がクラウドを利用しやすくなり、世界全体の稼働率を向上させることができます。
ドメイン固有アーキテクチャによる高速化
汎用CPU(中央処理装置)のコンピューターチップの時代は終わりました。現在、コンピューティングの進歩は、グラフィックプロセッサ(GPU)、テンソルプロセッサ(TPU)などのドメイン固有アーキテクチャや、その他の派生製品によって進んでいます。
その名が示すとおり、ドメイン固有アーキテクチャは特定のワークロードを実行するために最適化されており、実行した際のパフォーマンス向上は目覚ましいものがあります。その結果、半導体の種類も爆発的に増加しました。過去10年間で、特化型コンピューティングチップによるパフォーマンス向上は、汎用CPUアーキテクチャと比較して1000倍以上に増加しました。さらに2022年だけで、クラウドサービスプロバイダーによって、約400種類の新しいハードウェアオプションが導入されました。
コンピューティング、ネットワーキング、メモリ向けのチップについても、さらに高効率なものが期待されています。半導体メーカーは、低消費電力のモバイル機器で使用されている技術を活用するなどして、さらにエネルギー効率の高いチップを見つけるための取り組みを続ける必要があります。

自動化によるワークロードのポータビリティの実現
より環境負荷の低いチップの選択肢は豊富にありますが、組織がそれらを容易に活用できるわけではありません。サーバーやクラウドサービスを切り替えるには困難やコストが伴うため、組織はあるハードウェアアーキテクチャから別のアーキテクチャへ容易に移行することができません。
オンプレミスのデータセンターの経済性を考えると、ハードウェアへの投資には少なくとも3年間の期間が必要です。そのため、オンプレミスでは、クラウドで利用可能な最新で最高のチップと比べて効率の低いチップを使用することを、ほぼ即座に強いられることになります。
しかし、クラウドサービスであっても、アプリケーションをあるクラウド基盤から別のクラウド基盤へ移植することは非常に困難で複雑です。このことが、より環境負荷の低いコンピューティングに最適なアーキテクチャの採用を妨けています。
この問題に対処するため、組織はアプリケーションを異なるクラウドサービスへ移行するために必要なすべてのステップを自動化する新たな方法を必要としています。
チップ効率の自動評価
組織が特定のアプリケーション(さらには特定の種類のコンピューティングワークロード)に適したクラウドベースのインフラを把握していなければ、異なるクラウドベースのインフラへ容易に切り替えられるとしても役に立ちません。
アプリケーションに最適なハードウェアを選定するこのプロセスには、自動化が不可欠です。変化があまりにも速いため、組織が新しいハードウェアを絶えず試験し、ベンチマークを行い、その後に導入することは現実的ではありません。
また、この選択を誤ると、不必要に桁違いの消費電力を招く可能性があります。例えば、新しいGPUは、ディープラーニングのニューラルネットワークの実行において、従来のCPUよりもはるかに効率的です。これは、複数の並列タスクを最大3倍の速度で処理できるためです。
データセンター向けのよりクリーンな電力
最後に、組織が増加するハードウェアの選択肢を最大限に活用し、カーボンフットプリントを削減することを支援するだけでなく、業界は、よりクリーンで持続可能なクラウドコンピューティングデータセンターを開発するために、推進を続ける必要があります。
これには、クリーンエネルギー源を組み合わせたカーボンネガティブなソリューションなど、革新的な新しいアプローチを推進することや、データセンターの熱を回収して補助的なエネルギー源として再利用することが含まれます。
インセンティブ、税額控除、その他のツールにより、よりクリーンで、よりエネルギー効率の高いデータセンターに向けた、こうした革新をさらに促進することができます。
世界経済フォーラムは、人工知能の倫理的な開発をどのように確保していますか。
クラウド:より環境負荷の低いコンピューティングへの第一歩
コンピューティング能力への需要は今後も高まり続けますが、組織はもはやオンプレミスのデータセンターという従来のコンピューティングの枠組みに縛られていません。幸いなことに、クラウドは現在、AIや、その他のコンピューティングニーズに電力を供給するうえで最善の選択を行うために必要な選択肢を提供しています。
しかし、組織がコンピューティングニーズに対して、より環境負荷の低い代替手段をさらに容易に利用できるようにするためには、取り組むべき課題がまだ残されています。インセンティブは確かに役立ちますが、組織が最も環境負荷の低いコンピューティングの選択肢を特定し、採用する方法を自動化することが極めて重要になります。
これらの機能が整えば、組織は持続可能なコンピューティングを確保しつつ、世界最大のイノベーションの課題に対処するためにAIを活用する方向へ前進することができます。
当社Rescaleでは、組織が持続可能なコンピューティングの目標を達成できるよう支援するためのエコシステム、技術、能力の開発に取り組んでいます。





